ほうれん草にもやし、ラビオリに牛肉の赤ワイン煮、前菜やおつまみにぴったりのオシャレな魚介類の缶詰まで、フランスにはさまざまな缶詰が揃います。瓶や缶による食品保存法が古くから発達しているから、というのもその理由のひとつでしょう。
きっかけは「栄養のある、おいしいもので敵に勝つ!」
缶詰誕生のきっかけを作ったのは、フランス革命とナポレオン戦争で歴史に名を残すナポレオン・ボナパルトです。ヨーロッパ周辺国に遠征するたびに、食料補給の問題に悩まされていたナポレオン。
当時の長期保存食品は、塩漬けや燻製、酢漬けを中心としたもので、味が悪く腐敗も多かったそうです。ナポレオンは兵士たちの士気を高め、勝利に導く重要なもののひとつが、栄養豊富でおいしい食べ物だと考えました。食料の長期保存のアイデアを公募したところ、1804年にニコラ・アペールがガラス瓶に食品を入れて加熱殺菌する「瓶詰め」を考案しました。
瓶詰めの発明は画期的だった
日本製缶協会のホームページを見てみると、瓶詰めがいかに画期的なものだったかが分かるエピソードが、1809年2月1日付けの当時のフランスの新聞『ヨーロッパ通信』より次のように記されています。
「アペールは季節を容器に封じ込める技法を発見した。この技法を使えば、季節に影響なく、春夏秋がびんの中で訪れ、農産物が畑のある状態で保存できる」
瓶詰めという新たな発明は、船の中で長い期間を過ごす海軍が陥りやすい、ビタミンC欠乏による壊血病の防止に役立ったそうです。そんな画期的な瓶詰めでしたが、ガラス瓶は重くて割れやすいという欠点も。そこで新たな発明品が誕生することになります。
缶詰を発明したのはイギリス人
アペールが1810年に、食品保存技術を記した本を出版。英語やドイツ語などに翻訳されると、同じ年にイギリスの商人ピーター・デュランドがブリキ缶による食品保存法を発明・特許を取得します。これが現代につながる、缶詰の発明というわけです。
結果的に缶詰を発明したのはフランス人ではありませんでしたが、ナポレオンそしてアペールあっての発明と言えるでしょう。ちなみにフランスは、現在も瓶詰めのラインナップが非常に豊富です。
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