(C)Lin Weiwen
国産ブドウ100%のものはもちろん、海外産の濃縮果汁を原料にしたものも「国産ワイン」と呼ぶことのできる、ちょっと曖昧な日本のワイン。そんな「国産ワイン」は今後、国産ブドウのみを原料として日本国内で製造された果実酒のみ「日本ワイン」と名乗ることができるようになります。
新ルールの適用は2018年10月30日となりますが、早くもシンガポール人フード&ワインジャーナリストのLin Weiwen(リン・ウェイウェン)さんが「日本ワイン」に注目、日本ワインをテーマにした本を執筆中です。これに先駆け、ウェイウェンさんに日本ワインの魅力を尋ねてみました。
ー「日本ワイン」に興味を持ったきかっけは?
2009年に東京へ行った際に初めて日本のワインを試飲したことがきかっけで、「日本ワイン」に興味を持ちました。日本ワインをテーマにした英語の本はまだ前例がないため「大好きな日本と、日本ワインへの情熱を形にして、英語圏の読者に届けたい」と思ったことがきっかけです。
ー本の執筆にあたり、日本国内のワイナリーを36カ所訪れたそうですね。日本ワインについて、教えていただけますか?
日本のワイナリーはぶどう農家が元になっているところが多く、かつては生食用に適さないブドウで甘口のワインを造っていました。現在は多くのワイナリー(ワイン醸造所)が辛口のワイン造りに力を入れています。
さまざまなブドウ品種を試しながら、日本の気候と土壌に合った質の高いワインを目指し、試行錯誤を繰り返しています。現在は20種類ものブドウを育てているワイナリーも少なくありませんが、将来的には品種も淘汰されて、フランスのブルゴーニュ地方のように「ピノ・ノワール」や「シャルドネ」といった産地固有のブドウ品種が日本の各地域にも定着してくるのではないでしょうか。
スマホと連動した気象計やソーラーパネルを活用したワイン造り(山梨県) (C)Lin Weiwen
日本全国にはおよそ200のワイナリーがありますが、そのうち80のワイナリーが山梨県に集中しています。そういった意味でも、山梨はとても重要な地域だと言えそうです。僕が訪れた山梨のワイナリーでは、勝沼町の「グレイスワイン」「シャトー・メルシャン」、甲斐市の「サントリー登美の丘ワイナリー」、笛吹市の「ルミエールワイナリー」がとても素晴らしい「甲州ワイン」を造っていました。
サントリー登美の丘ワイナリーの甲州ブドウ (C)Lin Weiwen
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ー北海道に本州、九州など、各地方のワインの特徴を挙げるとしたら?
年間を通して気温が低い北海道は、繊細な「ピノ・ノワール」などのブドウも育ちやすい気候です。今後、北海道産のピノ・ノワールはますます有名になる気がしますね。
これに対し、本州(※ここでは、長野と山梨に注目)の夏は多湿で梅雨があるため、気候に関しては好条件とは言えないのですが、低地では生食用の「コンコード」や「デラウエア」、湿度の低い冷涼な高地では「メルロー」「カベルネ・ソーヴィニョン」「甲州」などが栽培されています。メルローの名産地でもある桔梗ヶ原が有名な長野では、とりわけメルローを使ったワイン造りが盛んです。
勝沼町のワイナリー「くらむぼんワイン」 (C)Lin Weiwen
一方、九州は山梨のワイン造りほどは発達していない印象です。九州は高温多湿のため、ブドウの風味が増す前に熟してしまうためではないかと思います。試飲したワインのなかには、香りがあまり感じられないものもあったため、樽熟成をもっと工夫すれば、香り高くより面白いワインになりそうです。九州のワインは、可能性を秘めているとも言えますね。九州で栽培されている主なブドウ品種は「キャンベル・アーリー」「コンコード」「シャルドネ」「デラウエア」「ソーヴィニョン・ブラン」「デラウエア」です。
次回は「日本ワインと和食のペアリング」や「今飲むべき日本ワイン」についてお伝えします!
現在、ウェイウェンさんはクラウドファンディングサイト「Indiegogo」で書籍化に向けて奮闘している最中です。ご興味のある方は、フェイススブック公式サイトやクラウドファンディングのページも覗いてみてくださいね。
取材協力: Lin Weiwen(フード・ワインジャーナリスト)