金鉱閉鎖後はさびれてしまったスイスのゴンド村
スイスのヴァレー州(Valais)は、南部のイタリアと国境を接する場所。マッターホルンなど数々の名峰を有し、雄大な絶景が魅力です。マッターホルンのふもとのツェルマットにはスイス内外から多くの観光客がやってくるのですが、今回のストーリーの舞台となるのは、そういった観光業とは無縁のゴンド村(Gondo)。
ゴンド村は、かつて金鉱採掘で栄えた産業の街でした。けれどその鉱山も1891年にすでに閉鎖され、衰退の道をたどっていたのです。近年は、イタリアとスイスを往復する大型トラックの給油地点としてしか人々に認識されていなかったのだとか。
それにダメ押しをしたのが、2000年に発生した大規模な地滑り。複数の家屋が巻き込まれ、13人が死亡したのだそう。建物の被害は修復されましたが、一部の住民はそれを機に村を離れ、人口は40人にまで落ち込んでしまっていました。
けれどある日、そのゴンド村に意外なオファーがもたらされたのです。
過疎地でのブロックチェーン・スタートアップ
アルパイン・マイニング社(Alpine Mining)というベンチャー企業が、「ゴンド村でブロックチェーンの会社を設立したい」と打診してきたのです。
その時、村長をはじめとする地元の人々は仮想通貨(暗号通貨)やブロックチェーン(仮想通貨の保存と取引に関する暗号化されたデジタルシステム)に関する予備知識が全くなく、インターネットで検索して初めてその存在を知ったそう。
アルパイン・マイニング社としては、ゴンド村が「水力発電所に近く電気代が安かったこと」、「標高が高く寒冷な気候なので、機材の冷却に都合がよいこと」が魅力的だったそうです。
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村にもアルパイン・マイニング社にも利点の多いこのオファーを、ゴンド村は快諾。2017年11月から、アルパイン・マイニング社は当地での操業をスタートしました。
6名の若者が移住し人口増加
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ゴンド村での操業に伴い、アルパイン・マイニング社のメンバー6名が移住をし、村の人口増加と税収に貢献しています。村人が「簡単なことじゃない」と言う、雪に閉ざされる冬も無事に越し、同社の定住は順調にいっているようです。これでひとまずは、お互いに安心でしょうか?
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ただ、マイニングは24時間稼働。ゴンド村の電力の3分の1をこのアルパイン・マイニング社が使用してしまっているとのことなので、事業拡大のためには、また別の水力発電所などと協議のうえで新たな電力を確保していく必要があるのだそう。
それでも同社は、ゴンド村が本社の所在位置であるべきと考え、そこから離れるつもりはないのだとか。
自然豊かな田舎の村と、ブロックチェーンのベンチャー企業。一見すると相反するように思えますが、このゴンド村とアルパイン・マイニング社はwin-winの関係になれましたね。日本の過疎地にとっても、現状打破のヒントが隠されているのではないでしょうか。
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[PRESS RELEASE NOVEMBER 2017]
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