【実はこれが日本一】「もっとも遅い列車」の速度はママチャリと同じくらい!?

Posted by: 坂本正敬

掲載日: Jul 26th, 2022

意外な日本一を紹介するTABIZINEの連載。今回は、「日本一遅い列車」を紹介します。

福岡県北九州市門司港
(C) TETSU Snowdrop / Shutterstock.com

 

ママチャリと同じくらいの速さで走る列車

福岡県北九州市門司港駅
(C) LnP images / Shutterstock.com

鉄道車両というと、新幹線やリニアモーターカーなど、速さにどうしても目が向かってしまいがち。しかし逆に、「日本でもっとも遅い列車」と言われたら、どこを走っているかご存じですか?

その最高速度は時速15km、運転距離を発駅から着駅までの所要時間(停車時間を含む)で割った表定速度は時速12kmとされています。

いわゆる「ママチャリ」の速度は時速4~20kmで、平均時速15kmとも言われていますから、言ってしまえばママチャリと同じくらいの速さで走る列車が日本のどこかにあるのですね。ヒントは、このところ「観光列車王国」の印象が強い九州が舞台です。

答えは、2009年(平成21年)、福岡県北九州市の門司港の海岸近くに開業した「門司港レトロ観光列車北九州銀行レトロライン潮風号」ですね。

営業キロ数が2.1km、沿線の駅数は4つの小規模な観光列車

北九州銀行レトロライン潮風号
(C) 北九州市情報発信強化委員会

列車の名前に銀行名が見えるので、銀行が経営している鉄道と思うかもしれません。しかし、実際は違って、山口フィナンシャルグループの傘下である北九州銀行がネーミングライツ(命名権)を買っているため、この名前になっています。

もともとは、「門司港レトロ観光線」でした。平成筑豊鉄道株式会社(福岡県福智町)が運行事業者、施設保有者が北九州市です。廃止された貨物線を再利用するために始まった観光路線づくりで、機関車も客車も他社から譲り受けた廃車を使用しています。

週末を中心とした運行スケジュールで、営業キロ数も2.1kmと短く、沿線の駅数は4つ、この小規模な観光列車を経営するための工夫として、中古車が活用され、命名権が販売されたのですね。

さらには、JR九州の路線と線路を切断して、JR九州の列車の乗り入れを不可にし、JRと同じ安全基準を保たなくても済む(簡単な保安設備でオッケー)ようにしてコストを削減していると、著名な鉄道ライターが「文春オンライン」に書いています。

遊園地のアトラクションに乗っている感覚?


北九州銀行レトロライン潮風号の沿線(開業前)。奥にはトンネルが見える image by Twilight2640(Wikipediaより引用)

この列車、残念ながら筆者には乗車経験がありませんが、北九州の知人に会いに行った際、沿道から眺めた経験はあります。思わず車両を見て手を振りましたし、こちらが手を振ったので乗客も手を振り返してくれました。

笑顔で反応してくれる姿を見る限り、乗車体験が、遊園地のアトラクションに乗っている感覚に近いのかもしれません。

乗客と沿道にいる人たちが自由に手を振り合う感じは、ちょっと大げさに言えば、インド北部にある紅茶の産地ダージリンを目指して運行する世界遺産の「ダージリン・ヒマラヤ鉄道」の雰囲気にも似ているなと思いました。

北九州銀行レトロライン潮風号の運行は、基本的に土日のみですが、連休や長期休暇中は毎日運航しています。2022年7月時点では、8月からはほぼ毎日運行するようです。

途中でトンネルを通過するなど体験にもメリハリがありますので、この夏の旅行で北九州を訪れる際には、日本一遅い列車に乗車してみてはいかがですか?

[参考]
線路施設・運転の概要(平成31年3月末現在) – 国土交通省

運行日・時刻表 – 平成筑豊鉄道

報道発表資料:門司港レトロ観光列車「潮風号」開業予定日の決定について – 門司港レトロ倶楽部

貨物線再利用 門司港レトロ観光線の意外なコスト削減は「レール切断」にあった – 文春オンライン

「列車」と「電車」の線引きは一体どこにあるのか? – DAIAMOND online

自転車通勤でどれくらいの時間がかかる!?自転車の種類と平均時速から通勤にかかる時間を計算 – SHIMANO

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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