第5回はちょっと変化球。今までは旅先で自らがもてなされたときに気をつけたいマナーを紹介してきましたが、今回は逆に自宅などで遠くから来た旅人(ゲスト)をもてなす際の作法を紹介したいと思います。
意外に盲点と思われる場所をクイズ形式でまとめますので、ぜひともチェックしてみてください。民泊などで外国人を泊める予定の人も知っておきたいですね。タイトルのクイズの答えは、3番目に紹介されていますよ。
1:お茶やコーヒー、お菓子を運んできたお盆は床に置く? テーブルに置く?
最初はお盆について。ゲストの居る場所までお茶やコーヒー、お菓子をそのまま持っていくわけにはいきません。お盆に乗せて運ぶかと思いますが、部屋まで行ったらお盆はどこに置きますか?
まずは和室の場合。答えは畳の上なのだとか。一方で洋室の場合は、サイドテーブルなどゲストの居るテーブル以外の別の台にお盆を置き、お菓子、お茶を出すと美しく見えるみたいですよ。
ちなみに上述の写真、お菓子の出し方としては間違っています。どこが間違っているか、指摘できますか?
この点については後で紹介します。少し考えてみてくださいね。
2:お茶やコーヒー、お菓子はゲストの右から出す? 左から出す?
お盆に乗せたお菓子とお茶、コーヒーを、いざゲストに出そうとします。その場合は、ゲストの右側から出すべきなのか、左側から出すべきなのか、どちらだと思いますか? 正解は右。
もちろん席の位置や建物の構造上、右側から出せない場合は、左側から出しても構わないそうです。ただ左側から出す場合は注意点があるそう。次の問題で触れますので、併せてチェックしてみてください。
3:お茶とお菓子、どちらを先に出す?
お盆に乗せて運んだお菓子とお茶、どちらを先に出せばいいのでしょうか? お盆を畳やサイドテーブルに置いたら、さあ、どうしましょう。
基本的に正解はゲストの右側からお菓子を先に奥(ゲストから見て左)に置き、次はお茶を手前(ゲストから見て右)に置くといいと言います。写真はお茶とお菓子の位置が逆なので、マナー違反となります。
どうしてもゲストの左側から出さざるを得ない場合は、先にお茶を奥(ゲストから見て右)に出し、次にお菓子を手前(ゲストから見て左)に置くといいみたいですね。
その理由として椎屋さんによれば「日本では器の上を、または食べ物の上をまたぐようなしぐさは無作法となり嫌われる」からなのだとか。納得ですよね。
また、和フォークは菓子皿の上に、先端を左向きに乗せるといったルールもありますので、その意味でも写真はNG。
ちなみに菓子皿の上には、和菓子は1個です。記事の1枚目の写真がNGな理由は、菓子皿に和菓子が2個並んでいるからですね。
4:お代わりは言われるまで待つ? 自分から動く?
最後はお代わりについて。ゲストから言われるまで待つべきなのでしょうか? それとも自分からころ合いを見計らって動くべきなのでしょうか?
正解は自分から動くです。具体的には最初にお茶やコーヒーを出して30分ほど過ぎたら、器の中に飲み物が残っていても、茶たく(ソーサー)ごと下げて、お代わりを用意するといいそう。
あるいは柔軟に、「お客さまが一煎目を堪能されて、和菓子を食べ始められたら、タイミングをみて、二煎目のお茶を入れる」といった心遣いがおもてなし側にあってもいいみたいです。その際に好みの飲み物を聞いて、取り替えてあげられると親切ですね。
余談として逆に自分がゲストとしてどこかに訪問しているとき、3杯目のお代わりを勧められたら、そろそろ帰るべきだと言います。
「3回目の入れ替えを勧められようとしたときは、お客様の方が『そろそろおいとま(帰る)』するころ合いだと察する必要があります。これが訪問先に対する気遣いとなります」とのこと。併せて覚えておきたいですね。
以上、お茶とお菓子でゲストをおもてなしする際の基本的なマナーをクイズ形式で紹介しましたが、いかがでしたか?
その他の情報として、湯飲み茶わんに描かれたメインの絵柄は、ゲストから見て手前に向け、正対させるなどの配慮も必要だとか。茶わんの内側に絵柄が描かれていたら、そのメインとなるモチーフを、ゲストから見て奥側(向こう側)に置き、絵柄とゲストが正対できるように置くなどのマナーもあるそうです。知るほどに興味が出てくる、奥深い世界ですね。
[取材協力:椎屋美根子。クールジャパン講師会・会長。海外でのVIP接遇を経て、プロトコール(国際儀礼)を身につける。2011年、人材育成事業「Office Heartful Manner」を起業し、国内外において講習、研修などを行う。主な著書『クールジャパン一般常識』(クールジャパン講師会)など]
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