菅平高原から花の百名山・根子岳へ
今回は車で根子岳(ねこだけ)、四阿山(あずまやさん)の登山口となる菅平牧場駐車場までやってきました。車で上信越道上田菅平ICから40分ほどでしょうか。振り返ると駐車場からもすでに美しい菅平高原とその向こうに山なみが広がります。
公共交通でのアクセスは、上田駅から菅平高原ダボス停留所までバスがあるようです。所要時間は約1時間で料金は500円とのこと。ちなみに菅平はラグビーの合宿地として有名ですね。
日本百名山の四阿山は標高2,354m。別名を吾妻山(あづまやま)ともいい、山の形がどこから見ても東屋(あずまや)の屋根に似ていることから名付けられたそうです。誰もが知る有名な山ではありませんが、古事記にも登場するほど歴史のある山で、根子岳を含めた裾野は広大で美しい形をしています。
四阿山の西隣り・根子岳2,207mは、花の百名山。もともと四阿山と一緒の大きな山だったそうですが、太古の昔、四阿火山の爆発によって山頂部を失い、残った外輪山だといいます。今回はまず目の前の根子岳に登ってから、四阿山を目指します。
登山道の脇にレンゲツツジでしょうか、たくさん咲き乱れていました。朝日を浴びてまぶしく輝いています。
樹林帯の中をほぼ真っすぐ黙々と登っていきます。ちなみに「花の百名山」を著した作家の田中澄江さんは、昭和30年(1955年)ころ50歳になる直前、たまたま講演で訪れた菅平高原で登ることになったと記しています。その登山姿が驚きで、旅館の浴衣に藁草履、姉さんかぶりの手ぬぐいという格好だったらしいのです。
小さな田中澄江さんの珍妙な姿がなんだかかわいらしく想像できます。可憐なイワカガミがあちこちに咲いていました。この花を見つけるとなんだかホッとしますね。
キジムシロの花でしょうか。花の名前は正確にはわかりません。
チョウの名前はもっとわかりませんが、モンキチョウでしょうか。とにかく花の百名山ならばチョウの百名山でもあるはずですね。
花の咲き乱れる季節はこれから。でも日差しは眩しく、汗がどんどん出てきます。
高度を上げるにつれて樹木は低くなり、やがて石ころが増えていきます。後ろを振り返ると雪をかぶった北アルプスが遠くに見えますね。
2時間ほどでまずは根子岳に到着です。風もほとんどない状態で、気持ちのいい快晴です。この爽快感がたまりません。田中澄江さんの気持ちがよくわかりますね。
下を見ると、登ってきた菅平高原が良く見えました。高原地帯に白く点在するのは、ハウス栽培のシートでしょうか。
日本百名山・四阿山へ そしてその眺望
上の写真。遠くに見える山が四阿山です。根子岳山頂からいったん下って、そしてまた登っていくことになります。個人的にはこういう稜線歩きが楽しくて仕方がないのです。
上りの北斜面では日陰になったところに残雪がまだ残っていました。やはり2,000mを超えると6月でも日陰に雪が残っています。
そして根子岳から1時間30分ほどで四阿山に登頂。合計でここまで3時間半ほどでしょう。たのしい山歩きでした。
登ってきた方を振り返ると、根子岳が少し下に見ます。150mほどしか違わないのですが、けっこう低く見えるものですね。菅平の向こうにはるか北アルプスも見えます。
そして四阿山の南東に見えるのが浅間山です。浅間の標高は2,568m。今日はよく見えますねえ。登りたいなあ。
下山は根子岳を通らないルートで直接に菅平高原の登山口に戻りました。所要時間は2時間ほど。菅平牧場の牛乳で作った濃厚なソフトクリームをいただきました。味は最高でした!
住所:長野県上田市菅平高原1278
電話:0268-74-2356 (菅平牧場管理事務所)
HP:http://www.ueda-trenavi.jp/db/2011/02/2029.html(信州うえだ観光データベース)
山あいの秘湯 鹿沢温泉紅葉館へ
さてさて今宵の宿は、菅平から30分ほど走った群馬県の嬬恋村にある鹿沢温泉(かざわおんせん)紅葉館。日本秘湯を守る会の一軒宿でもあります。
「娘さん、よく聞けよ。山男にゃ惚れるなよ」という「雪山賛歌」。この歌の発祥地が鹿沢温泉だといわれています。若い方は知らないかもしれませんね。ダークダックスが歌ってヒットした昭和の歌です。
京都帝國大学山岳部員とともに鹿沢温泉に来ていた登山家・化学者の西堀榮三郎が、雪で足留めされた際に作った山岳部の歌だといわれています。曲はアメリカ民謡の「いとしのクレメンタイン」でした。
それはともかく、鹿沢温泉紅葉館は明治2年(1869年)創業の古い温泉宿で、宿泊した新館は6年ほど前に建てられたそうです。旧館と山小屋風のキレイな建物の構造になっています。
とはいえ、源泉「雲井乃湯」は古めかしい旧館の一段低い場所にあります。建物は昔のまま。加水加温もない源泉かけ流しの天然温泉でまさに秘湯の雰囲気です。こういう味わいが好きな人は好きでしょうね。泉質はマグネシウム・ナトリウム炭酸水素泉で、源泉は47.5度とちょうどいい頃合い。色が深いグレーとでもいいますか、不思議な色をしています。
男女別の内湯だけですが、「お湯と浴槽には手を加えるな」という先祖の教えを守っているのだそうです。昔のままの木製の浴室と浴槽とは近頃珍しいですね。貴重な文化遺産といえるかもしれません。
温泉の後は大満足の夕食
5代目となる御主人は京都の料亭で修業されたそうで、山あいの秘湯で供される料理とは思えないほど素晴らしくいものでした。
計14品と品数が多いのです。上の写真はギンヒカリのお造りです。ギンヒカリは群馬県のブランド淡水魚。あっさりと甘くサーモンとも微妙に違います。おいしかったです。
上の写真は合鴨とマツタケのはさみ焼。この他にもブロッコリー胡麻和えに松茸入り茶わん蒸し、イチジクの天ぷらや玉ねぎベーコンの重ね揚げなど、エッジの利いた料理が出されました。
そしてレンコン饅頭の餡かけ。いい出汁が出ています。ひとつひとつ丁寧に作っているのがわかりますね。
とどめは牛ヒレ肉の生姜焼きに、新生姜の炊き込みご飯で大満足でした。ごちそうさまでした。
四阿山も根子岳も、そして鹿沢温泉紅葉館も決して有名な山や温泉ではありませんが、ほんとうにいいロケーションにある素晴らしい趣の山で、鹿沢温泉はまさに秘湯でした。観光客があまり押し寄せないでほしい、秘密にしておきたいような場所です。
[All Photos by Masato Abe]