(C)DINING OUT
日本のどこかで、数日だけ開催されるプレミアムな野外レストラン「DINING OUT(ダイニングアウト)」をご存知ですか。1泊十数万円もするという、プレミアムで特別な体験がしたくて、青森・浅虫温泉で開催されたDINING OUTに参加しました。
秘密に包まれたミステリアスな体験が待っている!?
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これまで日本全国で十数回開催されている“秘密のレストラン”こと、「DINING OUT(ダイニングアウト)」。7月某日開催されたのは、本州の最北端、青森県の浅虫温泉。知らされているのは、ホストが東洋文化研究科のアレックス・カー氏、料理人がミシュラン東京でひとつ星を獲得している「abysse」の目黒浩太郎シェフということだけ。
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どこで、どんな料理が提供されるのか、どんな特別な体験ができるのかまったくわからないミステリアスな状態。しかも1泊十数万円もするので、このミステリアスに少しばかりの不安も。でも、DINING OUTの取材に行くと話すと、会う人会う人から“それは素晴らしい体験ができる”との言葉しか聞かなかったので、これもひとつの魅力ととらえて、東京・羽田から青森へ飛んだのでした。
LEXUSが自分のものに! 北の大地をドライブで楽しむ
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青森空港に到着したのは、定刻通りの11時10分。到着口を出ると黒いスーツに身を包んだスタッフが、DINING OUTのボードを持って待っています。空港には20台ほどのLEXUSの車列が。その中の1台が割り当てられます。15時50分にホテルに戻れば、どこにドライブしてもよいとのこと。約5時間、LEXUSが自分のものになるのです! 観光スポット情報などのレクチャーを受けて、空港を出発。
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青森といえば「ねぶた」ですが、どうしても行きたかった全国的にも有名な「酸ヶ湯(すかゆ)」へ。緑に包まれた八甲田山の爽快なドライブコースを約40分。ここは豪雪地帯。雪に埋まる酸ヶ湯のイメージが強いですが、今は夏なのでもちろん雪はありませんが、かすかな硫黄の匂いがあたりを覆います。今まで晴れ渡っていた空に霧がかかり、なんだか訪れを祝福されているのか、いないのか・・・ 標高が900mあるので天気も変わりやすいのでしょうか。
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待ちに待った酸ヶ湯の千人風呂へ。総ヒバ造りの大浴場は、160畳もの広さがあり壮観。乳白色の湯がとうとうあふれ、基本混浴なのですが、一部湯船には衝立状の目隠しがあり、女性でも気兼ねなく湯あみを楽しめます。
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それにしても広い! 泳げる!! 手前から「熱湯」・かぶり湯の「冷の湯」・打たせ湯の「湯瀧」・「四分六分の湯」が広がり、もちろん源泉かけ流し。湯の神様なども祀られています。
空港から直行で温泉を楽しめて大満足。千人風呂のほかに「玉の湯」という男女別の温泉もあるので、混浴が苦手な方はこちらをどうぞ。
温泉・底なし沼・茶屋のだんごも満喫して浅虫温泉へ
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酸ヶ湯からの帰り道には、底なし沼で、強酸性の90度の湯が湧き出て魚が生息できない地獄沼、全長360mの城ヶ倉大橋、茶屋などに寄り道しながら、浅虫温泉のホテルを目指します。
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かなり青森を満喫した感はあるのですが、ここからが本番。今回のDINING OUTの舞台となるのは浅虫温泉。青森からも車で30分ほどの距離で、平安時代に発見されたという温泉地です。
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温泉は、布を織る麻を蒸すために使われていたとのことで、「麻蒸」が転じて「浅虫」になったよう。海岸線には浅虫の象徴ともいえる、お椀を伏せたような「湯の島」がぽっかりと浮かんでいます。いったいこの地でどんなプレミアムな体験とディナーが待っているのでしょう・・・ 期待感が膨らみます。
プレミアムな体験の幕開けは誰もいない美術館!
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ホテルからドライバー付きのLEXUSに乗り込み、青森県立美術館へ向かいます。三内丸山遺跡の発掘現場から着想を得たという、真白や土色など、濠のような壁面を持ったユニークな建物。なんと、美術館のエントランスでパーティーの幕は開けました。
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フィンガーフードとして用意されたのはバフンウニと本マグロのスナック。まるで宝石のようなかわいらしさ。ねっとり濃厚なウニの風味に、青森産リンゴのシードルの爽やかさが喉を駆け抜けます。ホストを務めるアレックス・カー氏によるDINING OUT開幕が告げられると、いよいよ館内に。
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静けさに包まれた美術館。特別にバックヤードから入場するというサプライズも。学芸員が付きっきりで展示品の説明をしてくれます。これは贅沢! 棟方志功や関野凖一郎、寺山修司、成田亨、奈良美智など、青森県立美術館は、青森にゆかりのある郷土作家のコレクションが充実しているのです。しかも、一作家一部屋のダイナミックな展示スタイル。こんなにも多くの個性あふれる作家を輩出しているとは驚きです。
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見逃せないのは美術館の中心であるアレコホールに展示された、マルク・シャガールのバレエ「アレコ」の背景画全4作品。1作品の大きさは縦9m×横15mもの巨大なもの。それがホールを埋め尽くす四方の壁に展示されています。これを光・音楽・ナレーションによって、ドラマチックに見せてくれるさまは、まるでひとつの舞台でも見ているよう。写真を掲載できないのが残念なのですが、4作品を一堂に見ることができるのは2021年2月までの予定。
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どれもおすすめなのですが、もうひとつ挙げるとすれば、奈良美智による「あおもり犬」。屋外展示物なのですが、その大きさがまたスゴイ! 高さ8.5m×幅6.7mもある犬ですが、こんなに大きいのにまったく威圧感がなく、真っ白でどこか物憂げなかわいらしい表情をしています。
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名残惜しい美術館ですが、18時ごろダイニング会場に向かって出発。この段階になってもどこに行くかは知らされず、期待は高まるばかりです。
海が見えるお寺の境内でディナーをいただく贅沢
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興奮冷めやらぬまま到着したのは、浅虫温泉のとある寺院。なんと「陸奥護国寺」の境内がディナー会場という特別な空間が用意されていました。山門では僧侶が出迎え、紫陽花が潮風に揺れる88段の階段を上って会場へ。振り帰ると眼下には陸奥湾が広がり、浅虫温泉の象徴でもある「湯の島」を正面に望む絶好のロケーション。
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しかも、こちらは西の方角。そうです! 津軽の海・湯の島に沈んでいく夕日がディナー会場を赤く染めていきます。一同、この特別な空間と眺望に感嘆の声をあげたのですが、太陽の傾きとともに、黄金色に染まる海を眺めていると自然と言葉数も少なく・・・ 自然の美しさに魅了された一幕は、言葉を失わせる大きな力を持っているのかもしれません。
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オリジナル
青森の魚介満載! 全16品におよぶお寺でのプレミアムディナー
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本日のディナーは、ミシュラン東京でひとつ星を獲得している「abysse」の目黒浩太郎シェフが担当。魚介類を自在に操るフレンチに定評があるので楽しみです! アミューズから始まったプレミアムなディナーですが、アミューズが8品にもおよびます。ホヤやホタテ、ムラサキウニなど、盛り付けも繊細でどれも青森産のものばかり。フジツボやワタリガニなどの珍しい食材も。しかもスパークリングワインやビール、日本酒、カクテルなどと、各料理との相性を考えたアルコールがそろいます。お酒がダメな人には、これも料理とのマリアージュに配慮したソフトドリンクが。
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7月とはいえ、北の大地の夜は海を渡る風も手伝って肌寒く感じます。そんな仕草を見せるとすぐに毛布が用意されるのです。特別なディナーを彩るスタッフは、地元のホテルやレストランに勤務する方々。たった2日間のDINING OUTのためだけに数カ月におよぶ準備を行ってきたのだとか。この護国寺の境内で開催するにあたり、DINING OUT最長となる2年もの月日がかかったとのことで、地元の協力もあってできる特別な体験。
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メイン料理は、イシナギや本マグロ、アワビを使った全3品。どれも食材の風味をダイレクトに感じる一品ぞろい。全16品の青森の食材を生かしたプレミアムディナーは、かわいらしい真珠をかたどったホワイトチョコレートとドライアップルによって幕が下ろされるのですが、ここで最後のサプライズが。正面の湯の島から、漆黒の夜空に大きな華を開いたきらびやかな花火が打ち上げられ幕を閉じたのでした。
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DINING OUTでしか体験できない、誰もいない美術館、境内でのディナー、プライベートな花火など、プレミアムなひとときも終わりのときを。ドライバー付きのLEXUSに乗り込み、優雅な気分のまま各ホテルへ。温泉をゆっくり楽しんだあと、ふかふかの寝床に。翌朝、各ホテルで朝食をとったあと、それぞれ後ろ髪引かれる思いで帰路に着いたのでした。
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次回の開催は、石川県・輪島になる予定。きっとその土地でしか味わうことのできない素敵な体験が待っています。
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次回のDINING OUT
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