2019年1月で閉店するニューヨークのデパート ヘンリベンデル ホリデーウィンドウ
(C)Hideyuki Tatebayashi
ショッピング目的でニューヨークにいらっしゃるあなたには、ちょっとがっかりさせるニュースかもしれません。アメリカのデパート「ヘンリベンデル」の全店閉鎖、「ロードアンドテイラー」のフラッグシップストア(旗艦店)の閉店です。ミッドタウンを華やかに彩っていた二つのデパートが、この冬でマンハッタン5番街から姿を消していきます。
2019年1月で閉店 ヘンリ・ベンデル(Henri Bendel)
創業当時は女性向けの帽子屋さんだったヘンリベンデル。白と茶色のストライプで、ニューヨークはもちろん全世界の女性を夢中にさせましたが、2019年1月で全店舗閉店。5番街ミッドタウンでオシャレな店内ディスプレイで楽しませ、化粧品マック(MAC)を発信して火付け役になりました。
ゴシップガールやセックスアンドシティでも登場したオシャレなデパート
アメリカの恋愛コメディドラマをお好きなあなたは、ゴシップガールやセックスアンドシティで登場したこの店を知っているかもしれませんね。ドラマのヒロインがヘンリベンデルで買い物をしたり、白と茶のショッピングバッグを提げているシーンが登場。テイラー・スウィフトやオリヴィア・パレルモなどセレブもバッグを愛用していることで知られていました。
ニューヨークの女性が白と茶のストライプに夢中になった
白と茶色のストライプは大人っぽくて、洗練されていました。化粧ポーチは憧れの的になり、ニューヨークを訪れる目的にヘンリベンデル目当てがあった女性も多かったものです。
歴史建造物に指定されている吹き抜けの素敵なビル
フラッグシップストア(旗艦店)は、歴史建造物に指定されているリッツォーリ・ビルと コティ・ビル内にあります。フランスのガラス工芸家ルネ・ラリックのガラス窓があり、双方の建物は1985年にニューヨーク市歴史建造物保存委員会によりランドマークに指定されています。女性を夢中にさせたヘンリベンデルは、化粧品マック(MAC)が出て店内はガランとした印象になり、トレンドの波は退いてしまいました。オシャレな女性だけのためのデパートは、2019年1月に123年の歴史に幕を降ろします。
住所:712 5th Avenue,New York, NY 10019
営業:月ー土曜日 9AM-9PM 日曜日 10AM-8PM
Website:https://www.henribendel.com/
2018年12月末で閉店 ロードアンドテイラー(Lord and Taylor)
もうひとつの閉店する5番街のデパートは、5番街の38と39丁目の間にある「ロードアンドテイラー(Lord and Taylor)」。フラッグシップストア(旗艦店)でもある5番街店舗は、2018年12月末で閉店することになりました。地味で古典的な印象を受けるデパートですが、実はトレンドのデパートだったのです。
革新的だった、アメリカ最古のデパート
2019年1月で閉店するニューヨークのデパート ロードアンドテイラー
(C) Sara Aoyama
ロードアンドテイラー(Lord and Taylor)は、1826年創業。アメリカで最も古いデパートです。でも、時代の先駆者でもありました。
●エレベーターの設置
●女性社長
●ホリデーウィンドウ(1938年から)
●パーソナルショッピングサービス(買い物に同行してアドバイスするサービス)
今や当たり前になっているシステムやサービスも、元はといえばロードアンドテイラー(Lord and Taylor)が始めたものでした。
10月から閉店セール
(C) Sara Aoyama
5番街のフラッグシップストア(旗艦店)を閉店することが発表され、2018年10月からは大々的に閉店セールが行われています。
現在のマンハッタンではちょっと微妙な場所(一般的なショッピングエリアから外れている)にあるロードアンドテイラー(Lord and Taylor)は、近年ではいつもガラガラ、ビルの老朽化が目立ち、予算がないのかメンテナンスも不十分な状況。それでも、古くから贔屓にしているマダムが、ゆったりと買い物を楽しんでいるのを見かけました。日本でも人気のサラベス(Sarabeth’s)のレストランとカフェが5階と6階にあり、空いていてゆっくりお茶できる穴場でもあったのです。
年末で閉めるため、売り尽くしセール中。なんでも持ってけドロボー的なディスカウントが行われているようです。詳しい様子は、ビジネスインサイダー(Business Insider)の記事で写真を見ることができます。
ホリデーウィンドウの先駆者
(C) Sara Aoyama
ホリデーウィンドウの先駆者のロードアンドテイラー(Lord and Taylor)も年末で閉めるとあって、今年は例年のようなホリデーウィンドウはなく、ウィンドウにはディスカウントストアのような「閉店セール」の張り紙が貼ってあるばかり。寂しいですね。過去には、こんな可愛いディスプレイで楽しませてくれていたのですが。
約200年の歴史に幕
(C) Sara Aoyama
1826年に創業した米最古のデパートのフラッグシップストア(旗艦店)は、約200年の歴史に幕を降ろします。今後は売却したオフィスシェア会社のウィーワーク(WeWork)本社へ引き継がれ、ビルはシェアオフィスに転向。かつて時代の先駆者だったデパートは、ショッピングエリアから取り残され、「おばあちゃんのデパート」扱いの地味な印象に変わってしまい、インターネットショッピング主流の波に飲まれてしまいました。2007年にニューヨーク市歴史建造物保存委員会が歴史建造物(ランドマーク)として認定しているビルは、変更を加える場合は市の許可が必要になるそうで、しばらくはそのままの様子と思われます。
住所:424 Fifth Avenue, New York, NY 10018
営業時間:月-土曜日 10:00AM – 9:00PM 日曜日 11:00AM – 7:00PM
Website: https://www.lordandtaylor.com/
インターネットショッピングに苦戦するデパート
アメリカではおもちゃのトイザラスの倒産など、デパートや小売店の業績不振による破産や倒産が続いています。生き残るために店舗を減らし、インターネットショッピング主流に切り替えているメーカーも多いです。
デパートやブランド店が苦戦しているのと対照的に、オンラインショッピング大手のアマゾンは、プライム会員数が1億人を突破、2018年上四半期の業績が昨年同時期に比べ43%上昇するなど、業績を伸ばしています。雇用人数を大幅に増やす、昇給等の景気の良いニュースも耳にしました。クリスマス時期の現在配達の荷物の過半数は、アマゾンのシールが貼られているほどです。ニューヨークの他のデパートも業績はあまり良くないらしく、ここもあそこも危ないという噂もあります。インターネットショッピングは便利な反面、ウィンドウディスプレイや店の雰囲気を味わう楽しみはなく、やはり対面店も残って欲しいと願うものです。可愛かったヘンリベンデルがなくなることは、個人的にもショックなニュースでした。
[All Photo by Hideyuki Tatebayashi and Sara Aoyama]
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