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1638年に徳川幕府によって開設
【小石川植物園の歩み(抜粋)】
- 1638年(寛永15年):徳川幕府が薬園を開設
- 1684年(貞享元年):薬園を小石川御殿内の北側に移転、「小石川御薬園」に
- 1722年(享保 7年):小石川薬園内に養生所を開設
- 1735年(享保20年):青木昆陽が小石川薬園内でサツマイモを試作
- 1877年(明治10年):東京大学設立に伴い、法理文三学部附属植物園と改称
- 1896年(明治29年):平瀬作五郎によるイチョウの精子発見 池野成一郎によるソテツの精子発見
- 1945年(昭和20年):戦災で温室、黒門、集会所、教室跡建物を完全焼失
- 1952年(昭和27年):温室を木造で復旧
- 2012年(平成24年):文化財保護法の規定により名勝及び史跡に指定される
東京都文京区にある「小石川植物園」は、日本最古の植物園。正式名称は「東京大学大学院理学系研究科附属植物園」といい、現在、東京大学の実習施設として植物学の研究を行う学生の学びの場となっています。
東アジアの植物研究の世界的センターとしても機能しており、約190万点の植物標本や植物学関連図書約2万冊を収蔵。多くの植物研究者に活用され、日本の植物多様性研究の重要な拠点ともなっています。
小石川植物園の始まりは江戸時代にまでさかのぼります。その前身は、1684年に江戸幕府が開設した「小石川御薬園」にあたり、日本原産の薬草をはじめ、中国や韓国、西洋から持ち込まれたさまざまな薬草や植物の栽培が試みられた幕府直轄の薬草研究施設でした。
江戸時代、薬草・植物栽培で庶民を飢えや病から救う
江戸幕府が開設した「小石川御薬園」では、当時、114種もの薬用植物が栽培され、1722年には園内に養生所がつくられました。この養生所こそ、映画やドラマで有名な「赤ひげ先生」で知られる「小石川養生所」です。
養生所は第8代将軍・徳川吉宗が町医者の小川笙船(赤ひげ先生)の訴えにより、貧民救済の医療施設として開設。薬が高価で、ケガや病気になっても庶民が満足に治療も受けられなかった時代に、無料で診察し、植物園で育てた薬草を用いて治療を行ったそうです。
吉宗が治める世では1732~33年の「享保の大飢饉」の悲劇がありました。食物を安定して栽培・収穫することが難しく、飢えにより多くの人々が亡くなったことにより、吉宗は栄養価が高いサツマイモに着目。1735年、蘭学者の青木昆陽に命じて小石川薬園内でサツマイモの試作栽培を行わせました。この昆陽のサツマイモ栽培の研究と成功により、その後の飢饉を乗り越えることができたという記録も残されています。
1877年(明治10年)に東京大学が設立されると、その附属植物園となった小石川植物園。1896年(明治29年)には、平瀬作五郎がイチョウの精子を発見。また、池野成一郎がソテツの精子を発見し、海外でも日本の植物研究の成果が高く評価されました。
その後、第二次世界大戦の戦火に見舞われ、温室や黒門、集会所、教室跡建物などを焼失するものの、復旧、改修を重ね、2012年(平成24年)にはその歴史的価値が評価され、国指定名勝及び史跡に指定されることとなりました。
桜・椿・梅・紅葉も!散策で楽しみたい見どころ
小石川植物園の広さは16万1,588平方メートル(4万8,880坪)。広大な敷地には台地や傾斜地、低地、泉水地などの地形を利用してさまざまな植物が植えられており、一般の人も入場が可能です。
園内には樹齢約130年と推定される日本最古級のソメイヨシノをはじめとする各種サクラ、約80品種もの花が咲くツバキ園や、約70品種140株を植栽する梅林、イロハモミジの並木、徳川綱吉ゆかりの日本庭園などがあり、四季折々の花や紅葉が訪れる人を楽しませてくれます。
このほか、江戸幕府の御薬園を記念してつくられた「薬園保存園」や、青木昆陽がサツマイモの栽培を試みた試作跡、平瀬作五郎が精子を発見したイチョウの木、「万有引力の法則」を発見したニュートン生家から接ぎ木によって植えられたリンゴの木など、小石川植物園ならではの見どころがたくさんあります。
都営地下鉄・白山駅から徒歩約10分とアクセスも良好。植物研究で日本の歴史を支えたさまざまな人物に思いをはせながら、じっくり時間をかけて散策してみてはいかがでしょう。
参考:東京都教育委員会
東京都産業労働局

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内野 チエ ライター
Webコンテンツ制作会社を経て、フリーに。20歳で第1子を出産後、母・妻・会社員・学生の4役をこなしながら大学を卒業、子どもが好きすぎて保育士と幼稚園教諭の資格を取得、など、いろいろ同時進行するのが得意。教育、子育て、ライフスタイル、ビジネス、旅行など、ジャンルを問わず執筆中。特技はワラビ料理と燻製作り。
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