メガバンクが環境問題にアクション
その「とある銀行」とは、オランダの3大メガバンクの一角をなす「ABN AMRO」(エービーエヌ・アムロ)。1991年創設の、比較的新しい銀行です。
そのABN AMROは数年前、アムステルダムのZuid(ザウド)地区にあるオフィスの増設を計画しました。実はこの銀行は、「ミッション2030」という2030年までに達成すべき気候変動抑制に向けた目標を持っているのです。そのため、増設オフィスにもさまざまな工夫がほどこされています。具体的にどんなものなのか、見ていきましょう。
銀行が作った「CIRCL」パビリオン
こちらが、2017年9月に完成したABN AMROの新施設「CIRCL」パビリオンの正面玄関。環境への負荷を配慮し、自動ドアではなく手動の回転ドアになっています。
エントランス・ホールは、とても銀行とは思えない雰囲気。アートの展示も行われています。
そしてエントランスの反対側には、雰囲気が素敵なレストランが。もちろん一般客の利用もOKですが、銀行の施設だけあり、行員と思しき人々もたくさん訪れています。
レストランのキッチンも、「CIRCL」の理念であるサステナビリティや循環社会の原則に基づいています。
シェフは、廃棄する食物をなるべく少なく抑えるため、発酵食品などの持続可能な調理技術をつねに試しているのだとか。そして食材そのものも、賞味期限の関係からスーパーマーケットで廃棄される寸前の果物や野菜をベースにしています。おいしい食べ物を提供しながら、キッチンからも環境にプラスの影響を与えようとしているのです。
「CIRCL」屋上スペース
エントランス・フロアから2階に上がると、そこにはお洒落なバーが。
バーの外には、アムステルダムの街並みを見下ろせる中庭スペースと庭園が設けられています。TABIZINE取材時は冬で、庭園に植物はありませんでした。けれど暖かいシーズンには、庭園のベンチで寛ぐことができます。
そしてオランダは緯度の関係から夏季の日照時間が長いので、定期的にDJブース付きイベントが催されるのだとか。大都会の真ん中の屋上庭園で、深夜まで音楽とお酒を楽しめるなんて素敵ですね。
ちなみにパビリオン内の電気は、すべて太陽光発電で賄われています。屋根に260台、パビリオン全体にまたがるファサードの端に別の260台が設置されています。
「CIRCL」地下フロア
ここまでは全く銀行らしからぬ雰囲気でしたが、エントランス・フロアから地下に降りるとビジネスのためのフロアになります。
このフロアは、主に銀行の会議室として使用されています。なんとこの会議室たちの建材(ドア枠など)には、機械メーカー「フィリップス」の古く取り壊された建物の建材を再利用しているのだそう。
再利用素材で、こんなに素敵なオフィスを作ってしまうなんて脱帽ですね。
廃材などを再利用
その他にも、「CIRCL」パビリオンは再利用素材がふんだんに使用されています。まず、エントランス・フロアのスタイリッシュな床材もリサイクル。
古い修道院とサッカークラブ「Top Oss」のクラブハウスのバーから収集されたものなのだそう。
また、パビリオン建設前にジーンズ回収キャンペーンが行われました。集まった1万6千本の古ジーンズは繊維化され、パビリオン内の天井の遮音材に使用されています。これは、館内中いたるところで天井を見上げたら見ることができます。
「CIRCL」パビリオンは銀行の施設なので、もちろんビジネス目的に建設されました。けれどこういった様々な工夫を見ると、本気で環境問題に取り組んでいるのがうかがい知れますね。ビジネスとサステナビリティ、更にはスタイリッシュさを成立させている好例と言えるのではないでしょうか。
住所:Gustav Mahlerplein 1B, 1082MS Amsterdam
営業時間:月〜金曜日(8:00〜21:00)
ルーフトップバーは14:00~
休み:土・日曜日
HP:https://circl.nl
[All photos by Naoko Kurata]