【ニューヨーク旅学事典14】世界屈指の芸術の殿堂「リンカーン・センター」

2014年5月20日　リンカーン・センター

2014年5月20日　リンカーン・センターにてバレエを舞うダンサー

リンカーン・センターとは

2014年5月20日　リンカーン・センター全景

（C）lincoln center.org

「リンカーン・センター（Lincoln Center for the Performing Arts）」は、世界最大の音楽・演劇・ダンスを集結した総合芸術施設。主な施設は下記の通り。

●「メトロポリタン・オペラ・ハウス（Metropolitan Opera House）」
メトロポリタン・オペラ（Metropolitan Opera）とアメリカンバレエシアター（全米一のバレエ団　American Ballet Theatre）の本拠地。3,800席

●「デビッド・ゲフィン・ホール（David Geffen Hall　旧エイヴリー・フィッシャー・ホール）」
ニューヨーク・フィル（New York Philharmonic）の本拠地。2,738席

●「デビッド・H・コッチ・シアター（David H. Koch Theater）」
ニューヨーク・シティ・バレエ（NYCB）の本拠地。2,544席

●「アリス・タリー・ホール（Alice Tully Hall）」
室内楽協会（The Chamber Music Society of Lincoln Center）の本拠地であり、ジュリアード音楽院内にある。1,086席

●「ジュリアード音楽院（The Juilliard School）」
クラシック音楽で有名なアメリカの名門音楽院。日本人ではピアニストの故中村紘子氏、ヴァイオリニスト五嶋みどり氏及び諏訪内晶子氏を輩出。

●「ヴィヴィアン・ボーモント・シアター（Vivian Beaumont Theater）」
主にミュージカルを上演する臨場感がある劇場。2015年日本人俳優渡辺謙が「王様と私」の主演舞台を務め、トニー賞にノミネートされた。1,080席

2014年11月10日　ジュリアード音楽院

リンカーン・センターはどこにある

2003年3月2日　リンカーン・センター夜景

「リンカーン・センター」は、セントラルパークの西側ブロードウェイの62〜65丁目にあります。

2014年6月　デビッド・H・コッチ・シアター前でポーズを取るバレエダンサー

リンカーン・センターの歴史

2006年11月29日　ホリデーシーズンのリンカーン・センター

リンカーン・センターの施設は、ほとんど個人名（ジュリアード、ビビアン・ボーモント、アリス・タリー、エイヴリー・フィッシャー、デビッド・ゲフィンなど）が冠してありますが、多額の寄付をした人の名前です。寄付金額は莫大で、米富豪の芸術に対する思い入れを感じますね。それぞれの建築はそうそうたる有名建築家が手がけており、芸術の殿堂にふさわしい豪華さです。

リンカーン・センターのトリビア

2004年11月9日　ニューヨーク・シティ・バレエ公演「シンデレラ」

リンカーン・センターの噴水が有名

2014年6月21日　リンカーン・センター　噴水

ニューヨーカーがリンカーン・センターで思い浮かべるイメージは中央にある「噴水」です。映画やドラマにもよく登場しましたので、あなたもご存知かもしれませんね。

2014年6月21日　リンカーン・センター　噴水前で卒業パーティ（プロム）の記念撮影

2007年4月3日　リンカーン・センター　噴水前で寛ぐ

待ち合わせ場所にもわかりやすく、街歩きに疲れたら休憩するのにも良いものです。夏の昼間は涼しく、夜間はライトアップでロマンティック。音楽に合わせて吹き上がるのも楽しく、見ていて飽きません。

ニューヨークの社交会場である

2004年11月9日　ニューヨークシティバレエ「シンデレラ」

芸術の殿堂であるリンカーン・センターは、アメリカの富豪（の寄付）が支えています。バレエやオペラ、クラシック音楽は、スポンサーがいるからこそ上演できると言えます。

2006年11月29日　リンカーン・センター前に止まるストレッチ・リモ

2014年5月12日　ABT ガラ公演

アメリカン・バレエ・シアターのガラ公演。ロングドレスやタキシードで盛装したゲストを見かけます。

2014年5月12日　ABT ガラ公演を鑑賞しに来た若いバレリーナ

ニューヨーク・ファッション・ウィーク（ファッションショー）が行われていた

2012年9月8日　ニューヨーク・ファッション・ウィーク

2022年現在の会場は異なりますが、以前ニューヨーク・ファッション・ウィークはリンカーン・センターで行われていました（その前はブライアント・パーク）。有名建築家の建物は背景によく写り、美しいモデルやとびきりお洒落した来場者にテンションが高まったものです。

2012年9月7日　ニューヨーク・ファッション・ウィーク　ファッションモデル

2012年9月7日　ニューヨーク・ファッション・ウィーク　ファッション・エディター

日本の歌舞伎が上演された

2004年7月15日　平成中村座の歌舞伎公演『夏祭浪花鑑（なつまつりなにわかがみ）』

2004年7月15日　平成中村座の歌舞伎公演『夏祭浪花鑑（なつまつりなにわかがみ）』十八代目 中村勘三郎（故人　当時 中村勘九郎）氏

2004年7月15日　平成中村座の歌舞伎公演『夏祭浪花鑑（なつまつりなにわかがみ）』写真右　十八代目 中村勘三郎（故人　当時 中村勘九郎）氏

2004年7月15日　平成中村座の歌舞伎公演　メディアに対応する　写真左　十八代目 中村勘三郎（故人　当時 中村勘九郎）氏、　写真右　演出家　串田和美氏

2004年7月　十八代目 中村勘三郎（故人 当時 中村勘九郎）主演による平成中村座の歌舞伎公演『夏祭浪花鑑（なつまつりなにわかがみ）』を上演。日本から船で資材が運ばれ、江戸時代の芝居小屋をNYリンカーン・センターで忠実に再現。辛口批評のニューヨークタイムズにも絶賛されました。

平成中村座物語#1 1959 to 2004 -The History of Heisei Nakamura-za#1 1959 to 2004-　平成中村座チャンネル / Heisei Nakamura-za Channel

建設以前は『ウエストサイド・ストーリー』の舞台だった

オペラやバレエなど華やかな社交界の舞台となったリンカーン・センターの建設以前は、通称「サンファンヒル」と呼ばれるアフリカ系やヒスパニック系が住む低所得住宅地でした。1950年代後半、大規模なスラム撤去プロジェクトの一環として、7,000を超える低所得層の家族と800の中小企業を追放。以前の居住者は4,400世帯の新しく建てられた住宅には入居させてもらえず、ハーレムやブロンクスなどの低所得地域に追いやられ、別の場所に新しいスラムが拡がりました。

映画・ミュージカルの『ウエストサイド・ストーリー』では、アメリカに新天地を求めてやってきたプエルトリコ系のマリアやアニータの住居地として登場。映画の「アメリカ」のシーンでは、住民が「リンカーン・センター建設反対」のプラカードを持つシーンも見受けます。夢のアメリカは、富豪が貧しい移民を排斥する国でもあったのです。

West Side Story – Cast 2021 – America (From “West Side Story”)　DisneyMusicVEVO

リンカーン・センター　21年前へタイムスリップ

2001年12月4日　ホリデーシーズンのリンカーン・センター

2002年12月11日　ホリデーシーズンのリンカーン・センター

2002年12月11日　ホリデーシーズンのリンカーン・センター　楽器のオーナメントのクリスマス・ツリー

20年前のホリデーシーズンのリンカーン・センター。リンカーン・センターの噴水がある中央広場には、たくさんの楽器のオーナメント（ツリーの飾り）を付けた堂々としたツリーが登場。年末のリンカーン・センターを華やかに彩りました。クリスマス・ツリーのオーナメントは、食器のウェッジウッド製だったこともあり、さすがひとあじ違うものだと思っていましたが、いつしかツリーは中央広場から消えてしまいました。近年はリンカーン・センター入口手前の小さな公園ダンテ・パーク（Dante Park）に、クリスマス・ツリーが立っています。

ニューヨーク市の景色は進化し続けています。次回のニューヨーク旅学事典は「コニーアイランド」を予定。続けて読んでいただくとうれしいです。

[All Photos by Hideyuki Tatebayashi ]　Do not use images without permission.

参照
リンカーンセンター（Lincoln Center）　公式サイト
How Lincoln Center Was Built (It Wasn’t Pretty)　The New York Times Dec. 21, 2017
Before They Were Parks”Damrosch Park and Lincoln Center, Manhattan”　The City of New York

PROFILE

青山 沙羅

sara-aoyama ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。

はじめて訪れた瞬間から、NYに一目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、ついには上陸。旅の重要ポイントは、その土地の安くて美味しいものを食すこと。特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、『やられたら、やり返せ』。プロ・フォトグラファーの夫とNY在住。