夏休みの自由研究のように、心惹かれることについて、じっくり調べてみる。考えて、試行錯誤し、また考えて、まとめて、発表する。TABIZINEにもそんな場がほしいと思い【TABIZINE自由研究部】を発足しました。部員ライターそれぞれが興味あるテーマについて自由に不定期連載します。
筆者の連載では、常々不思議に感じていた、そして実は根拠のない自信にもつながっていると思われる「日本人の情緒」について考えていきたいと思います。
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突然ですが、映画『モアナと伝説の海』をすでに3回観ました。もちろん、すべて自腹です。
3回の内訳は、日本語吹き替え版1回、字幕版1回、4D版1回です。ものすごく個人的な意見になりますが、日本語吹き替え版がものすごくよいです。
さらにもう1回日本語吹き替え版を観てしまおうか! とサイトで上映スケジュールを確認すると・・・都心を中心に続々と上映終了の告知が出ているではありませんか。
DVDでももちろん鑑賞できるのですが、映画館で日本語吹き替え版が観られる期限がせまっていると思うので、なぜ吹き替え版がよいのか、それが「日本人の情緒の自由研究」と何の関係があるのか、お伝えしたいと思います。
泣くのは「話に感動したから」ではなく「遺伝子が共鳴したから」
筆者は涙もろい方ですが、『モアナ』ではとにかく泣きます。ミュージカル風に歌と音楽があるシーンなどは8割泣いています。
周りにその話をすると「そんなにいい話なの?」と聞かれますが、どうも話に感動して泣いているわけじゃなそさうなんです。感情とは別のもの、本能とか、なにか自分の中の根っこの部分が揺さぶられているように感じます。
その答えを、『モアナと伝説の海』のパンフレットの中に見つけました。
神保 滋(ハワイアンミュージシャン/ハワイ・ポリネシア文化研究家)
『モアナと伝説の海』パンフレットより
オペタイア・フォアイは、この映画の音楽を担当した一人。二人の監督が映画の企画を練るためリサーチしたハワイ、タヒチ、ニュージーランド、フィジー、サモアなどポリネシアの島々を巡る中で知ったサモア出身のミュージシャンです。オペタイアの音楽には、歌を通して自分たちの物語を語り継いできたポリネシアの人々の伝統が生きていると言います。
「遺伝子が共鳴する」。その言葉は、筆者の心にすとんと落ちてきました。たしかに、そんな感じ。妙に納得してしまったのです。
母音が中心になった言語は日本語とポリネシア語だけ
母音を中心とする日本語は、世界でも珍しい言語です。これは、日本とハワイ・南太平洋のポリネシア語族だけに見られる言語の特徴なのだそうです。
そして母音は、自然の音に近い音だとも言います。母音語族(とここでは名付けてみます)は、小川のせせらぎや虫の声を左脳で聞き、そこに意味を感じます。子音を中心とした言語を使う世界のほとんどの人には、それらの自然音は右脳で聞き、雑音にしかきこえないそうです。
そこにはおそらく、火山からもたらされる、自然への畏怖、自然との共生の感覚も影響しているのではないでしょうか。日本と同じく、ポリネシアの多くの地域にも火山があり、自然の脅威を感じながら生きてきたのです。『モアナと伝説の海』でも、火山は重要な役割を担っています。
だからかもしれません。英語で歌われる字幕版より、日本語で歌われる吹き替え版の方が、『モアナと伝説の海』の世界観にしっくりくる、そう感じるのです。
もちろん作品は英語の歌詞やセリフに合わせて作られています。だから、字幕版の方がより歌詞やセリフのタイミングと合った作りになっているはずです。それでもなお、吹き替え版に魅力を感じるのは、筆者が日本人だということもありますが、日本語の方が自然との共生観が醸し出されるからかもしれません。
日本人の情緒には、こうした自然との共生観が色濃く反映されているのではないでしょうか。
映画の映像を背景に歌えるカラオケがある!
『アナと雪の女王』ではシング・アロング版(映画館で映画を観ながら歌っていいよ!版)が日本でも上映されましたが、『モアナと伝説の海』では海外止まりのようです。
しかし! 実は映画の映像を背景に歌えるカラオケがあるのをご存知でしょうか。JOYSOUNDでは、主題歌「どこまでも ~How Far I’ll Go~/How Far I’ll Go」、およびエンドソング「どこまでも ~How Far I’ll Go~ /How Far I’ll Go」の全4曲が歌えるそうです。気になる方はぜひ。
海に選ばれた少女――彼女の名は、モアナ。
海に選ばれた少女モアナ──海が大好きな彼女は、島の外に出ることを禁じられながらも、幼い頃に海と“ある出会い”をしたことで、愛する人々を救うべく運命づけられる。それは、命の女神テ・フィティの盗まれた“心”を取り戻し、世界を闇から守ること。神秘の大海原へ飛び出した彼女は、伝説の英雄マウイと出会い、世界を救う冒険に挑む。立ちはだかる困難に悩み傷つきながらも、自分の進むべき道を見つけていくモアナだったが・・・。
PR TIMESより
参考文献
[日本人の脳―脳の働きと東西の文化(角田忠信著/大修館書店)]
[日本語はなぜ美しいのか(黒川伊保子 著/集英社)]
[Photos by PR TIMES]