ヨーロッパでスイーツの国といえばフランスのイメージが強いですが、お隣ドイツも実は隠れたお菓子大国。老若男女問わず甘いもの好きが多いドイツでは、ケーキなどのスイーツがいつも身近にあります。
見た目はあまり華やかではありませんが、素朴な味わいとたっぷりのボリュームがドイツのスイーツの魅力。なかにはスパゲッティを模したアイスなどのユニークなおやつも存在します。
意外と奥が深い、ドイツで食べてみたい7種のスイーツをご紹介しましょう。
シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ
世界的に有名なドイツを代表するケーキが、シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ。「黒い森のサクランボ(酒)ケーキ」の意味で、ドイツ南西部・黒い森地方名産のサクランボの蒸留酒を使用した大人のケーキです。
サクランボの蒸留酒「キルシュヴァッサー」をしみこませたココア風味のスポンジ生地に生クリームとサクランボのコンポートをサンド。さらにトップを生クリームでコーティングし、削りチョコレートやサクランボをトッピングします。
クリームたっぷりで見た目は実に甘そうですが、意外に甘さは控えめ。香り高いココア生地と、甘酸っぱいサクランボのコンポート、ほろ苦いキルシュヴァッサーの組み合わせが絶妙で、一度食べるとハマってしまう人続出。
ドイツ各地で食べられるシュヴァルツヴェルダーキルシュトルテですが、機会があればぜひ黒い森地方で本場の味を試してみたいもの。甘すぎるケーキは苦手という人も、ぜひ一度はトライしてみてください。
スパゲッティアイス
ドイツで生まれたとってもユニークなアイスクリームが、スパゲッティアイス。
その名の通りスパゲッティに見立てたアイスクリームで、細長く絞り出したバニラアイスの上にミートソースを模したイチゴースをかけ、最後にパルメザンチーズのように小さく削ったホワイトチョコをトッピングすれば完成です。アイスの底にはたっぷりの生クリームが入っています。
スパゲッティアイスが生まれたのは、1969年のこと。イタリア人の父とドイツ人の母をもつマンハイムの「アイス・フォンタネッラ」のオーナーが試行錯誤の末、まったく新しいアイスとしてスパゲッティアイスを売り出しました。
人気を博したスパゲッティアイスはドイツ全土に広がり、いまやドイツのあちこちにあるアイスカフェで食べることができるようになっています。
単なるインパクト狙いのメニューかと思いきや、アイスを細く絞り出すことであいだに空気が入り、ふんわりとした食感が楽しめる効果が。素材の風味を生かし、イチゴソースを手づくりしているお店のスパゲッティアイスは味わい深く、見た目よりもずっと軽く食べられますよ。
チーズケーキ
シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテに負けずとも劣らないほどドイツでポピュラーなケーキが、チーズケーキ。チーズケーキは日本でもおなじみとはいえ、ドイツのチーズケーキは日本のチーズケーキとはずいぶん印象が違うと感じることも少なくありません。
スフレのようなふんわりとした軽いチーズケーキが多い日本とは対照的に、ドイツのチーズケーキはしっかりとした密度のあるチーズケーキが主流。どっしりとした重量感がある一方で、クヴァークと呼ばれるフレッシュチーズの一種が使われているものが多いため、大きさのわりにさっぱりといただけます。
飾りつけがされることはあまりなく、甘さも控えめでパンの延長のように食べられるのがドイツのチーズケーキの特徴。
プレーンはもちろんのこと、アプリコットやベリーなどフルーツを混ぜて焼き上げたものもあり、さまざまなバリエーションに出会えるのも魅力です。
アプフェルシュトゥルーデル
ドイツ人にとって最も身近な果物といえば、リンゴ。それだけに、リンゴを使ったケーキも種類が豊富です。
その代表格が、オーストリア菓子としても知られるアプフェルシュトゥルーデル。「シュトゥルーデル」とは、ドイツ語で「渦巻き」のことで、薄く延ばしたシュトゥルーデル生地に、レーズンや砂糖とともに調理したリンゴをくるんで焼き上げます。
ザクザクした食感が残るリンゴのコンポートは、果物本来の風味を生かした優しい味わい。生地よりもリンゴが主役なので、普通のケーキは重く感じられるという人にもおすすめです。
アプフェルシュトゥルーデルは、テイクアウトよりもカフェでイートインするのが主流。バニラソースやバニラアイスなどが添えられることが多く、温かいアプフェルシュトゥルーデルと冷たいバニラアイスの組み合わせは最高ですよ。
ルバーブケーキ
日本ではあまり馴染みがありませんが、ドイツではとても身近なルバーブ。赤いセロリのような見た目で、酸味が強いのが特徴です。
ザワークラウトで慣れているからなのか、ドイツではルバーブやプラムのような酸味の強い食材を使ったスイーツもポピュラーで、ルバーブを使った飲み物やジャムのほか、ルバーブを使ったケーキも一般的です。
ルバーブケーキの見た目はさまざまなですが、カットしたルバーブを使った入れ込んで焼いたタルトのようなものが典型的。といってもフランス菓子のような繊細なタルトではなく、菓子パンの延長のようなどっしりとした素朴なタルトです。
ルバーブの味に慣れていないとちょっと違和感を抱いてしまうかもしれませんが、焼いてとろりと仕上がった酸っぱいルバーブの味がクセになるという人も。日本ではほとんど食べられないルバーブのケーキ、機会があればぜひドイツで試してみてください。
バウムクーヘン
ドイツ菓子として日本であまりにも有名なのが、バウムクーヘン。「バウム(木)」+「クーヘン(ケーキ)」の名の通り、切り株の年輪のような見た目が特徴的な焼き菓子です。
バウムクーヘンの本場というイメージが強いわりに、ドイツではバウムクーヘンはどこでも食べられるお菓子ではありません。限られた職人だけが作ることのできる特別なお菓子だけに、バウムクーヘンを食べたことがないドイツ人もいるほど。
ドイツでは国立ドイツ菓子協会がバウムクーヘンの定義を定めていて、伝統的なレシピと製法を守って作られたものだけが本物のバウムクーヘンと認められます。
ドイツにおけるバウムクーヘン発祥の地とされるのが、北東部のザルツヴェーデル。それゆえ、「クロイツカム」や「ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ」など、バウムクーヘンで有名なコンディトライ(スイーツショップ)の多くは、北ドイツと東ドイツにあります。
ドイツのバウムクーヘンは、密度が高くどっしりとしているのが特徴。レモンやオレンジ、スパイスなどでアレンジが加えられたものも多く、伝統の味を受け継いだ職人のこだわりが感じられます。
シュトレン
近年、ドイツのクリスマス菓子として日本でも知名度が高まりつつあるのが、シュトレン。バターとドライフルーツをたっぷり使ったリッチな焼き菓子で、ドイツではクリスマスを待つアドベントの期間中、少しずつスライスして食べられます。
とりわけ、シュトレン発祥の地ともいわれるドレスデンのシュトレンは有名。伝統的なレシピに基づいて、認定を受けた職人がドレスデンで作ったものだけが「ドレスドナー・シュトレン(ドレスデンのシュトレン)」を名乗ることができるのです。
普通サイズは1キロとやや重いのが難点ですが、日持ちがするシュトレンはお土産にもおすすめ。クリスマスのシーズンにドイツを訪れるなら、ぜひ本場のシュトレンをご賞味あれ。ドイツ式に日を置いて少しずつ食べてみると、しだいにドライフルーツの風味が生地に移って、味わいが変化していくのが実感できます。
日本でも有名なものから、知る人ぞ知るものまで、さまざまなお菓子があるドイツ。ドレスデンのシュトレンのように、頑なに伝統を守り続けるスイーツがある一方で、スパゲッティアイスのように、アイデアが光るスイーツがあるのも面白いところ。
ドイツを訪れたら、ぜひ食べ比べを楽しんで、お気に入りの逸品を見つけてください。
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