2018年12月7日にYEBISU GARDEN CINEMA(東京)や新宿ピカデリー(東京)他で公開されるドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督・岡島龍介)に出演する段ボールアーティスト・島津冬樹さんに、段ボールを活用した便利なトラベルグッズのアイデアを教えてもらった前回。
ミニ連載2回目の今回は、TABIZINEの人気記事である「日本人が驚く海外の常識」や「外国人が新鮮に思う日本の常識」シリーズで、外国人がクールだと絶賛する日本の段ボールデザインと、島津さんが海外で見つけた意外な段ボールの使い方を教えてもらいました。
キリンビールの段ボールデザインは超クール!
2018年11月17日、特別協賛をするサクラパックスの段ボール工場で行われたドキュメンタリー映画『旅するダンボール』のプレミア試写会。その上映後に段ボールアーティストとして世界30カ国以上を旅しながら段ボールを収集し、その段ボールを使って財布などを作る島津さんに、TABIZINE単独取材の時間をもらいました。
その活躍は日本を飛び越え、例えば米国のペンシルバニア州ピッツバーグにあるエースホテルでワークショップを開催したり、中国の上海でユニリーバが協賛する環境イベントに参加したりと、世界に広がっています。
そんな島津さんだからこそ、日本の段ボールを世界の人に見てもらう機会もあるはずで、日本人が当たり前に思っている段ボールデザインを、海外の人が「クールだ」と評価している瞬間もきっと目撃しているはず。何か日本の段ボールデザインで、海外の人から特に人気のブランドは何かあるか聞いてみると、
「一般的に、漢字、カタカナなどのデザインはやはり喜ばれるのですが、特にワークショップなどではキリンビールの段ボールは人気です」
と教えてくれました。
段ボールを使った財布
キリンビールと言えば、1888年(明治21年)から作られているビールで、現行のラベルは1889年に変更された第2号デザインが原型になっています。中国の空想の聖獣、麒麟が描かれているラベルはあまりにも有名ですよね。
キリンの公式ホームページによれば、関東大震災で資料が消失し、今では誰がデザインしたのか確実には言えないそうですが、このラベルの誕生についてキリンの広報に取材したマイナビニュースの情報を引用すると、
といった誕生の背景があると言います。荘田氏とは三菱財閥の各社で要職を歴任したという荘田平五郎氏ですね。
実際はラベルを見ると、デザイン上の理由から英語が使用されており、漢字やカタカナは見当たりません。しかし、そのキャラクターデザインと色彩がいかにも東洋的で、欧米の人にはクールに見えるのかもしれませんね。
ちなみにキャラクターつながりで言えば、島津さんいわく、
「日本の段ボールには、可愛いゆるキャラが多用されている」
とか。ワークショップなどで余った段ボールから、ゆるキャラだけを切り抜いて持ち帰る外国人も居るみたいですよ。
アラブ首長国連邦に水の段ボールが多い理由とは
日本の段ボールには、ゆるキャラが多いという情報がありました。島津さんを取り上げたドキュメンタリー映画『旅するダンボール』の作中で、重要な役割を果たすジャガイモの段ボールにも、ポテトのゆるキャラが描かれていました。では一方で、国によって段ボールデザインに何か、国民性や特徴が見られたりするのでしょうか。その点を聞いてみると、
「農業大国の段ボールはど派手」
だとかで、
「例えばオーストラリアは世界一と言ってもいい農業大国なので、段ボールはとてもカラフルです。世界中に流通させる前提にあるため、コストをかけた凝ったデザインになっています」
などの言葉がありました。
また、各国で見かける段ボールは、その国の産業や食生活を象徴する部分もあるそうで、例えばアラブ首長国連邦では宗教上、お酒を国民が飲まないため水の段ボールが多いのだとか。確かに外務省の情報を見ると、同国の国教はイスラム教。イスラム教を重んじる国民は(国によって程度は異なりますが)基本的に飲酒を避けます。そういった部分が、流通する段ボールから見えてくるのですね。
富山県内にある医薬品メーカーの段ボールを使った財布
国内も一緒で、『旅するダンボール』のプレミア試写会が行われた「薬都」富山県では医薬品の製造・販売が盛んなため、東京ではめったに見かけない医薬品メーカーの段ボールを容易に見付けられると言います。
モロッコでは段ボールが自動車の日よけに使われている
見た目だけではなく、段ボールそのものの使い方に関しても、日本では見られない意外な光景を目撃した経験は島津さんにあるのでしょうか。将来的には地球にある全ての国を踏破して、段ボールを拾うという壮大な夢を持つ島津さん。その点を聞いてみると、
「モロッコでは、段ボールを自動車のフロントガラスに立てかけ、日よけのようにして使っていました」
との言葉がありました。なるほどサイズ的にも形状的にも最適な使い方ですよね。
ワークショップの様子
他には東南アジアの国々などで、バイクを守るカバーとして使用したり、椅子のフレームに段ボールを巻き付けて背もたれにしたりする人々を見かけたと言います。その光景をヒントに島津さんも自宅で、段ボールをフレームに巻き付けた椅子やローテーブルを自作しているのだとか。本来なら「ごみ」の段ボールも、見方を変えれば貴重な生活道具になってくれるのですね。
プレミア上映会と段ボールミュージアムの様子
以上、段ボールアーティストの島津さんに聞いた、海外で人気の段ボールデザインや、海外で見られる意外な段ボールの使い方などを紹介しましたが、いかがでしたか?
目の前の物体を「ごみ」と見るか「宝物」と見るかは、各人のまなざしと志で決まります。旅先で見かけた何気ない場景を、美しいと見るか、単なる日常の風景と見過ごすかも、一緒ですよね。
2018年3月にアメリカのテキサス州オースティンで開催されたエンターテインメントフェスでワールドプレミアもされた『旅するダンボール』。各人に新鮮な気付きを与えてくれるドキュメンタリー映画に仕上がっています。美しさとは何か、物事の価値とは何かを考えさせてくれる作品ですから、ぜひともチェックしてみてくださいね。
3YEBISU GARDEN CINEMA /新宿ピカデリー ほか全国順次公開
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外国人がクールだと絶賛するものについては、『【特集】知られざるジャパンクオリティの世界へ。“日本発祥の意外なもの”』『【日本の不思議特集】日本が誇る意外な世界一、日本発祥、日本独特の文化まで』などでも紹介していますよ!
[text and photos by Masayoshi Sakamoto(坂本正敬)]
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