あるベトナム人が言いました。「綺麗なところだろう、でもいつかなくなってしまうかもしれないんだ」と。
訪れる場所によっていろいろな表情を持ち、手付かずの自然が多く残る国ベトナム。その一方で急速な経済発展により、現在進行形で払い続けている代償は大きなものです。いつまでもこの美しい自然と人のあたたかさがあり続けることを願って、知る人ぞ知るベトナムの秘境「サパ」でのホームステイ体験をレポートします。
サパって?

ハノイから北西に約400キロ、ベトナムのラオカイ省に位置する小さな町が今回の舞台である「サパ」です。ここは標高が1600mと高所にあり、一帯に田園風景が広がる美しい場所。常にたくさんの人や車で溢れかえっている大都市から来ると、なんだかここがオアシスのようにも感じてしまうのは外国人だけではありません。サパは絶景のある避暑地として、ベトナム人観光客が多く集まる場所でもあるんです。そんなここサパの視界いっぱいに広がる緑は、訪れる人々の心をふっと解放してくれるような穏やかさを秘めています。
語り継ぎ命を繋いだ、「モン族」の存在

(C) Su Su Trekking Tour
そんな美しい場所で、いまも昔から姿を変えずに生活している山岳少数民族がいます。彼らは「モン族」と呼ばれる民族たち。一説によるとモン族は紀元前1500年頃とはるか昔から存在していたともいわれていますが、真相は闇のなか。というのも、元々文字を持つことがなかった彼らに残された文書などは何一つ残っていないからです。そのため彼らは文字ではなく先祖代々語り継ぐことによって、その独自の文化や風習を継承してきました。現在の東南アジアに存在する少数民族としては、マニ族などに次いで古い民族だと推測されているこのモン族。そんな彼らが纏う民族衣装は、なんとすべてゼロから彼女たちが先祖代々の作法を受け継ぎ作ったもの。デザインも色使いもとてもお洒落で、その美しい着こなしには思わずカメラを向けてしまいます。
「ホームステイしにこない?」

筆者がこのサパに訪れる前、こんなことを耳にしました。それは「サパではモン族の家にホームステイができる」という内容です。リアル世界ウルルン滞在記を一度は夢見た筆者は、早速胸を高鳴らせてサパへとバスで向かうことにしました。車中「本当にモン族に出会えるんだろうか?」という一抹の不安も抱えていましたが、到着したときにそんな不安は一切必要なかったことに気付きます。街中には朝からモン族が大集合していて、みんな揃って「ホームステイしにこない?」とひっきりなしに声をかけてくるのです。実は彼女たちにとって、ホームステイは家計を支える大きな収入。すこし予想とは違う入り口でしたが、そのシステムを理解した上でなかでも一際物腰が柔らかく英語が堪能な「スー」という女性の家にお世話になることにしました。
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Saya Meguro ライター
北海道出身。NZや日本をヒッチハイク縦断してみたり、ヒマラヤに登ってみたり、スペインで盗難に遭ってみたり。とにかくワクワクすることがすき。将来の夢は湖畔のちかくに家を建てて、動物と自然に囲まれて暮らすこと。
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