すべて入場料無料!ドイツの美しき近現代教会5選【ドイツ】

Posted by: 川合英介

掲載日: Jan 20th, 2020

ヨーロッパ旅行の目玉の一つは、なんといっても教会訪問。歴史ある教会はガイド本に載ってますが、近代から現代に建てられた、比較的新しく、美しい教会、礼拝堂はあまり紹介されていません。そこでドイツの比較的新しく、美しい教会を紹介します。

ヘルツイェズ教会内部

【1】パウルス教会(ウルム)

アインシュタインの故郷、ウルムにあるパウルス教会は、大戦前夜に南ドイツを代表する建築家テオドア・フィッシャーによって計画されました。むき出しの鉄筋コンクリートのデザインは建設当時はとても斬新でした。

パウルス教会内部
内部に足を踏み入れると、その大きさに驚かされます。それもそのはず、この教会は、近くにある駐屯地の兵士のために造られたもので、2000人が一度に集うことのできる広さがあります。

パウルス教会内部2
テオドア・フィッシャーはコンクリートをふんだんに使って、この大空間を実現しました。

パウルス教会内部3
緩やかなカーブを描く壁面と天井は、巨大な胎内空間にも見えます。静謐で、しかしダイナミックで、かつ優しくもある教会です。

パウルス教会内部4

パウルス教会(Pauluskirche Ulm)
住所:Frauenstreet 110, 89073 Ulm, Germany
電話番号: 0731-24818
開館時間:【火〜日】 9:00〜16:00
閉館:月曜日
HP:https://www.pauluskirche-ulm.de/

【2】ヘルツ イェズ教会(ミュンヘン)

一見教会とはかけ離れて見えるこのガラスの直方体。れっきとしたイエズス会の教会です。広場に向かって開く大きなエントランスの扉は高さ14m、幅18m、重さ50t。開く事はあまりないそうですが、一度開かれると、人々を迎え入れるために建物が両腕を広げているようにも見えます。

ヘルツイェズ外観
内部にはガラス壁を通して、燦々と光が降り注ぎます。内壁のルーバーの間隔が後方から前方に向かって広がっていくと、空間に光のグラデーションが現れ、視線は祭壇のある前方へ引きつけられます。

ヘルツイェズ内部2
正面にはマテリアルの違いと後光によって現れる巨大な十字架。木材をつなぐ金具にも十字架のモチーフが使われています。そんな小さな気づきをきっかけとして周囲を見回してみると、色々なところに十字架のモチーフがありました。

いくつ発見できるでしょうか? 訪問した機会に、隠された十字架のモテーフを探してみるのも楽しいですよ。

ヘルツ イェズ教会(Herz Jezu Kirche)
住所:Lachnerstreet 8, 80639 Munich, Germany
電話番号:+49-(0)89-1306750
開館時間:週ごとに異なる
HP: https://www.erzbistum-muenchen.de/pfarrei/herz-jesu-muenchen

【3】瓦礫の中のマドンナ礼拝堂とコルンバ博物館(ケルン)

ケルンと言えばケルン大聖堂が有名ですが、ケルンには他にも沢山の教会が建っています。その中でも特に興味深いのは、コルンバ博物館の一部になっている“瓦礫の中のマドンナ礼拝堂”です。

コロンバ博物館、礼拝堂外部
かつてこの地にあったコロンバ教会は、第二次世界大戦で爆撃され瓦礫になりました。ところが聖母マリアの立像だけは、瓦礫の中に屹然と立っていたのです。街を失った絶望の中で、それでも立ち続けるその神々しい姿に、ケルン市民は奇跡を見ました。

そのマリアを保護するように、小さな礼拝堂が建築家ゴットフリード・ベームによって建てられました。2000年代には、礼拝堂横に広がっていた廃墟になったコルンバ教会とマリアの礼拝堂をも包み込んだ、建築家ペーター・ズントーの傑作、コルンバ博物館が誕生します。博物館に収蔵されているのは初期キリスト教文化を伝えるものから現代芸術まで様々です。

礼拝堂内部
マリアの礼拝堂では、西側の黒い壁に穿たれた多数の穴から光が差し込みます。また、コルンバ博物館のかつての教会の基壇が見られる一階部分でも同様に、レンガをずらして積んだことによる多数の穴から光が差し込み、厳かな空間になっています。

戦争と破壊、また、救済や自戒など、祈りの意味についても深く考えさせられる礼拝堂です。

瓦礫の中のマドンナ礼拝堂、及びコロンバ博物館(Madonna in den Truemmern、Kolumba)
住所: Kolumbastreet 4, 50667 Cologne, Germany
電話番号: +49(0)221-933193-0
開館時間:【水〜月】12:00〜17:00
閉館:火曜日
HP: https://www.kolumba.de/

【4】クラウス伝道師の礼拝堂(ケルン近郊)

ケルン近郊の平原の中にポツンと立つこの教会も、スイスの著名建築家、ペーター・ズントーによって計画されました。

クラウス礼拝堂外観
大地から押し出されたような教会の壁は、荒々しくもどこか柔らかい、地層のような積層コンクリートです。

クラウス礼拝堂外観2
一方、三角形の扉を開き内部に入ると、胎内のような小空間に、上部から光が差し込みます。この壁はコンクリート造で、コンクリートを打設するときに、荒々しい木肌を残した丸太が用いられ、コンクリートが硬化した後、この丸太が取り払われました。

クラウス礼拝堂内部1
壁に埋め込まれた、まるで光が壁の黒に触れ、凝結したような小さなビーズ状の明かり取りからもかすかな光が差し込むため、内部空間は比較的明るいです。

クラウス礼拝堂内部
建設はボランティアによって行われました。この教会から比較的近いケルンの大聖堂も600年の歳月をかけて造られていますが、この小さい礼拝堂ではコンクリートの壁をつくるのに1年をかけているそうです。

クラウス礼拝堂内部3
この現在の経済感覚を無視した建物の誕生そのものが奇跡のようなものですが、実現されたその空間も唯一無二のもの。礼拝と瞑想のために誕生したその空間に静かに身を置いて、空間と時間の流れに耳を澄ましてみてください。

クラウス伝道師の礼拝堂 (Bruder Klaus Feldkapelle)
住所:Iversheimer-Street, 53894 Mechernich-Wachendorf, Germany
開館時間: 【夏期間、火〜日】10:00〜17:00 、【冬期間、火〜日】10:00〜16:00
閉館:月曜日
HP: https://www.feldkapelle.de/

【5】モーリッツ教会(アウグスブルク)

ミュンヘンから電車で約一時間の距離にある歴史都市アウグスブルクの旧市街に立つモーリッツ教会は、イギリスの建築家、ジョン・ポーソンによって改修、修築されました。どのような教会なのか、説明など聞かないで訪問するのが一番いい、とも思うのですが、そういうわけにもいきません。

モーリッツ教会外部
普通、教会の中といえば、様々なオブジェで満ちあふれています。しかし、この教会の天井と壁は真っ白。側廊の壁にはアーチやハイサイドライト、天井には小ドームが連続していて、装飾はありません。

モーリッツ教会内部1
一方、最小限の造形が施された白い壁と天井は、窓から差し込む光の生み出す陰影によって、様々な表情を見せます。差し込む光は天候や時間によって刻々と変化するので、内部空間も同様に変化します。

モーリッツ教会内部2
あるいは、この白い壁は無垢のキャンバスで、信者の、もしくは訪問者の心の中で、心象風景を投影しているのかもしれません。

モーリッツ教会天井
静謐な雰囲気に包まれて、あなたの心の中を映し出すかもしれないこの美しい教会を、是非体験してみてください。

モーリッツ教会内部3

モーリッツ教会 (Moritz Kirche)
住所:Moritzplatz 5、86150, Augsburg, Germany
電話番号:+49-(0)821-259-2530
開館時間: 8:00〜夕方のメッセまで
HP: https://www.moritzkirche.de/

ドイツでは新しい教会が現在も次々に建てられています。また古い教会が改修されて全く新しい教会として生まれ変わった例も多くあります。中には戦禍が意図的に残されたものもあります。今回紹介した教会は付属している博物館を除き、全て入場無料なのもうれしいです。

ぜひ、伝統的なものだけでなく、近現代ドイツ教会の美しい空間を実際に体験してみてください!

[All photos by 川合英介]

PROFILE

川合英介

Eisuke Kawai

ドイツ、ミュンヘンで設計事務所に勤務。 週末と休暇を利用して旅に出る。海にいくと一緒に来る妻はケーキマイスター(ドイツでマイスター号を取得)。彼女はシティートリップには乗り気ではないので、イヤイヤついて来る二人の息子と男三人でヨーロッパと日本を駆け巡る。

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ドイツ、ミュンヘンで設計事務所に勤務。 週末と休暇を利用して旅に出る。海にいくと一緒に来る妻はケーキマイスター(ドイツでマイスター号を取得)。彼女はシティートリップには乗り気ではないので、イヤイヤついて来る二人の息子と男三人でヨーロッパと日本を駆け巡る。

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