観光地にとって、訪れる観光客が増えるのは嬉しいこと・・・のはず。けれどスイスのとある小さな町では、ある瞬間から急激に増えてしまった観光客に地元住民が戸惑いを隠せずにいます。いったい何が起こったのでしょうか。
スイスの小さな町ラヴェルテッツォ
事件の舞台となるのは、スイス南部のティチーノ州ラヴェルテッツォ(Lavertezzo)。欧州大陸の中央付近に位置するスイスはドイツ語(スイスドイツ語)、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4か国を公用語にしていますが、このティチーノ州はイタリア語を公用語とする唯一の州になります。
ティチーノ州ラヴェルテッツォにあるヴェルツァスカ渓谷(Valle Verzasca)は、そこにあるダムが「007 ゴールデンアイ」(1995年)のロケに使われたことでも有名ですが、基本的には静かで小さな町。
けれどある日を境に、こののどかな場所に膨大な数の観光客が押し寄せることになるのです。一体何が起こったのでしょうか。
フェイスブックの動画から観光客が殺到!
発端は、イタリアの映像作家Marco Capedriさんが友人たちとラヴェルテッツォ村を旅したこと。彼らが美しいヴェルツァスカ渓谷の川で泳ぐ動画をご自身のフェイスブックに投稿したことがそもそもの始まりです。
透明度の高い美しい渓谷を「まるでモルディブみたい!」「(イタリアの)ミラノから1時間でこんな素敵な場所があるなんて!」と感激する様子を映した動画は、ソーシャルネットワーク上で瞬く間に拡散。7月10日の動画公開から、9月1日現在までに既に300万回再生を記録しています。
この動画公開直後から、町には主にイタリアからの観光客が殺到するようになります! 観光客の増加は本来嬉しいことですが、何しろ突然の出来事だったので住民はその変化に戸惑いが隠せないようです。
こちらのイタリア・メディアのページに掲載されている動画から、渓谷に殺到する観光客の様子を見ることができます。Marco Capedriさんの動画では貸し切り状態だった渓谷も、押し寄せる観光客でイモ洗い状態の混雑ぶり。
車や観光バスが増えることによる混乱もさることながら、地元住民が一番困っているのが観光客のマナーの悪さなのだとか。水着姿のまま渓谷から町中に戻ってきたり、渓谷を公衆トイレのようにしてしまったり・・・。そしてお菓子の空き袋、空き缶、たばこの吸い殻などが渓谷にポイ捨てされることも住民の頭を悩ませているのだとか。それは確かに悲しいことですね。
このラヴェルテッツォ町の町長はメディア・インタビューの際、町の知名度が上がったことを認めつつも、「Marco Capedriさんが、観光客に対して駐車ルールを守ったり、地元への敬意を払うように呼び掛けて欲しい」と語っていました。
日本にも「旅の恥はかき捨て」という言葉があるように、旅先ではついつい普段とは違う行動をとってしまいがちです。けれど、その土地に住む人にとってそこは大事な故郷。観光の際にはマナーをしっかり守って、お互い気持ちよく過ごせるように気を付けたいですね。
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