御坊駅を出発したキハ600形 (2008年4月6日撮影) image in Wikipedia
地元の有志が立ち上げた「和歌山の鉄道会社」
何をもって日本一短いと言うのか、この日本一短い鉄道のランキングは解釈によって変わってくるようです。そこで今回は「単独路線として日本一短い鉄道」と定義して、和歌山県を走る鉄道に注目してみましょう。
和歌山県の日高川の様子。日高川の河口は御坊の日高港にある (C) Shutterstock.com
和歌山の県庁所在地は、大阪から県境を越えてすぐの和歌山市にあります。その和歌山市から紀伊水道に面した入り組んだ海岸線を南下すると、「御坊」という街に着きます。和歌山市から見れば、リゾート地として有名な白浜よりもかなり手前です。
その御坊にはJR紀勢本線も走っています。しかし、JR御坊駅は街の中心部から遠く、河口にある日高港や市役所などもそこそこ離れています。
そこで、地元の有志が資金を出し合い、JR紀勢本線(当時は国鉄紀勢西線)の御坊駅(当時は国鉄御坊駅)がつくられるタイミングに合わせて、街の中心部や河口の港まで短い鉄道を敷き、鉄道会社を設立しました。
その鉄道会社が、「日本で最も短い」と言われる紀州鉄道の前身である「御坊臨港鉄道」でした。1931年(昭和6年)に紀州鉄道となります。
営業距離はたったの「2.7km」
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当初、貨物と旅客を輸送していた紀州鉄道の営業距離は3.4kmだったようです。昭和30年代には貨物量・旅客数ともにピークを迎えます。
その後は、時代の変化とともに乗客が減り、1984年(昭和59年)に貨物輸送が廃止、1989年(平成元年)に営業距離が2.7kmとなります。
現在は1両編成、ダイヤも1時間に1~2本といった感じですが、地元の人たちの郷土の誇りとなっています。母体となる紀州鉄道(本店は東京)も、ホテル事業や会員制リゾートクラブの運営・管理などを収入源として、鉄道事業は今後も継続していく意向があると一部で報道されています。
まさに、この紀州鉄道こそが「日本で一番短い」鉄道とされているのですね。
全国の鉄道ファンに愛されている
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紀州鉄道の駅は、始発から終点までで5駅しかありません。運行時の時速は平均20km。沿線上にある「学門駅」は、駅名の書かれた入場券が縁起がいいとして受験生に人気だといいます。
車両はレトロで、民家の軒先ぎりぎりを通過する光景は、地元の人たちのみならず全国の鉄道ファンにも愛されているようです。
関西旅行、中でも和歌山へ足を延ばす機会があれば、この日本一短い鉄道にも乗ってみたいですね。
[参考]
※ 日本一短いには訳がある 和歌山・紀州鉄道 昭和に誘う8分間 – 産経新聞
※ 日本一短い?ローカル私鉄「紀州鉄道」 わずか8分・180円のノスタルジックなミニ鉄道旅
※ 紀州鉄道株式会社