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スペイン北西部のサンティアゴ・デ・コンポステーラはキリスト教の聖地として知られ、現在では宗教に関係なく観光で訪れる人も多く、日本からもサンティアゴ巡礼ツアーが組まれるほど人気の場所。この地へと続く巡礼の道のひとつ「ル・ピュイの道」の起点として中世時代に栄えた、フランスの小さな町「ル・ピュイ=アン=ヴレ(Le Puy-en-Velay)」を訪れました。
フランス南東部にあるル・ピュイ=アン=ヴレ(Le Puy-en-Velay)は、リヨンから車で2時間程の小さな町。火山地帯であるこの地は、遠い昔に火山噴火が繰り返され、現在のような2つの奇岩(コルネイユ岩とエギュイユ岩)が町に突き出るような地形になったと言われています。なんとも印象的な光景が広がるル・ピュイ=アン=ヴレの観光スポットと、この町の有名な工芸品を紹介します。
ルピュイのノートルダム大聖堂
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ル・ピュイのノートルダム大聖堂は小高い丘の上に立っていて、大聖堂の入口までは石畳の階段を徒歩で上るしかありません。一番最初の教会が建てられたのが5世紀のこと、その後ノートルダム大聖堂が建築され、12世紀には多くの巡礼者が訪れていたといいます。
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19世紀に大きな改装が行われましたが、象徴的だった6つの円天井やインテリアの装飾などは残され現在も見ることができます。新旧の建築が入り交ざった造りが印象深い内部です。
黒いマリア像(la vierge noire du puy)
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大聖堂内部で有名なのが、黒いマリア像。神聖なイメージの聖母マリアの色が黒いことでさまざまな憶測が飛び交っています。一節には、十字軍の時代に東洋の国から持ち込まれたとも言われる木製の黒いマリア像。膝の上に子供を乗せて椅子に座るその小さな姿は、ヘルメットをかぶったかのような髪形や尖った爪の指先、長めの鼻など顔の特徴から現在もなおミステリアスな存在として知られています。
伝説の熱病の石(La pierre des fièvres)
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この大聖堂の中でもうひとつチェックしたいのが、「熱病の石(La pierre des fièvres)」と呼ばれる黒い平らな岩。ル・ピュイ=アン=ヴレ司教区のウェブサイトによると、8世紀にこの地でドルメンと呼ばれる先史時代の墓石の取り壊しが行われ、その一部が聖母マリア像の台座として使われました。聖母マリアの台座として使われたことで、このドルメンの一部は大切な存在として扱われるようになっていきます。そのうちに熱病を患った人たちがそこで寝転ぶと病気が治ったと信じられるようになり、熱病の石として現在も伝説が残っています。
ル・ピュイのランドマーク、茶褐色の大きなマリア像
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ノートルダム大聖堂の裏にあるコルネイユ岩(Rocher Corneille)の上に建つのは、全長22,70mの高さの大きなマリア像。「フランスのノートルダム像」と呼ばれる茶褐色の華やかなマリア像は、ナポレオン3世がクリミア戦争の時にロシアから運んだ大砲の金属を使い、1860年に建てられました。
このマリア像は中に入ることができ、マリアさまが頭にかぶっている王冠部分がガラスのドーム状の形をしているので外を見ることができます。勾配がきついので、歩きやすい靴で上ることをお勧めします。
【フランスのノートルダム像(La Statue Notre-Dame-de-France)】
奇岩の上に建つサン・ミッシェル礼拝堂
ル・ピュイの町の端に行くと、高さ82mのエギュイユ岩(Rocher Aiguilhe)が姿を現します。頂上には、ゴデスカル司教が巡礼を成功させてル・ピュイに帰ってきたことを記念して、961年に建てられた歴史の古い礼拝堂「サン・ミッシェル礼拝堂」があります。内部に残るフレスコ画も修復されながら大切に保存されています。
頂上の礼拝堂へは、全268段の階段を上って訪れることができます。頂上は町全体を見渡せる絶景が広がります。
【エギュイユ岩のサン・ミッシェル礼拝堂(la chapelle Saint-Michel d’Aiguilhe)】
独自の製法で編まれるレース工芸
レースの町としても知られるル・ピュイ=アン=ヴレ。フュゾー(Fuseau)と呼ばれる特有のボビンをいくつも使って、糸を合わせていく伝統的な編み方をします。デザインはシンプルなものから、現代風にアレンジされたものも創作されているそう。町にはレース専門店もあり、コースターやテーブルクロスのほかさまざまな作品が販売されています。
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minacono ライター
日本とカナダで観光業界に勤務。旅行会社、現地ツアーオペレーター、航空会社、観光局、いろんな分野で旅と関わってきました。現在はフランス在住。美味しい食べ物とお酒がうまく出会った時すぐ感動する。犬好き。でも猫みたいな性格に憧れる。
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