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「小鹿田(おんた)焼の里」で触れる一子相伝・無形文化財の美しさ|現地レポ

Posted by: Nao
掲載日: Dec 22nd, 2021. 更新日: Dec 23rd, 2021

江戸時代中期に大分県日田市で開窯し、300年以上の歴史をもつ「小鹿田(おんた)焼」。親から子へと技を伝える一子相伝を守り続け、国の重要無形文化財に指定されています。土造りからすべて手作業で行われる器は、素朴で温かみあるデザインが特徴。9軒の窯元が集う「小鹿田の里」を訪ね、その魅力と歴史に迫りました。

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小鹿田 大分


 


悠久の時が流れるのどかな里山

小鹿田焼の里 大分
(C)一般社団法人 日田市観光協会

大分県の北西端、福岡県との県境に位置する日田市。街の中心から車を走らせること約30分、人里離れた静かな山あいに源栄町皿山の集落が見えてきます。ここが9軒の窯元とその家族が伝統を守り続ける「小鹿田の里」です。谷間のわずかな空間に、身を寄せ合うように佇む姿はまさに日本の原風景。時の流れがゆるやかで、桃源郷に来たかのような錯覚を覚えました。

小鹿田焼(おんたやき)のはじまりは江戸中期の1705年。生活雑器の需要をまかなうために、当時天領であった日田の代官によって興されました。福岡県の小石原焼の分流の窯として開かれたため、技法はその影響を強く受けています。

小鹿田 大分

柔らかな土の風合いが特徴の小鹿田焼。独特の模様「飛び鉋(かんな)」が施された器は素朴ながら、300年前に作られたとは思えないモダンさも備えたデザインです。

唐臼
(C)大分県

特筆すべきは川の水力を利用した土作り。こちらは唐臼(からうす)といって、テコの原理で土を細かく砕いていくもの。集落を歩けば「ギィーーー、ゴットン!」という木の軋む轟音が聞こえてきます。ひっそりした里山に、心地よく響きわたる唐臼の音は「残したい日本の音風景100選」に選ばれているそう。

一子相伝で受け継がれる窯元

小袋窯

1705年の開窯以来、小鹿田焼は黒木家、柳瀬家、坂本家の血縁のみで継承されています。弟子を取らず、職人も雇わず、「一子相伝」で窯を受け継いできた背景には、谷間という地形ゆえ、窯元を増やす土地がなかったことが大きいとか。ちなみに一子相伝とは、技芸などを自分の子ども1人のみに教える日本古来の伝承方法。2人きょうだいならどちらかにしか伝授できません。

今回訪ねたのは集落の南端に佇む「小袋窯」。元々は黒木家系の窯でしたが4代目の養子が自姓を名乗って以来、小袋姓となったそう。作陶するのは8代目・小袋定雄さんと9代目・道明さん。定雄さんに小鹿田焼が作られる工程の一部を案内していただきました。

約2カ月間も要する土づくり

製作はまず、集落周辺の山で原土を採取するところからはじまります。その後10日間ほど乾燥させ、唐臼で2週間かけて粉砕。間近で見る唐臼はスケール、音ともに迫力満点! まるで生き物のような力強さを感じました。

粉砕した土は水槽に入れ攪拌。さらに何度も濾して不純物を取り除きます。

「おろ」と呼ばれる水抜き台で、泥の水分のみを下に浸透させます。

水抜きした粘土は窯の熱で1カ月間乾燥させます。すべてが昔ながらの手作業で行われるため、ひと窯分の陶土が完成するまでおよそ2カ月。ここまで時間と手間がかかる土づくりは日本では珍しいそう。

見事な等間隔の模様「飛び鉋(がんな)」

小鹿田焼の里 大分

小鹿田焼の伝統的な技法である「飛び鉋(かんな)」を見せていただきました。これはろくろを回転させながら鉋を使って表面を削り、連続的な細かい模様をつけるもの。

ろくろが回転すると同時に、あっという間に模様が刻まれました。寸分狂わぬ間隔と長さに驚くばかり。すべて作り手の感覚が頼りなのだとか。

小鹿田焼は窯元全員で作品づくりを行う「地域ブランド」。ゆえに器には窯元名は入らず、すべて「小鹿田焼」の印が刻まれます。これにより窯元の違いによる価値の騰落を防ぎ、日用品として親しみやすい価格を維持できるそう。

夜通し薪をくべ続ける「登り窯」

小鹿田焼 登り窯

最後にして最大の難関が、登り窯での焼成です。火を入れると約40時間夜通し焚き続けるため、寝ずの番で見守らなくてはなりません。

「薪をくべる最中は熱風で眉毛が焦げることもよくあります。夏場は暑くて火加減の調整がとにかく大変。徹夜するときは座ると寝てしまうのでずっと立っています」と小袋さん。

小鹿田焼の産地として皿山地区が選ばれたのは、この登り窯を作るのに適した斜面があったことが最大の理由だとか。さらに原料となる土、動力となる川、焼成のための木が豊富であったことも大きな背景。まさに天与の条件を生かした地です。

小鹿田焼の里 大分

山里でひっそり作られていた焼き物が脚光を浴びるようになったのは、昭和6(1931)年に民芸運動の指導者、柳宗悦氏の訪問がきっかけでした。後に同氏は『日田の皿山』という紀行文の中で、小鹿田焼を「世界一の民陶」と称賛。さらに英国の著名な陶芸家バーナード・リーチ氏も昭和29(1954)年に訪問し、小鹿田の職人にピッチャーの継ぎ手のデザインを伝授したといいます。

代々脈々と受け継がれた技法は、1995年に国の重要無形文化財に指定、さらに2008年には「小鹿田焼の里」として地区全体が重要文化的景観に指定されました。

一期一会の作品との出合いも楽しめます

小鹿田焼 直売所

小鹿田焼の里では、ほとんどの窯元に直売所が併設されています。作り手によって土の風合いや模様に個性が見られるので、一軒一軒回ってお気に入りを探すのもまた素敵なひととき。中皿は1枚1000円〜と毎日の食卓に取り入れやすい価格帯も魅力です。

小袋窯では事前予約すれば工房の見学も可能。ストーリーを知れば知るほどモノは愛しくなるもの。脈々と続く伝統と歴史を肌で感じてみてはいかがでしょうか?

小鹿田焼 小袋定雄窯
住所:大分県日田市源栄町皿山
電話:0973-29-2400
営業時間:10時〜17時
定休日:無

[Photos by Nao]

Nao

Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。



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