美術館というと、広い部屋でゆったりと展示されていて・・・。そんなイメージを覆す、小さな美術館がロンドンにあります。もともと個人の邸宅だったところに所狭しと展示物が並んでいるので、入場制限がかかることも。日本ではマイナーながら、年間10万人以上が訪れるという入場無料の美術館です。
サー・ジョン・ソーンズ美術館とは?
ロンドン中心部のホルボーン駅からほど近いところにあります。
美術館の名前になっている、ジョン・ソーン卿は、イングランド銀行やダリッジ美術館などの設計などを手掛けた建築家。新古典主義で、その頃主流だったバロックやロココなどの装飾的なものではなく、古代ギリシャ・ローマの古典様式に美を見出した人です。
彼は、自宅兼建築事務所兼コレクションの置き場として次々と隣の物件も購入し、3軒分の中を自由に改築しました。ジョン・ソーン卿が亡くなって180年以上経ちますが、彼の希望通り、内部も当時のままの姿を今に伝えています。
展示してあるものは?
ジョン・ソーン卿は、古代美術品、家具、彫刻、建築模型、ドローイング、そしてホガース、ターナー、カナレット作品を含む絵画の数々を収集しました。
石膏や大理石、ブロンズなど様々な材質のものが辺り一面に並んでいます。コレクションを分類せず、創造的でさまざまな要素を含んだ方法で飾ることにしたというその独特なセンスに驚かされます。
あらゆる時代の、あらゆる大陸から集めた一流の品々。しかし、あまりに物が溢れているので、一流感をあまり感じないというのが正直なところです。
それにしても、古代エジプト王セティ1世の石棺とか、個人の収集レベルを超えています。石棺を覆うガラスケースに人の顔が浮き出ていますが、その向かいにある彫刻が反射したもののはず・・・です。
混沌としていて最初はぎょっとするのですが、すぐ慣れて心地よくなります。よく管理されていて、埃臭さもまったくなく。秘密の場所にお邪魔している気分です。
建物の構造
改築を重ねただけあって、中は複雑なつくりになっています。いざ、あの部屋に戻ろう、と思っても、なかなかたどり着けないのです。まさに迷宮です。
随所に見られるステンドグラスや明かり取りも必見です。
これは、地下室から上を見上げたところ。上を歩く人がいると、よく見えます。訪れるときは、スカート注意ですよ。
特徴的な部屋
生活スペースだったエリアにも入ることができます。
こちらはポンペイの壁画の赤にインスパイアされた図書室です。華やかさと落ち着きを持ち合わせた部屋です。
ちなみに、これが本物のポンペイの壁画です。参考までにどうぞ。
こちらが朝食室です。今は一時的に展示物が飾られています。
これは絵画室の入り口です。館内は撮影禁止で、今回特別に許可を得て撮影しましたが、それでもなおこの部屋は撮影禁止です。
部屋の壁一面に名画がかかっています。からくりになっていて、一見壁に見えるところが開いて、さらなる絵画が出てくる仕組みです。最近はそれを見せていないということですが、お願いしたら見せてくれるかも!?
さて、館内では、何度かとげとげの植物が椅子などの上に置かれているのを目にしました。スタッフに理由を尋ねると、座らないでということを婉曲に表現しているそうです。直接的にカードで表現するよりいいのではないかとのことです。「作品には触れないでください」と書いてあるところはありますが。素敵なアイデアですよね。
美術館のスタッフは、感じの良い親切な人が多かったので、何か質問があれば気軽に尋ねてみるのがよいかと思います。
美術館みやげ
可愛らしかったのが、アクセサリーや食器です。
石膏もこの美術館ならでは。
ジョン・ソーン卿設計作品のレプリカも、お値段高めながら置いてあります。
入口では、大きい荷物などを預けることができます。身軽になって、ゆっくり過ごしたいですね。
Sir John Soane’s Museum
Wednesday to Sunday, 10:00 to 17:00
Last entry at 16:30
Open on Bank Holidays
13 Lincoln’s Inn Fields, London, WC2A 3BP
https://www.soane.org/
[All photos by Shio Narumi]
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Shio Narumi ライター
イタリアはフィレンツェとタオルミーナの料理留学、イギリスはウエストン・スーパー・メアとケンブリッジの花留学を経て、現在はロンドンと神奈川を行ったり来たり。飛行時間の大幅短縮が実現するよう、心から科学の進歩を願う水瓶座。
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