
約1300年の歴史ある温泉街「山代温泉」

石川県南西部にある山代・山中・片山の3名湯からなる「加賀温泉郷」。加賀百万石の歴史に育まれた情緒と、四季折々の自然豊かな土地は、与謝野晶子など数々の文人墨客を魅了してきました。
今回ご紹介するのは、加賀の伝統を色濃く残す「山代温泉」。風情ある街並みはそぞろ歩きも楽しく、女子旅にはもってこいの旅先です。筆者が出合った山代温泉のとっておきをお伝えしましょう。
「べんがらや」でご当地パフェに舌鼓

紅殻格子と白い暖簾が小粋なカフェ&ビストロ「べんがらや」。街のメインストリートとなる温泉通りのほぼ真ん中にあるので、散策途中のひと休みにもぴったりです。地元作家による工芸品を展示するギャラリーも併設。
加賀温泉郷では地域おこしの一環としてご当地スイーツ「加賀パフェ」を展開していて、現在6店舗で提供中。山代温泉で味わえるのがこのお店です。ちなみに「加賀パフェ」には厳格な(笑)ルールが定められており、パフェの下から順にゼリー、はちみつ生クリーム、野菜スポンジケーキ、ポン菓子、ブロッコリーorかぼちゃアイス、トッピングには加賀野菜が鉄則とのこと。果たして、どんなものがいただけるんでしょう?

トップにはレタスが君臨し、唯一無二のインパクトを放つ加賀パフェ。ちなみにお茶は献上加賀棒茶を急須入り、受け皿やソースカップは九谷焼、さらにはお盆は山中漆器という掟もあり、地産地消が徹底されています。価格は全店で970円(税込)で統一しているという連帯感もいいですね。

コーヒーゼリーや抹茶クリーム、シフォンケーキほかおなじみスイーツ素材に続くのは、ブロッコリーアイス、シロップ漬けプチトマト、車麩のコーンフレーク揚げ、紅芯大根、海苔チーズ焼きなど。パフェとしては斬新なアイテムばかり! 食べ進めるごとにさまざまな食感が味わえ、甘味と塩味のコントラストも楽しく、新鮮な驚きに満ちたパフェでした。
このほか、加賀産の茶葉を使用した香り豊かな「加賀の紅茶」(550円)や、加賀の気候に合わせて特別焙煎した「加賀サイフォンコーヒー」(550円)をはじめ、地元ならではのメニューも充実。ギャラリーでは商品の購入も可能なのでお土産探しにもぜひ。
「しもつね」の素朴な和菓子で心安らぐ

同じく温泉通りでおすすめなのが、べんがらやの真向かいにある和菓子店「しもつね」。創業は明治33年(1900年)。かつて山代温泉に馬車鉄道が走っていた頃、その乗客にお酒や饅頭を提供したのがはじまりという老舗です。

ショーケースには山代温泉のシンボル、カラスにちなんだ「烏のゆかり」(120円)や、6月に行なわれるお祭りをイメージした「菖蒲のゆかり」(120円)ほか、素朴で懐かしい和菓子がずらりと並びます。添加物や保存料は一切不使用で、賞味期限は当日限り。味わえるのは山代温泉に旅した人だけの特権とも言えるでしょう。

看板商品は「おはぎ」と「豆大福」(各120円)。国産素材を昔ながらの配合で作る和菓子はやさしい甘味。餡子はしっとり滑らかで、すっと儚く口の中で溶けていきます。シンプルながら老舗の実力を感じられる逸品です。

注目したいのが商品袋。温かみのあるゴム印は4代目の下達也さんのお手製。なんでもコロナ禍でお客さんが激減し、時間を持て余してしまった時期に製作したそう。ほのぼのしたデザインは親しみやすく、店主のクリエイティビティが光ります。
「古総湯」でノスタルジックな湯浴みを体験する

約1300年の歴史を持つ山代温泉。江戸時代には「総湯」と呼ばれる共同浴場を中心として街が形成されていました。そんな、いにしえの温泉文化を今に伝えるのがここ「古総湯」です。
明治時代の総湯を再現した温泉施設で2010年にオープン。こけら葺きの屋根や2階の窓など、当時のモノクロ写真に基づき可能な限り復元したそう。

内装も外観同様に、在りし日の雰囲気を踏襲。当時、最先端だったステンドグラスや九谷焼タイルが施されていて、なんともノスタルジック。湯船の水面に映る鮮やかな色彩の光はアートのようです。
見た目だけでなく、伝統の入浴方法を味わえるのも「古総湯」の特徴。浴室にはカランやシャワーはなく、かけ湯をして湯船に浸かるというスタイル。石鹸やシャンプーも使用禁止です。お風呂上りにゆったり寛げる、風通しの良い畳敷きの休憩所も併設。温泉宿に泊まっていても、一度は足を運びたいとっておきの名湯です。
「葉渡莉」で土地の美味と極上温泉に癒される

筆者が宿泊したのは、温泉通りにある旅館「葉渡莉」。紅殻格子の外観は優美な趣にあふれます。館内の随所に華やかな生花が配されていて、安らげる工夫が満載でした。さまざまな趣向が凝らされた客室は、露天風呂付きや純和室、シングル和洋室などさまざまタイプを用意。ファミリーやカップル旅はもちろん、ワーケーションとしての利用もいいかもしれません。

大浴場は2つ。「九萬坊の湯」は檜の香りが心地いい内風呂に加え、露天風呂も。訪れた1月は雪がしんしんと降っていて、格別の雪見風呂でした。もう一つの「お薬師の湯」は石造りでジャグジー付き。多彩な湯浴みを楽しめるのもうれしいところ。

お楽しみの夕食は山海の幸や近隣の野菜をふんだんに使った会席料理を提供。加賀の旬を伝えるお料理はどれも滋味深いおいしさで、洗練された見た目に心も踊ります。筆者が特に気に入ったのが、糀出汁で能登豚をくぐらせていただくしゃぶしゃぶ。さっぱりしながら深みある味わいで、お酒もご飯も進みました。
華やかなご当地パフェに、ほっこり素朴な和菓子、伝統に浸る湯浴み体験……。今度の北陸は、加賀の名湯で悠久のときを感じてみてはいかがでしょう?

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Nao ライター
メーカー、ITベンチャー勤務を経てフリーランスに。
学生時代から旅を続け、渡航国は現在50カ国。
特技は陸路国境越え。グルメレポート翌日に大学の最先端研究を取材したり、ロシア州知事にインタビューしたり。幅広い対応力とフットワークの軽さが自慢。日本ソムリエ協会認定資格ワインエキスパート保有。
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