高速バスの悩みを解決!富山にできた「喜代多旅館」仮眠室サービスが便利すぎる

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Mar 9th, 2020

寝ている間にまちからまちへと移動できる高速バスは、便利な移動手段です。とはいえ、経済的な分だけデメリットもあって、足を伸ばして寝られない、歯も磨けない、女性の場合は着替えたり化粧をしたりもできない不便さがあります。さらに言えば、高速バスは朝5時前など早朝に到着してしまう場合が多いため、まちが動き出す9時、10時までの過ごし方に困るといった問題もあります。そんな高速バスのデメリットを解決してくれる旅館が、富山県の富山市中心部にフルリノベーションの工事を経て誕生しました。北陸旅行・出張を高速バスで楽しみたい人は、ぜひともチェックしてみてください。

足を伸ばして仮眠できる空間を用意したい


正面の奥が喜代多旅館 

富山の県庁所在地である富山市と言えば、東京、名古屋、京都・大阪などの大都市を始め、長野や新潟、高山(岐阜)、山形・仙台(宮城)など、地方都市との間でも高速バスが走っています。

一度、富山市に入れば、県内の立山・黒部や世界遺産の五箇山、おわら風の盆で有名な八尾(やつお)に向けた公共交通が整備されていますし、レンタカーを借りれば、お隣の石川県にある能登方面にも簡単に出られます。

別の言い方をすると、三大都市圏や東北から入り、加能越(加賀と能登と越中)+飛騨を周遊する際の起点となってくれる場所が、まさに富山市です。

その富山の中心部に誕生した宿が、喜代多(きよた)旅館。この宿は第2次世界大戦の敗戦直後に誕生した歴史があり、3代目のおかみである濱井憲子さんが、2019年末に4年の歳月を費やしてフルリノベーションしました。


左が喜代多旅館のおかみ・濱井憲子さん、右がスタッフの眞下奈生さん 

旅館業法に基づく正真正銘の旅館として、8つの和室、ベッドが置かれたユニバーサルルームを1室持ち、大浴場と小浴場、ミーティングルーム、レストラン、大広間などを一通りそろえていますが、今回の注目はずばり仮眠室。高速バスユーザーから、

「早朝に到着して、行く場所がなくて困った」

というニーズを耳にした経験があるそうで、富山駅に着いた後に、あるいは駅から深夜に高速バスで出発する旅行者に、1時間でも2時間でも足を伸ばして仮眠してもらえるような空間を用意しようと、仮眠室のアイデアを思いついたのだとか。

仮眠だけでなくシャワーもランドリーも共用キッチンも利用できる


喜代多旅館の1階ロビー 

仮眠室の利用のサービスには、同じフロア(3階)にあるシャワールームの利用も、ランドリーの利用も、階下にある共用キッチンの利用も含まれます。


2階の共用キッチン

高速バスの到着後に、あるいは出発前にシャワーを浴びられたら、その日の始まりが、あるいは車内での寝つきが全く変わってきますよね。それでいて1時間単位で足を伸ばせる仮眠ルームまで利用ができます。


3階のシャワールーム 

仮眠室には集合材で作られたベッドが8人分用意されていて、2段ベッドのように上下階に分かれています。空間の中には読書灯があり、スマートホンの充電に適したUSB端子と、コンセントも1穴ずつ用意されています。


3階の仮眠ルーム 

仮眠ルームと言いながら、ベッドの広さはきっちりあって、身長180センチほどの筆者が足を伸ばしても十分に収まる大きさでした。8人分あるベッドのうち、7番と8番の仮眠ベッドはもっと大きくて、筆者が足を投げ出して寝そべり、両腕を万歳しても問題なく収まる広さがありました。

「北欧の人はこちらに」

と、濱井さんが冗談を言うように、体の大きい日本人、あるいはオランダ人など背の高い外国人が利用する場合は、事前に体が大きいと伝えて、7番と8番のベッドに割り当ててもらえないか、宿側に確認をお願いしたいです。

仮眠室には鍵のかかるロッカーもあります。30リットルのリュックサックが1つ入るくらいの大きさですが、大きな荷物はフロントに預け、身の回りの貴重品をロッカーに入れておけば、安心して眠れる環境が整っています。

館全体で治安と風紀を維持し、安心して仮眠がとれる空間を


喜代多旅館は繁華街の一角にある 

ただ、仮眠室はあくまでも仮眠室です。法律の関係で各ベッドには扉が設けられておらず、仕切りの布が下がっているだけ。女性の利用者は多少の不安を感じるかもしれません。

しかし、おかみの濱井さんによれば、喜代多旅館の土地柄(富山市の繁華街の一角にある)も考えて、仮眠室の利用者を受け入れる際には一定の制限を設け、風紀や治安が乱れないように心がけていると言います。言ってしまえば、館内の雰囲気を乱す「柄の悪い利用者」はお断りという話。


館内の共有スペース 

過去の例で言えば、酔った勢いで「同伴」の女性を引き連れ、予約もなく宿の利用を希望した男性を断ったとの話です。仮眠室の利用に限って当日の電話予約も受け付けているそうですが、通常では飛び込み客(前日までの予約が必要)や泥酔状態の客を受け付けず、館全体で治安と風紀を維持しているため、安心して仮眠がとれる空間が確保されているのですね。

同じフロアにあるシャワー室にしても、4室あるうちの一番奥が女性専用になっています。当然ですが、脱衣スペースも各シャワー室で独立しています。おかみ自身が女性の旅人として各地に足を運ぶ人ですから、その経験を踏まえて、旅先の女性の不安な気持ちに細部まで寄り添うような設計になっているのですね。


シャワールームの洗面所 

女性が最も気になる清潔感についても、素晴らしかったです。仮眠室、シャワー室、洗濯室などを、意地悪な気持ちで細かく見て回りましたが、シャワールーム、仮眠室には髪の毛が一本も落ちておらず、水回りの見えない部分にも黒カビが一切見られませんでした。


シャワー室の向かいにあるランドリールーム 

まだ、再オープンして間もないというアドバンテージもあるのかもしれません。しかし、取材中に館内を撮影している際に、フィリピン出身の清掃員の方が熱心に掃除をしている姿も見られました。人の出入りする旅館ですから、清潔感には十分に注意が払われているのですね。

富山駅ではなく総曲輪のバス停で乗り降りが便利


路面電車の走る通りから見た喜代多旅館 

アクセスに関しては、高速バスが乗り入れるJR富山駅から、徒歩10分ほどの距離に立地しています。地方都市は駅周辺のにぎわいがあり、少し離れたエリアに繁華街が広がっている場合が多いです。富山も一緒で、駅前のにぎわいから離れた場所に桜木町と言われる繁華街があり、その縁に喜代多旅館が位置しています。さらに1ブロック先に行くと、総曲輪(そうがわ)と読むアーケード街の中心部があります。


路面電車の最寄り駅(荒町駅)とその奥が総曲輪 

高速バスで早朝に到着した場合、ほとんどのお店が富山では閉まっています。駅前であっても同じですから、駅で降りてスーツケースを転がしながら、総曲輪など中心部を目指して移動するのではなく、最初から総曲輪のバス停で下車して、喜代多旅館に直接訪れた方が無駄がありません。

逆に高速バスで深夜に富山を出発する場合は、喜代多旅館でぎりぎりまでリラックスして過ごし、富山駅ではなく総曲輪のバス乗り場から乗車すると、時間のロスがなくなります。

富山駅から発着する高速バスは、駅から高速道路の最寄りインターチェンジに向かう関係で、必ず途中に総曲輪を通ります。総曲輪がまちの中心部である以上、ほとんど全ての高速バスが総曲輪にあるバス停に停車します。予約時のテクニックとして、総曲輪での乗り降りを検討してみてくださいね。

喜代多旅館
住所:〒930-0083 富山県富山市総曲輪1-8
TEL:076-432-9131
contact@kiyotaryokan.jp
HP:https://kiyotaryokan.jp/

 

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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