建築美に包まれながら心と身体を癒やす、モダン湯治
大分県のほぼ真ん中に位置し、世界屈指の炭酸泉湧出地として名高い長湯温泉。かの「万葉集」に長湯を詠んだ歌があるほど、長き歴史を有しています。
そんな古来より人々に愛されてきた名湯にオープンしたのが「クアパーク長湯」。温泉棟、宿泊棟、レストランからなる複合施設です。2019年の誕生以来、早くも長湯温泉の新たなランドマークに。
(C)クアパーク長湯
設計を手がけたのは“建築のノーベル賞”ともいわれるプリツカー賞を受賞した、世界的建築家・坂茂氏。木と紙管を巧みに使う坂氏ならではのスタイルが随所に反映されており、デザイン好き必見の空間です。建築美に包まれながら温泉で心身を癒やす――。そんな特別体験ができるのも、クアパーク長湯の魅力といえるでしょう。
(C)クアパーク長湯
温泉棟の1階は水着を着用して入るバーデゾーン。まず目を奪われるのが、しなやかな曲線を描く大屋根。4本の丸太が互いに支え合うレシプロカル構造で、その独特の佇まいは圧巻の美しさ。
自家源泉は4本有し、それぞれの湯船が最適な温度に調整されています。バーデゾーンの温泉は36℃前後とぬるめなので、熱いお湯が苦手な人でも安心。まずはプールで軽くストレッチして筋肉を緩めます。
歩き湯は往復100m!ユニークな構造も必見
続いて歩き湯へ。こちらは半屋外になっていて、周囲の景色を眺めながら歩行浴が楽しめます。ときおり吹き抜ける風が涼やかで、なんとも気持ちいい。
緩やかなアップダウンやカーブ、足つぼゾーンなど構造も実にユニーク。往復100mもあっという間に完歩!炭酸泉ならではのシュワシュワ感も心地よく、体の内側からじっくり温まるのを実感します。日本全国に歩き湯は数多くあれど、ここまで楽しいものは、そうそうお目にかかれないのではないでしょうか。
歩き湯の途中には2つの露天風呂が完備。お湯は約40℃と熱めなので、ちょっと歩き疲れたときのひと休みにもピッタリです。渓流を一望する露天風呂に浸かれば、自然と一体化した気分に。
(C)クアパーク長湯
水着は持参OKですが、オリジナル水着をレンタルすることも可能(500円)。ふんわりした素材で身体の線が出にくいデザインなのも魅力的です。
温泉棟の2階には男女別の内湯。こちらでは水着を着用せずに入ります。長湯温泉は湧出量や二酸化炭素の含有量、温度から日本一の炭酸泉と称されており、さらにミネラル成分も豊富。長くゆったり浸かることで、重炭酸イオンが血管を広げ、血液の巡りを促すのだそう。お湯の表面には薄氷のように湯の花が膜を張っており、成分の濃さが一目瞭然です。
木の香りがゲストを迎えるコテージ
宿泊棟はすべて独立タイプのコテージ。ツインが12棟、シングルが2棟。“周辺の風景に溶け込むように”という坂氏の想いからコテージが採用されたのだそう。
(C)クアパーク長湯
室内は外見以上にゆったり広々。杉板の床やヒノキ材の壁や天井など、空間全体が木の温もりに包まれています。その香りの心地よさといったら!
すべての客室にウッドデッキが併設。星空を鑑賞したり、清々しい空気でリフレッシュしたり。穏やかな自然を五感で味わいながら寛げますよ。
(C)クアパーク長湯
ツインルームにはロフトが備わっており、隠し階段がなんとも言えないワクワク感に満ちています。それはまるで秘密基地、あるいは忍者屋敷のよう。
ちなみにベッドは壁収納式。ひとりで滞在する時は片方を折りたたんで、部屋を広く使うことも可能です。ほかにも脚を外して収納するテーブルなど、コンパクトな空間づくりを得意とする坂氏のアイディアが満載。インテリアの参考にしたいというか、もはやこのまま住んでしまいたいと思えるほど快適でした。
豊かな自然の恵みを味わえる朝食
(C)クアパーク長湯
朝食は「クアレストラン」にて提供。こちらにも坂氏の代名詞ともいえる“紙管”が配されており、スタイリッシュな雰囲気に優しさを添えています。
ゆったり気分を味わいたい時は、川の流れを眺められるカウンター席がおすすめ。地元農家から仕入れる新鮮な野菜や竹田産米「ヒノヒカリ」、近隣の「湧水茶屋」の豆腐など地産の恵みがそろいます。
今回筆者が利用した、1泊朝食付きプランは1人11,000円から(時期により変動あり)。のどかな自然や洗練された建築美、世界有数の炭酸泉で、心と身体を解きほぐしてみてはいかがでしょうか。
[Photos by Nao]