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富山市に暮らす筆者の家のすぐ脇には、いたち川という小さな川が流れています。その川を舞台にかつて小説家・宮本輝が『蛍川』という作品を書きました。読んだ経験のある人も少なくないかもしれません。
作中には確か、真夏でも富山の日差しや空気の中には雪の気配が潜んでいるといったような記述があったと思います。
豪雪地帯に暮らす人間が、たとえ真夏の太陽に焼かれているときであっても、空の色や光の輝き方、音の響き方の中に雪の気配を感じながら生きている様子が見事に表現されていましたが、こうした富山を含む日本海側の本州や東北、北海道などの雪国は、世界的に見ても積雪の多いエリアだとご存じですか?
特に多くの人が暮らす都市の降雪量という面で考えれば、世界のトップ3を日本の都市が独占しているという話も。ちょっと驚きですよね。
青森市、札幌市、富山市が降雪量で世界トップ3の都市!?
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1962年にスタートアップし、世界の気候に関する情報をテレビ、ラジオ、新聞、ウェブメディアで発信し続けている米AccuWeatherの情報によれば、人口10万人以上の都市の年間降雪量を比較すると、なんとトップ10に日本の都市が4か所もランクインするのだとか。
7位に秋田市、3位に筆者の暮らす富山市、2位に札幌市、1位に青森市が入るそうなのです。
確かに1位の青森市と3位の富山市の一部は、日本国内において特別豪雪地帯に指定されています。2位の札幌と7位の秋田も日本の豪雪地帯に含まれています。
例えば手元にある図鑑『信じられない現実の大図鑑』(東京書籍)を見ると、世界の大都市である米ニューヨーク市の毎年平均の降雪量は68cmとされています。しかし日本の気象庁の情報を調べてみると、1位の青森市は1981年~2010年の平均で、年間の降雪の深さが669cm(6.69m)だと言います。けた違いの量だと分かりますよね。
日本には1シーズンで17m近く降雪があるエリアも
NATIONAL GEOGRAPHIC日本版においても、人の暮らすエリアにこれほど降雪が多い国は世界中を見ても珍しいと紹介されていました。
<人口が多いところで、これだけの量の雪が降る地域は、世界的にみてもほとんどないんです>(NATIONAL GEOGRAPHIC日本版より引用)
と、専門家もコメントをしています。
国内でも人口の少ないエリアに目を向ければ、さらに積雪量は増えていきます。積雪の深さが平年値で極めて多いエリアを気象庁の情報からピックアップすると、
山形県肘折・・・16.17m
山形県大井沢・・・13.99m
新潟県守門・・・13.62m
新潟県津南・・・13.58m
といったエリアが、とにかく深いと分かります。いずれも東北ですね。1位の酸ヶ湯は十和田八幡平国立公園内で、湯治でも有名な温泉地になります。
世界には30m近く降雪があったエリアも
ただ、世界を見渡すと、平均値ではないですが単年(一冬)で、上述した日本の地域よりもさらに雪が降ったエリアが存在します。
具体的にはワシントン州のベーカー山。世界一雪深い場所として知られていて、同地では1998年から1999年に、積雪の深さで29.86mという数字が記録されています。
30mと言えば、東京中央区銀座4丁目に建つ和光のビルくらい。公式ホームページによると同ビルは地上から30.30mの位置に屋上があり、その上に9.09mの時計塔が建っています。仮に銀座にベーカー山と同じ30mの降雪があれば、和光が雪に埋もれて、時計塔だけが雪上から突き出す感じになってしまうのですね。
シアトルも近い、米ワシントン州に位置するベーカー山は、カナダとの国境にある標高3,285mのリゾート地。『areavibes』というウェブサイトによれば、人口は7,866人しか居ないとされています。青森市や札幌市、富山市といった都市とは環境が違いますが、驚くべき豪雪地帯ですね。
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以上、雪深い世界の都市のTOP3が日本の都市になるという話をしましたが、いかがでしたか?
普通ならばもっと雪の少ない都市に人口が移動してもいいのかもしれませんが、日本には雪に親しみ、雪と戦いながら、雪と共存している人が少なくないと分かりますね。
[累積降雪量一覧表 – 気象庁]
[積雪の深さ一覧表 – 気象庁]
[Top 10 snowiest major cities around the world – AccuWeather]
[Mount Baker demographics profile – AreaVibes Inc.]
[信じられない現実の大図鑑(東京書籍)]
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