東京タワーと言えば、1階からエレベーターを乗り継いでメインデッキ(150m)、トップデッキ(250m)と見学していくスタイルが定番です。それ以外に観光客が展望台に行く方法はなさそうな気もします。しかし、実は徒歩でものぼれます。そこで今回は実際にメインデッキに通じる外階段を歩いてみました。その体験をリポートします。
東京タワーは歩いてのぼれる
「東京タワーって徒歩でのぼれるの?」と思う人も少なくないかもしれません。24時間、365日のぼれるわけではありませんが、土日の日中を基本に(夜はバレンタインデーなど特別な日に限って)歩いてものぼれます。
ただ、高さ250mにあるトップデッキまでは、歩いて行けません。東京タワーの重しにもなっている、タワー直下の5階建てビル(フットタウン)の屋上から、高さ150mのメインデッキまで通じる約600段の外階段を、自らの健脚で歩いてのぼれるのですね。
メインデッキに通じる外階段
徒歩でチャレンジしたい人は、1階のチケットカウンターでメインデッキ行きのチケット(900円)を購入し、フットタウン内のエレベーターでフットタウンの屋上に向かってください。
屋上に出るだけでも、普段とは異なる東京タワーの「表情」が満喫できます。さらに、メインデッキに通じる外階段は無造作な作りで、自分が作業員か何かの関係者になったような気持ちにさせてくれるから面白いです。
外階段入り口のプレートには、
<メインデッキまで続く約600段の外階段で、景色を眺めながら、そして風に吹かれながら、東京タワーを昇ることができる特別なコース>
と書かれています。その通り、外階段は落下防止のための金網で仕切られているだけで、風や景観をさえぎる囲いがありません。金網のすき間に鉄骨が見え、その先には東京の景色が広がっています。
当日の取材陣は筆者である私(男性)と、編集長(女性)の2人です。取材当日にアテンドをしてくれた方は、観光本部営業部マーケティング課主任の根岸直美さんでした。本来なら普通、土日にしか通行できない階段を、特別に平日に開放してくれました。
一緒に根岸さんものぼるのかと思いきや、「数日前にのぼって筋肉痛になってしまったので、上(メインデッキ)で待っています」と笑顔でさわやかに辞退されます。根岸さんが階段の入り口をふさぐ「close」のバーを取り外し、施錠された扉を開くと、われわれの前に約600段ある外階段の1段目が現れました。
メインデッキまでは600段ほど
根岸さんに見送られ外階段をのぼり始めて気づきました。100段ほどはあっという間に過ぎてしまいます。最初は気持ちも高ぶっていますし、金網越しに見える東京の景観が新鮮で、大いに楽しませてくれます。見慣れないタワーの「素顔」と対面したドキドキ感もあって、いつの間にか歩みが進んでいました。
外階段の踊り場には挑戦者を飽きさせない仕掛けも施されています。例えば「東京タワーの総面積は940,000㎡。これは東京ドーム何個分になる?」だとか、「職人さんたちには塗装工事が終わったら記念品としてあるものが渡されるよ。さぁ~てどれかな? ①賞状 ②メダル ③プラモデル」といったクイズが、全7問掲載されています。解答はそれぞれ階段を上った先に用意されていて、自然と足が進む工夫になっています。
クイズの解答が気になる人はぜひ現地でチェックしてくださいね!
歩を進めるごとに、次第に編集長の息が上がり始めます。400段目あたりでは、筆者も身体が熱くなってマフラーを外しました。取材は2月の真冬です。階段の外側に作業員の足場が現れたり、「臨場感」もたっぷりでした。
ゴール間近では外界の景色が一度見えなくなり、地下室のようなにおいのする薄暗い空間が待っています。
そのつかの間の「暗がり」を通過する、胎内くぐりのような時間があるからでしょうか。メインデッキで視界に飛び込んでくる大パノラマは、エレベーターで訪れて眺める景色と比べると、全く見ごたえが違っていました。苦労してのぼった分だけ、景色の輝きが増して見えるのですね。
ご褒美は昇り階段認定証の授与
外階段を上ってメインデッキまでたどり着いた人には、公式キャラクター、ノッポンくん公認の「昇り階段認定証」が手渡されます。運転免許証などと同じサイズのカードで、表には東京タワーの美しい写真、裏には「認定証」という言葉が印字されています。
当日アテンドをしてくれた根岸さんによれば、カードは全10種類が用意されているとの話です。全部を集めようと、何度も階段でのぼる人も居るのだとか。認定証を手渡す側は10枚の中から無作為に選びます。同じ種類のカードを受け取ったコレクターからは、「違うのがほしい」と要望を受けるケースもあるみたいですね。
今になってこの経験を振り返ってみると、外階段でのアプローチは距離を縮めたいと思っている人同士にとって最適なルートだと思います。吹きっさらしの非日常的な環境の中で黙々と階段をのぼっていると、どこか自然と内省的な気持ちになってきます。また、特別な出来事と時間を共有しているという思いから、道のりも400段を越えるころには、自然と突っ込んだ会話が始まっているはず。
筆者も今まで知らなかった編集長の家族の話を聞けて、新しい一面を見た気がしました。幸運にも外階段をのぼれる日に東京タワーに訪れたら、大切な誰かと一緒に、ぜひともチャレンジしてみてくださいね。
東京タワー TokyoTower
https://www.tokyotower.co.jp 東京都港区芝公園4丁目2-8
>>>詳しいアクセスはこちらから
展望台のご案内 / 営業時間・料金
メインデッキ (150m)
9:00~23:00 [最終入場 / 22:30]
トップデッキツアー (150m+250m)
9:00~22:45 [最終ツアー / 22:00~22:15]
メインデッキ行き外階段
土日祝11:00~16:00に開放
天候により中止の可能性あり
[All Photos by Masayoshi Sakamoto]
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Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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