四季折々の自然に癒やされる「奥入瀬渓流ホテル」
旅のはじまりは東京駅から。グリーンのボディがかっこいい東北新幹線 「はやぶさ」に乗り、約2時間50分で青森県の八戸駅に到着しました。「奥入瀬渓流ホテル」までは、八戸駅をはじめ、新青森駅、青森駅から無料シャトルバスが運行(冬季は八戸駅、青森駅のみ運行)。予約定員制のため、早めの予約をおすすめします。
八戸駅から1時間ほど走ると、森の中に溶け込むように建つ「奥入瀬渓流ホテル」に到着。エントランスをくぐると、岡本太郎の巨大暖炉「森の神話」に目を奪われます。
高さ8.5m、重さ5t、その存在感は圧巻。1991 年に完成したブロンズ製の暖炉は、奥入瀬の森をイメージした妖精、鳥、きのこなどが描かれ、不思議と温かさを感じます。
高い天井と、大きな窓が開放的なロビーに溶け込んでいて、なんとも美しい空間。目の前を流れる奥入瀬渓流を眺めながら、この美しいロビーでゆっくりと過ごすのも贅沢な時間です。
西館のラウンジには渓流をイメージしたアルミニウム合金製暖炉「河神」が存在。こちらは岡本太郎の遺作として知られます。
「奥入瀬渓流ホテル」の客室と温泉
東館と西館で構成される「奥入瀬渓流ホテル」の客室は187室。素足でくつろげる和と洋の要素をミックスしたモダンルームから半露天風呂付きの客室、ペットと過ごせるペットルームまで、8種類の客室を用意。
私が宿泊したのは、渓流を望みながらせせらぎに癒やされる「渓流和室 露天風呂テラス付」というお部屋。68平方メートルのゆったりとした空間で、窓に向かって設置された「渓流ごろんとチェア」に座ってのんびりくつろぎながら、奥入瀬渓流を満喫することができます。
©Hoshino Resorts Inc.
そして、プライベートなテラスには露天風呂がある贅沢な造り。渓流のせせらぎを聴きながら時間を気にせずお風呂を楽しめるのも魅力です。
©Hoshino Resorts Inc.
大浴場「渓流露天風呂」は、すぐそばを流れる奥入瀬渓流のせせらぎや緑豊かな大自然と一緒に温泉を満喫できる露天風呂。春から夏にかけては新緑、秋は鮮やかな紅葉に染まり、冬になると露天風呂の壁面にできた氷瀑に囲まれ・・・季節ごとに表情を変える風景を楽しむことができます。
©Hoshino Resorts Inc.
りんごの魅力を存分に味わう「青森りんごキッチン」
りんごの生産量日本一を誇る青森県。その魅力を存分に味わえる個性的なビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」は、料理もインテリアもりんごにこだわった空間。
エントランスには、約1,800個のりんごのオブジェとオリジナルシードルを貯蔵する「ウェルカムりんごセラー」や職人の技が光る青森の伝統工芸品「津軽びいどろ」を使用したりんごのアートがお出迎え。手作りだからこそ、よく見ると色も形もひとつひとつ微妙に違い味があり、思わず写真に収めたくなるかわいらしさ。
前菜からサラダ、メイン、デザートに至るまで趣向を凝らした調理とアレンジでりんごを味わえるメニューが並びます。
ライブキッチンのカウンターでは、シェフが熱々のアップルパイや牛肉の鉄板焼きなどを調理。雄大な山脈と海に囲まれた青森は、山の幸と海の幸の宝庫。新鮮な海鮮やせんべい汁など青森らしい一品も味わうことができます。
デザートコーナーに並ぶ「わらび餅」は、シロップにりんごを使用し、ほのかに広がるりんごの甘みとわらび餅の相性の良さに驚きました。おすすめは「あつあつアップルパイ」。りんごのコンポートにパイ生地を被せて焼き上げたあつあつのアップルパイに、濃厚ソフトクリームを添えていただきます。
りんごの生産量日本一を誇る青森県だからこその魅力がギュッと詰まった個性派レストラン。今までにない新しいりんごの魅力に出会えることでしょう。
ホテル内には2つのレストランが存在し、2019年にオープンしたフレンチレストラン「Sonore(ソノール)」でいただける季節のコース料理も人気。「青森りんごキッチン」とはまた違った落ち着いた雰囲気なので、2泊してどちらのお料理も楽しみたいところ。
「奥入瀬渓流ホテル」は夜のプログラムも豊富
あたりが暗くなるころ、ホテルを出発。15分ほど車で走った場所、蔦温泉旅館の近くにある蔦の森でホタルを鑑賞するツアーに参加しました。蔦沼周辺は、3種類のホタルが生息している貴重な場所。ガイドと共に懐中電灯を手に森の中を散策しながらホタルを探します。
©Hoshino Resorts Inc.
この日は森に入る前から、ホタルが飛んでいるのを発見。さらに森の中へ5分ほど歩くと、そこはもう360度ホタルに囲まれた幻想的な空間。手のひらにとまるほど、すぐ近くで天然のホタルを見ることができました。
こちらのイベントが実施されるのは、7月中旬から下旬のみ。夏の夜に儚くも美しく光るホタルが舞い、忘れられない夜となりました。
ホテルに戻ると、西館のパブリックスペースでは、宿泊者が無料で参加できるアクティビティ「森の学校」が開催されていました。ガイドによる奥入瀬渓流の成り立ちやそこに生きる植物についてなど、大人の知的好奇心をくすぐる講義を聞くことができ、翌日の奥入瀬渓流散策の予習にもおすすめ。
ほかにも2021年7月1日~8月31日の期間限定、渓流沿いで青森県の30種類のシードルを一度に楽しめるイベント「奥入瀬シードルフェス」を開催。りんごから作ったお酒「シードル」は、酸味と甘みのバランスがほどよく、さわやかで夏の夜にぴったり。渓流に面した中庭で夜風を感じながら味わうもよし、ライトアップされた館内のバースペースでくつろぐもよし。フルーティな口当たりのシードルが青森の旅の夜を彩ります。
素敵な1日のはじまりに。「渓流テラス」での朝食
旅の朝のおたのしみ、朝食を提供しているのは「青森りんごキッチン」と「渓流テラス」の2カ所。中でも渓流沿いに設けられたテラスで朝食をいただく「渓流テラス」は、人気のプログラムです。すぐ目の前に渓流が流れる開放的なロケーションは、思わず深呼吸したくなるほどさわやかで、素敵な1日が始まる予感。
スモークサーモンのオーブンサンド、生ハムのクロワッサンサンドのほか、チキンタルティーヌ、キッシュなど、目にも楽しい彩り豊かな料理を詰め込んだ朝食セットを運んできてくれます。川のせせらぎが優しく響く空間で、のんびりいただく朝食は、優雅な心地に。ビュッフェ朝食付プランからの変更の場合、大人+1,300円、小学生+1,300円、幼児+650円で変更可能。席に限りがあるため、早めの申し込みをおすすめします。
1日1組限定の「3密回避の安心プライベートツアー」
4月~11月の間は、ホテルと奥入瀬渓流の中流域を結ぶシャトルバスが1時間おきに運行しており、個人で奥入瀬渓流を気軽に楽しむこともできます。ネイチャーガイドが常駐し、周辺の自然情報や観光情報について案内するアクティビティデスクは、奥入瀬渓流を初めて訪れる人にとって頼もしい存在。
今回は、奥入瀬渓流の魅力を存分に味わうべく、1日1組限定の「3密回避の安心プライベートツアー」に参加しました。アップダウンが少なく、車を降りてすぐにアクセスできる遊歩道があることから、子どもからご年配まで気軽にハイキングを楽しむことができるのも奥入瀬渓流の魅力。
この日は気温30度を超える真夏日でしたが、渓流周辺は木陰も多く、その涼しさにも驚きました。渓流や滝が空気を冷やして極上なマイナスイオンの空間を作り上げているのでしょう。葉や枝を踏む音や涼しい風・・・大自然に包まれながら五感が心地よく刺激され、身も心もリフレッシュされるのを感じました。
十和田湖から流れ出る奥入瀬渓流に沿って約14km続く渓谷は、躍動感あふれる水の流れと緑豊かな天然林、そしてその根元や岩の表面に生息する苔など、見どころがいっぱい。自分だけでは見逃してしまいそうな小さな自然も経験豊富なネイチャーガイドが一緒なら、その時期に一番美しい景色を逃すことなく教えてもらえます。
貸し出されるルーペを片手に岩肌に顔を寄せてミクロの苔の世界を眺めると、意外なアート性や愛らしさに驚かされました。苔に手を伸ばすと、ふわふわの天然カーペットのような感触。霧吹きで水を与えてみると、水滴をまとった姿はまたなんとも美しい。なるほど。これはハマる人が続出するのもわかる気がします。
苔づくしの宿泊プラン「苔ガールステイ」
日本に存在する苔は約1,800種類。そのうち約300種が生息する奥入瀬渓流の苔の魅力を存分に楽しめるよう企画されたのが「苔ガールステイ」!ジャゴケを再現したクッションや苔ティッシュケース、胞子体が付いたスリッパなど、思わず笑顔になるほど客室はすべて“苔仕様”!
ネイチャーガイドとともに、奥入瀬渓流の中流域約1kmの道程を2時間半ほどかけて、じっくりと苔を観察しながら歩く「苔さんぽ」や自宅に持ち帰れる「こけ玉作り体験」のアクティビティ体験も含まれています。
今年からインルームダイニングで苔を堪能できる「苔ディナー」も加わり、そのリアルさに驚かされます。苔との触れ合いを楽しむことができるユニークなプランは、思い出に残る旅になること間違いなし。
大自然の中を走り抜ける「渓流オープンバスツアー」
昨年からスタートした開放感あふれる屋根なしのオープントップバスで奥入瀬渓流を周遊する「渓流オープンバスツアー」も必見。吹き抜ける風と森の香りを感じながらのドライブは、コロナ禍でも換気の心配なく、奥入瀬渓流の自然を360度満喫できます。
一般的なバスより高い位置に座席が設けられるオープンバスから見られる景色は、散策とは異なる視点。トンネルのような深緑の森に手が届きそうなほど近く、大自然の中を走り抜ける爽快感は格別です。
四季折々の風景や美しい自然がたっぷりと感じられる「奥入瀬渓流ホテル」。
奥入瀬渓流の自然と見事にマッチし、滞在を通して青森の魅力を知ることができるので、好きにならずにはいられません。次に訪れるなら紅葉の時期も良いし、冬の氷瀑をめぐるツアーも捨てがたい・・・。季節ごとに何度でも訪れたくなる魅力が詰まっていました。
住所:青森県 十和田市大字奥瀬栃久保231
電話:0570-073-022
チェックイン/アウト:15:00/12:00
公式サイト:https://www.oirase-keiryuu.jp/
[Photos by Sakiko Kubo]