
7軒の農家でしか栽培されていない七島藺

(C)七島藺工房 ななつむぎ
大分県北東部に位置する国東市。江戸時代初期に地元の商人が琉球から七島藺を持ち帰り、1660年頃に栽培が始まったといわれます。昭和32年(1957年)には年間500万枚もの七島藺の畳表が全国に出荷されるなど、地域を支えた主要産業でした。
しかし密集して生える性質のため、植え付けや刈取りは手作業が基本。機械化が難しく、大変な手間がかかるため生産量は次第に減り、現在では7軒の農家でしか栽培されていません。

(C)七島藺工房 ななつむぎ
収穫時期には高さ2m近くにまで成長する七島藺

(C)七島藺工房 ななつむぎ
茎の断面が丸いイグサと違って、七島藺は三角形。このままでは織れないため、繊維を縦に裂く作業も必要に

(C)七島藺工房 ななつむぎ
裂いた後はじっくり乾燥させ、さらに1本1本選別します

イグサよりも青く濃い香りが特徴
表皮が堅いため耐久性に優れ、イグサの畳表よりも3〜4倍は長持ちする七島藺。ほとんどの農家で4月の植え付け、8〜9月の収穫、10〜3月の畳織りまで全ての工程を一貫して行っているようです。畳織りは非常に複雑な作業のため、1日2畳程度が限界なのだとか。
消えかけた伝統に、新たな火を灯した工芸作家

最盛期には年間500万枚も生産されるも、今では2,000枚程度まで激減しているという国東市の畳表。そんな時代とともに途絶えつつある七島藺を、現代的な感性で、新たな価値を創造しているのが工芸作家の岩切千佳さんです。
「貴重な素材だからこそ、日々の暮らしの中で多くの人に使ってほしい」と七島藺を使ったさまざまな工芸品を制作。オブジェやアクセサリーなど、今までになかった商品を次々と生み出しています。さらに全国各地でのワークショップ、七島藺の魅力を発信するイベントも開催。消えかけていた伝統と日常の暮らしの距離をつないでいます。

岩切さんの工房「七島藺工房 ななつむぎ」では七島藺を使った鍋敷きやワインボトルバッグ、ブレスレットをはじめ親しみやすいアイテムが展示。伝統素材が用いられながらモダンスタイリッシュなデザインが印象的です。
その独創性は徐々に評判を呼び、「ビームスジャパン東京」「うなぎの寝床」といったセレクトショップや「大分トリニータ」とコラボした商品なども製作。さらにJR九州の豪華寝台列車クルーズトレイン「ななつ星in九州」の乗客向けプログラムで七島藺の小物作りをレクチャーするなど、幅広い活動を続けています。
七島藺の香り、感触を体感できるワークショップ

今回は七島藺を使ったミニ畳作りを体験。事前予約すれば誰でも参加可能です。材料はすべて用意されるので手ぶらでOK。

まずは畳の縁となる生地を数種類からセレクト。続いて厚紙の下に生地を入れ込み、畳の裏から釘を打ちしっかり固定します。

そして完成したミニ畳。縁を好みの生地で作れるのもうれしいポイント。部屋に飾るだけで空間が一気に華やぎそうです。七島藺ならではの力強い感触や濃い香りを感じられるのも◎。

続いて、染め上げた七島藺を編んでミサンガをつくります。端を固定し、ひたすら三つ編みを繰り返していくと・・・

素敵なブレスレットの出来上がり! 単体でも腕時計と合わせても良さそう。Jリーグ開幕頃に大ブームを引き起こした、あのミサンガは、“紐が自然に切れたら願いごとが叶う”なんてジンクスがありましたが(アラフォー以上なら覚えている人も多いはず 笑)、こちらは永遠に切れなさそうな丈夫なつくり。お守りとして、ファッションとして末長く楽しめるアイテムです。
「生産者の方々が手作業で植え、丹精込めて育んだ七島藺の魅力を、もっと多くの人に知ってほしい」と語る岩切さん。今後は特に子どもたちへ、その素晴らしさを伝えていきたいといいます。過去と未来を紡ぎ、人と人とをつなぐ「七島藺工房 ななつむぎ」。大分を旅したときはぜひ訪れて、日本の伝統美を身近に触れてみてはいかがでしょうか。
[Photos by Nao]
あなたが知りたかったことが、この記事で参考になりましたか?
Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
【全国ご当地プリン10選】現地でしか手に入らないレアものから映え系・変わ
Mar 25th, 2023 | TABIZINE編集部
全国にはたくさんのご当地プリンが存在し、続々と新商品も登場しています。そんなご当地プリンは現地で味わうもよし、お土産に買って帰るのもよし。今回は、現地でしか食べられないものから、おいしい・可愛い・映え・常温保存OK・味の種類が豊富・変わり種プリンまで、北から順に紹介します。
【大分県のお土産13選】お菓子・調味料・おしゃれな陶器まで空港や通販で買
Jan 13th, 2023 | TABIZINE編集部
大分県のお土産といったら、何を思い浮かべますか? 長年愛される銘菓はもちろん、名産品の「かぼす」を使ったお菓子やお菓子以外の調味料、おしゃれな雑貨として贈り物にもぴったりな工芸品「小鹿田焼(おんたやき)」まで、おすすめのお土産を13品ピックアップしました。空港や駅など、販売している場所の情報、気になる食品の賞味期限もお伝えします。
【大分県のおすすめ土産】常温保存でこのおいしさは驚き!ほろ苦いカラメルも
Dec 15th, 2022 | TABIZINE編集部
今回は、大分のお土産「地卵はちみつぷりん」を紹介します。パッケージも可愛くて、1個から買えるのもいい! さらにこのプリンのいいところは常温保存OKで日持ちもすること。保冷剤不要で持ち歩きの心配をしなくていいのは、お土産としてはありがたいですよね。
【大分県のおすすめ土産】これはうまい!瓶入りで可愛くてかぼすの風味さわや
Dec 8th, 2022 | TABIZINE編集部
今回紹介するのは、大分で見つけた「かぼすグミ」。大分県産の黄かぼすの果汁と果皮が使われた、コロンとした形が可愛らしいグミです。瓶入りなのに、ワンコインでおつりがきちゃうのもお土産としてはうれしいポイント。大分土産の候補の一つにいかがでしょうか?
【大分のお土産】「ざびえる」と「瑠異沙(るいさ)」どっちがおすすめ?和洋
Oct 2nd, 2022 | Mayumi.W
大分の地を訪れたフランシスコ・ザビエルの名前を冠した、大分の銘菓「ざびえる」。日本に南蛮文化を伝えたフランシスコ・ザビエルを讃えた、和洋折衷のお菓子です。大分のお土産として有名な「ざびえる」を、姉妹商品「瑠異沙(るいさ)」と食べ比べ! 果たしてどんなお菓子なのか? どんな味がするのか? 二つのお菓子を実食ルポします。
【大分のおすすめ土産】郷土料理が和菓子になった!パッケージも素敵な「豊後
Oct 1st, 2022 | Chika
大分県の郷土料理「やせうま」をご存じでしょうか? やせうまをもっと身近に楽しんでほしいという想いから生まれたのが「豊後銘菓やせうま」。パッケージも可愛らしく、お餅のようでお団子のような食感も感じながらも、ひと口でぱくっと食べられる手軽さもうれしいです。大分空港で買えるので、大分旅行のお土産としてもおすすめですよ!
パッケージ可愛すぎ。大分土産「かぼすこ」って?いろいろかけてみた【編集部
Sep 21st, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
TABIZINE編集部員が、取材先やプライベートで気になった小ネタをお届けする編集部ブログ。今回は、大分のお土産にもおすすめの「かぼすこ」。見て可愛い、かけておいしい辛味ご当地調味料なんです。
まるで海外!大分の無料映えスポット「湯布院フローラルヴィレッジ」【編集部
Sep 8th, 2022 | TABIZINE編集部ブログ
大分県の「湯布院フローラルヴィレッジ」を知っていますか? まるで海外のような街並みをつくるグッズショップが集まった、無料で入れるフォトスポットです。ここが賛否両論と言われる所以を現地に確かめに行ってみました。
【大分のおすすめ体験13選】別府温泉・絶景スポット・小鹿田焼・日田焼きそ
Jan 6th, 2022 | Nao
「おんせん県おおいた」の名の通り、温泉の湧出量・源泉数ともに全国1位を誇る大分県。温泉はもちろんのこと、自然美を間近に感じられる絶景スポットや江戸時代の風情漂う城下町など、旅を彩る名所は実に多彩。そんな大分の魅力を再発見できる、宿、名所、ご当地グルメなどをまとめました。
「小鹿田(おんた)焼の里」で触れる一子相伝・無形文化財の美しさ|現地レポ
Dec 22nd, 2021 | Nao
江戸時代中期に大分県日田市で開窯し、300年以上の歴史をもつ「小鹿田(おんた)焼」。親から子へと技を伝える一子相伝を守り続け、国の重要無形文化財に指定されています。土造りからすべて手作業で行われる器は、素朴で温かみあるデザインが特徴。9軒の窯元が集う「小鹿田の里」を訪ね、その魅力と歴史に迫りました。