
琵琶湖 (C) Shutterstock.com
140年前に建てられた西洋建築の駅舎
【旧長浜駅舎の歩み(抜粋)】
- 1869年(明治2年):明治政府が鉄道建設を決定
- 1882年(明治15年):長浜~敦賀間の鉄道開通に伴い、旧長浜駅舎が完成
- 1883年(明治16年):長浜~関ヶ原間の鉄道開通
- 1889年(明治22年):長浜~大津間の鉄道開通
- 1889年(明治22年):東海道線新橋~神戸間が全通
琵琶湖の東側のほとりにあるJR長浜駅。その旧長浜駅舎は130年前の姿をそのまま残した、現存する日本最古の鉄道駅舎です。日本の鉄道史に欠かせない貴重なものとして「第1回鉄道記念物」や「県指定有形文化財」にも指定されており、現在は観光施設として整備されています。
旧長浜駅舎は1882年(明治15年)に北陸線の始発駅としてつくられました。当時は明治維新で新しい時代が始まったばかり。街のあちこちに江戸時代の名残りがあるなかで、煙突や窓枠、出入口に赤レンガをあしらい、建物の四隅の角に花崗岩の切石を積んだ洋風の建物は人々の目を引く存在だったことでしょう。
その佇まいはまさに文明開化を象徴するかのよう。時代の大きな転換期において、当時を生きる人々にとっては、新時代の幕開けを実感させる建物だったのかもしれません。
明治政府が行った国づくりの重要拠点地だった!?
幕末から明治維新の波乱の時代を経て、明治政府が立ち上がったのは1868年のこと。このとき、明治政府が抱えていた課題は、産業革命で国力を高めたイギリスをはじめとする列強に追いつくことでした。その計画の中心として据えられたのが鉄道建設だったのです。
明治政府は「東京と神戸、そして琵琶湖と日本海を鉄道で結ぶ」と目標を掲げ、長浜は鉄道事業における重要拠点地でした。新政府発足の翌年には、早くも鉄道建設がスタート。まさに国運をかけた一大事業が始まったのです。
1872年(明治5年)に日本最初の鉄道として新橋~横浜間が開通。旧長浜駅舎はそのわずか10年後の1882年(明治15年)に完成し、長浜~敦賀間が開通しました。翌1883年(明治16年)には、長浜~関ヶ原間が開通し、長浜駅を起点に北陸・東海方面へ鉄道路線が延長されていきました。
明治政府の威信をかけて建設された旧長浜駅舎はイギリス人技師が設計を担当し、鹿鳴館になぞらえた高級感あふれる西洋館風の内装が特徴的です。暖炉や回り階段、彫刻入りの欄干が備えられ、また、一等・二等待合室には八角形の釣ランプや、ビロード張りのクッションの長椅子が置かれました。
当時は西洋風の建物や、駅そのものが珍しかった時代です。西洋の香りを感じさせる駅舎は人々にとって特別な場所であり、鉄道を利用することに大きな憧れを抱いたに違いありません。長浜の街は鉄道開通とともに賑わい、宿や運送店、飲食店などのお店も急増。人や物が行き交う流通の拠点地として、駅を中心に大きな発展を遂げました。
ノスタルジックな空気に包まれた観光スポットに

(C)長浜・米原を楽しむ観光情報サイト
旧長浜駅舎はJR長浜駅から徒歩約3分の場所にあります。長浜鉄道文化館、北陸線電化記念館とともに観光施設「長浜鉄道スクエア」として整備され、今も当時の姿のまま大切に保存されています。
140年の歴史を物語る駅舎はレトロで懐かしい空気でいっぱい。待合室や駅長室には当時の様子がわかる展示品などが置かれており、見て触れて楽しめる体験型施設として一般公開されています。ノスタルジックな雰囲気に包まれ、まるで映画やドラマの舞台に入り込んだような気分が味わえますよ。
隣接する「長浜鉄道文化館」には長浜の歴史を伝える鉄道資料や鉄道模型車両が展示されており、まさに鉄道ファンにとってはたまらない空間です。また、「北陸線電化記念館」には、かつて旧長浜駅舎を利用した蒸気機関車の「デゴイチ」や、クラシックな電気機関車も置かれ、運転席に座って写真撮影を楽しむこともできますよ。

(C)長浜・米原を楽しむ観光情報サイト
道路を挟んだ向かい側には、明治天皇皇后両陛下が長浜鉄道を利用する際に滞留した迎賓館「慶雲館」もあり、見事な日本庭園を鑑賞できます。明治維新から始まる日本の鉄道の歴史に思いを馳せながら、ぜひ長浜の街歩きを楽しんでみてくださいね。
[参考]
長浜鉄道スクエア
公益財団法人滋賀県文化財保護協会

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内野 チエ ライター
Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。
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