コリアンタウンで有名な新大久保ですが、その一角に隠れたアジア“イスラム横丁”があるのを知っていますか。ちょっと怪しげな雰囲気もするその響き。六本木、表参道、歌舞伎町などを抑えて、今、東京で最もアツいインターナショナルな街!? として注目を集めているということで突撃取材を敢行しました!
Googleマップでもピンが立つ新大久保の“イスラム横丁”
Googleマップで「イスラム横丁」と入力してみてください。新大久保の一角にピンが立つでしょ。最寄駅はJRの新大久保駅。改札を出て、目の前にある交差点を渡り「マツモトキヨシ」の脇を曲がると通称“イスラム横丁”が現れます。
もっとディープな感じかと思っていたのですが、いとも簡単にその姿を目にして意気消沈・・・ でも、道にせり出す看板には日本語に混じって、英語・韓国語・アラビア語の表記が。アジア系・中東系・アフリカ系の人が道を行き交い、日本人の姿はまばらです。
バーベキューチキン片手にアジアの喧騒
イスラム横丁のメインストリートは「百人町文化通り」。きれいとはいいがたい小さな店が建ち並び、アジアの路地裏を思わすような、食べ物の香りや人の気配に包まれています。ここから約150m、セブン-イレブンがあるところまでの2ブロックがイスラム横丁。
その中でも古くからあり、中心的な存在と知られているのが「NASCO(ナスコ)」。緑の看板が目印で、店頭でスパイシーな香りを漂わせているバーベキューチキンが大人気です。全長約17㎝。数十種類のスパイスで焼きあげられ、日本の焼き鳥とは比べ物にならない大きさ。しかも1本100円というから驚き! ボリューミーな食べごたえに加え、カレー風味のチキンはとってもやわらか。隣の姉妹店「GREEN NASCO(グリーンナスコ)」では、ケバブ400円~もテイクアウトでき、食べ歩きしながらイスラム横丁巡りを楽しめます。
物珍しいエスニック食品であふれかえる
イスラム横丁に入って最初に現れるのが、店頭でネパール国旗が揺れるエスニック食料品店「Barahi(バラヒ)」。ちょっと薄暗い店内へ入ると、外国の香りがムンムン! ネパールはもちろんのこと、インドやパキスタン、スリランカ、アフリカなどから仕入れられた、香辛料や調味料、豆類、缶詰めなどが所狭しと並びます。
値段表記はしっかりとされているので安心なのですが、どんな風に使っていいのかわからないものだらけ・・・ 「何をお探しですか?」と声を掛けてきてくれたのは、経営者の奥さんであるレビさん。日本語が上手で、旦那さんは日本の大学への留学経験があり、2008年にこの店をオープンしたのだとか。お客さんは、ほとんど外国人で、日本人が来ることは少ないとのこと。
大充実していたのが各種ピクルスの瓶詰め400円~。マンゴーやダイコン、ラプシ(ウメのような木の実)、チリなど、なかなか目にすることのないラインナップ! ネパールの主食でもある、茹でたご飯を平たく叩いて乾燥させたビトンライスや、現地ではよく食べられるヤギ肉なども人気商品のひとつ。「どんな料理を作りたいか教えてもらえれば、それにあった食材やスパイスをアドバイスしますよ」という心強いお言葉も。
100種類以上のスパイスが激安価格!
100種類!? を超えるスパイスがそろう「JANNAT(ジャンナット)」は、香辛料専門店の看板を掲げ、こちらもお客さんの90%が外国人というお店。各種スパイスに加え、調味料、缶詰め、肉類、歯磨き粉まで!? ありとあらゆるものがそろっています。
食品カテゴリーごとに区分けされた店内は、とってもきれい。もちろん値段表示もあるので安心です。大注目のスパイスは、一般的な店の1/3~1/5の価格と超リーズナブル! 居合わせた日本人マダムも「エッ! これやす~い!」と声に出していたほど。しかも家庭で使える小ロットタイプが用意されているところが好評。クミンやシナモン、カルダモンの人気が高く、そのほかにもローリエやクローブ、タイムなどが1袋300円前後。大豆やレンズ豆、ブラックビーンズなど、豆類も30種類を超える品ぞろえ。
店を経営しているのは、バングラデシュ出身のライハンさん。バングラデシュはイスラム教徒が多いこともあり、冷凍ケースには、鶏肉や牛肉、ヤギ、ヒツジなど、ハラルの肉類も大充実。丸ごとの鶏肉で300円~、ラム肉で500g750円~そろっています。
一面真っ黄色なビリヤニ
冒頭のバーベキューチキンの「NASCO(ナスコ)」は、店内で食事をすることも可能。メニューは4種類のビリヤニ600円~と2種類のクスクス700円~のみ。“ビリヤニ”とは、インドやその周辺国で日常的に食べられている、スパイシーなピラフのような料理。
一面ターメリックなビリヤニの姿に驚きますが、黄色の長米の下には骨付きチキンなどの具材が隠れています。クミンやコリアンダー、ターメリック、シナモンなどの各種スパイスがきいた複雑な風味。酸味のあるライタというヨーグルトサラダを口休めに。
入りにくいけどお味は絶品のネパール料理
入るのに少し勇気がいり、難易度高めなのが、ネパール家庭料理が味わえる「Solti Khaja Ghar(ソルティ カージャガル)」。韓国系美容室やマッサージサロンが入るビルの2階にあり、雑然と食品類が置かれた店内へ足を踏み入れると、香辛料や豆類、缶詰めなど、アジアンフードを扱う店構え。身振りを交えながら「ご飯食べたいんだけど~!」と声を掛けると、カーテンが開きショップinレストランのスタイル。まさに隠れ家的な雰囲気です。
ピンクの壁にテーブルが5つ。小ぢんまりとした店内はアジアの食堂に来たよう。ネパールの蒸し餃子「Momo(モモ)」8個入り600円、干しマトンの炒め物「Sukuti(スクティ)」700円、アヒルのスパイシー炒め「Duck Choila(ダックチョイラ)750円、わけのわからないラムやヤギ料理・・・ 聞いたこともないメニューのオンパレードで、どれにしようか悩んだ末にランチタイムには1000円になるディ―ドセット(通常は1200円)を注文。
この“Dhido(ディ―ド)”とは、そば粉やひえ粉を練って湯がいたもので、日本でいうそばがきに似ています。ネパールの伝統的な料理のひとつで、一般家庭でも日常的に食べられているもの。銀のプレートの真ん中で圧倒的な存在感をみせる茶褐色のディ―ドのまわりには、ネパールカレーやネパールのお味噌汁ともいえる豆スープ、青菜の炒め物、ダイコンの酢漬けなどが彩ります。くるっと丸まっているのは、米粉を揚げたパパド。
フォークやスプーンも用意されていますが、ディ―ドを素手でちぎり、カレーなどにつけて食べるのがネパール流。ここはぜひ、素手で! 素朴な風味とモチモチした食感をもったディ―ドがカレーの味を引き立てます。ライスで食べるより、はるかにうまい! その食べっぷりを観察していたバードゥバハドゥおじさん、優しい笑みを浮かべながら「オ・イ・シ・イ?」と。日本語も英語もほとんど通じませんが、これは何からできているとか、カーテンで仕切られた店から食材をもって来て、いろいろと教えてくれます。
片言で不安になるかもしれませんが大丈夫! ネパール人のお客さんが次から次に訪れ、その中のひとりが日本語とネパール語の通訳をかってでてくれます。最後の手段はGoogle翻訳!? コミュニケーションも楽しい料理のスパイスになること間違いなし!!
モスクが佇むイスラム横丁の中心地
エスニック食品店やハラル食材店、各種レストランンが点在するイスラム横丁。「NASCO(ナスコ)」と八百屋に挟まれた一角が、猥雑とした一番アジア的な雰囲気を感じられるところ。外観からはまったくわかりませんが、その脇に建つ年季の入ったビルの4階にはモスクもあり、ここで働く人やこの地に集う人の心のよりどころとなっているのかもしれません。
【住所】東京都新宿区百人町2-10-8 新大久保イニシャルビルANNEX 1F
【営業時間】12:00~23:00
【定休日】不定休
【アクセス】JR「新大久保駅」より徒歩1分
参照:NASCO FOOD COURT
◆Barahi Foods&Spice Center(バラヒフード&スパイスセンター)◆
【住所】東京都新宿区百人町2-10-9
【営業時間】11:00~23:00
【定休日】なし
【アクセス】JR「新大久保駅」より徒歩1分
参照:Barahi Foods&Spice Center
◆THE JANNAT HALAL FOOD(ジャンナット ハラルフード)◆
【住所】東京都新宿区百人町2-9-15
【営業時間】12:00~24:00
【定休日】不定休
【アクセス】JR「新大久保駅」より徒歩2分
参照:THE JANNAT HALAL FOOD
◆Solti Khaja Ghar(ソルティ カージャガル)◆
【住所】東京都新宿区百人町2-9-15 ライオンズマンション2F
【営業時間】11:00~23:00
【定休日】なし
【アクセス】JR「新大久保駅」より徒歩2分
参照:Solti Khaja Ghar
[All Photos by tawawa]