新潟は神社の数が日本一
新潟県の意外な日本一といえば、何を思い浮かべますか? 冒頭でも書いたようにお米の生産量かなと思いますよね? 農林水産省によると、お米の生産量No.1は現に新潟県で、わずかな差で2位が北海道、3位に秋田県が続きます。
しかし今回の日本一は違います。遠因としてお米の豊かな生産力も関係するようですが、日本で最も神社の多い都道府県が実は新潟なのですね。
第二次世界大戦の敗戦直後である1946年(昭和21年)に、国家神道廃止に伴って神社本庁という宗教団体が設立されます。『広辞苑』(岩波書店)によれば、
<全国の神社の大半を組織する>
神社神道の宗教組織だとも書かれています。
全国の都道府県にその地方機関が置かれていて、新潟県の場合は三条市に新潟県神社庁があります。新潟県内にはその県神社庁に連なる神社が4,700社近く存在し、都道府県別で見た場合、この数は全国で一番なのだとか。要するに、日本で一番神社の多い都道府県=新潟なのです。
新潟の神社は神社合祀政策の影響が小さかった
どうして新潟県には日本一神社が多いのでしょうか? その点については、新潟県神社庁の公式サイトにも見解が書かれています。それによると、新潟の神社が明治末期に時の新政府が進めた神社合祀(ごうし)政策の影響を大きく受けなかった点がまず挙げられるとか。神社合祀政策とは、膨大な数ある神社を合併整理する政策です。
『世界大百科事典』(平凡社)には、
<明治初年と明治末年に政府の手でおこなわれた>
と書かれています。
神社を整理して各神社に格式を与え、末端の村社にも指定されない雑社(神社の境内に鎮座するような神社)を合併し、整理しました。その影響を新潟の神社があまり受けなかったために、多くの神社が残っていると考えられるのだとか。
かつて日本で最も人口の多い土地が新潟だった
(C) Distinctive Shots / Shutterstock.com
明治初期の新潟県の人口の多さについても、神社の多い理由として新潟神社庁は挙げています。おそらくびっくり仰天の事実だと思いますが、明治時代の間(断続的にですが)、新潟県は日本で最も人口の多い自治体でした。東京府(のちに東京都)でもなく大阪府でもなく愛知県でもなく、新潟県の人口が日本で最も多い時期が明治時代は長く続いたのです。
都市部のみならず、各地で自然に形成された漁村や農村ではたくさんの暮らしが営まれていました。暮らしがあれば神仏の存在が必要になります。
現在でこそ巨大な面積を抱える新潟県ですが、1871年(明治4年)に藩がなくなり県が置かれた時は、13県に分けられました。新潟・柏崎・相川(あいかわ)の3県に間もなくそれらがまとめられ、1873年(明治6年)に柏崎県が新潟県へ入ります。
1876年(明治9年)には相川県が新潟県へ入り、1886年(明治19年)には東蒲原郡(かんばらぐん)が加わって現在の新潟県の姿になります。この時点で人口は約163万人にまで膨れ上がり、その数は全国1位だったと新潟県の公式ホームページにも書かれています。
さらに徳川幕府が倒れた直後までさかのぼると、現在の新潟県は11の藩と越後府・佐渡県・柏崎県に分けられました。言い換えると、もともと新潟の各地には多種多様な暮らしがあり、それらの暮らしにそれぞれの神社が置かれていたのです。
トラベルライターとして海沿いを旅しても内陸を旅しても「パワースポット」として神社を推す観光情報を新潟では目にします。裏を返せば、新潟各地にバラエティー豊かな暮らしがあり、その暮らしの分だけ神社(パワースポット)が存在した証拠とも言えそうです。
新型コロナウイルス感染症の影響が収まり、自由に旅ができる時代が完全に戻ってきたら、パワースポットとも称される新潟の由緒ある神社の数々へ訪れる旅の形も楽しいかもしれませんね。
[参考]
※ 新潟県の神社庁について – 新潟県神社庁
※ 米生産量上位について – 農林水産省
※ みんなが行ってるパワースポット10選 – にいがた観光ナビ
※ 世界大百科事典 – 平凡社
※ 県の歴史 – 新潟県
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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