海外旅行で使える英語のお願い表現を取り上げる今回の連載。第6回目は、ホテルで使えるお願い表現を紹介したいと思います。英語のお願い表現に関する基本的な考え方は、連載の初回に書かれていますので、ぜひともチェックしてから先に進んでみてくださいね。
ちなみに今回登場する英文は全てネイティブスピーカーのチェックを受けています。状況が合えばそのまま使える表現ばかりですよ。
チェックインまで、またはチェックアウト後に荷物を預かってほしいと英語でお願いしてみよう
最初はホテルのチェックイン前に、荷物だけ預かってもらうお願い表現から。現地の空港に到着したら、チェックインまでスーツケースをゴロゴロ引っ張り回さなければいけません。荷物が大きいほど大変ですよね。
宿泊するホテルが荷物を預かってくれれば助かるのですが、英語ではなんとお願いすればいいのでしょうか。
過去の連載と同じく、まずは相手と自分の関係を考えます。ホテルのスタッフは当然ですが、初対面。さらに今回は、「荷物を預かってほしい」というこちらのお願いを聞き入れる義務が、恐らく相手にはないと考えられます。その意味で、両者の関係はBですね。
次はお願いが相手の迷惑になるか、どの程度の負担を強いるかを考えてみます。ホテルの側にとっては、宿泊者の荷物を預かるスペースは必ずあるはずですから、それほど迷惑という話でもないと予想できます。
また、義務はないと書いたものの、実際にホテルのサービスの一環のような部分もありますから、今回のケースでは負担が小さいと考え、B-に格下げします。よって「かなり丁寧にお願い」→「丁寧にお願い」が適切ですね。
丁寧にお願いするのですから、特に前後で言葉を尽くす必要はないと予測されます。
「Hello.」
と呼びかけ、
「Can you hold my baggage until I check-in?」
「Can I leave my baggage until I check-in?」
(チェックインまで、荷物を預かってもらえますか?)
とシンプルにお願いしてみてください。丁寧なお願い表現のcan youを使ってみました。もちろん、could youに言い換えれば、丁寧度は増します。逆にチェックアウト後に荷物を預かってほしい場合は、
「Can you hold my baggage until my flight?」
などと聞いてみてください。Mayとcanの違い、mayとmight、canとcouldの違いは過去の連載で繰り返し述べてきました。併せて参考にしてみてくださいね。
ちなみに、予定より早めにチェックインしたい場合は、「Hello.」などで呼びかけ、
「I know it is early, but could I check-in?」
「I know it is early, but would it be possible for me to check-in?」
(まだ、チェックインの時間ではないと分かっているのですが、可能でしょうか?)
などと、下線を引いた部分のように、前置きを入れてから、お願いをしてみてください。前者がちょっと直接的な響きがあり、後者が間接的に聞いている感じがして、より丁寧です。ただ、この場合、後者はちょっと丁寧過ぎるかもしれませんね。
チェックアウトで不明な項目を確認し、説明をお願いする場合は何て言う?
次はチェックアウト時に不明な請求があった場合、説明をお願いする英語表現になります。
相手は初対面、あるいは初対面に近い相手だと言えます。請求書にある不明な点についてこちらは質問するのですから、相手には答える義務があると言えます。関係はDですね。
不明な点について説明してほしいというお願いは、相手にとって特に迷惑とも言えません。同じDでもD-になりますから、「丁寧にお願い」を「普通にお願い」しても特に問題はないと言えます。
もちろん、わざわざ前後に言葉を尽くす必要もないと考えられます。単刀直入に、
「Can I see a breakdown of these costs, please?」(この料金の内訳を教えてもらえますか?)
と聞いてください。何か頼んでもいない、使ってもいないサービスに請求があったら、
「I think I did not order this.」(これは注文していないと思うのですが)
などと伝えてみてくださいね。
滞在を延長したいときは、なんて言えばオッケー!?
最後は滞在を延長したい場合の英語表現を考えてみましょう。
相手はホテルのフロントスタッフですから、滞在中に顔見知りになったとしても、初対面に近い相手です。「滞在を延長したい」というこちらのお願いに、相手は部屋が空いていれば応じてくれるかもしれませんが、応じる義務の有無に関しては判断の分かれるポイントかもしれませんね。
今回は義務まではないと考え、関係をBにしました。ただ、「滞在を延長したい」というお願いは、相手にとって迷惑かといえば、全く違うはず。負担どころか空室が埋まるため、ありがたい話のはずです。よって同じBでもB-ですから、「かなり丁寧にお願い」を「丁寧にお願い」に格下げしても問題ありません。
また、それほど相手にとって迷惑な話でない以上、お願いの前後で言葉を尽くして、滞在延長の理由を口にする必要などもないと分かります。
「Hello.」
「Excuse me.」
と呼びかけをする程度にとどめ、丁寧なお願い表現として中学校の教科書で習うcan I、may Iを使ってみます。この場合、滞在延長がそもそも可能かどうか分からずに聞いていますから、
「Can I extend my stay here?」(ここでの滞在を延長できますか?)
「Can I stay here a day longer?」(もう1日長く、ここで滞在できますか?)
などと伝えてください。ちょっと直接的な聞き方ですが、英文としてはシンプルで使いやすいですし、この場合はちょうどいい丁寧感だと考えられます。部屋が空いている場合、何らかの対応をしてくれるはずですよ。
以上、ホテルで使えるお願い英語表現を紹介しましたが、いかがでしたか? まずは相手と自分との関係を考え、自分のお願いに応じる義務が相手にあるかどうかを考えます。その上で、こちらのお願いがどの程度、相手の負担になる、迷惑になるかを考え、お願い表現を調整するのでした。必要に応じて、お願いの前後に言葉を尽くして、お願いする理由の説明や前置き、謝罪などを口にし、相手の心を動かしてくださいね。
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