片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんが、2011年に著書「人生がときめく片づけの魔法」で初めて発表した「こんまりメソッド」。書籍自体が日本国内158万部を超える大ベストセラーですが、2019年になり、その人気が改めて全世界に膨れ上がりました! そのヒストリーを追ってみましょう。
日本から世界へ
そもそも近藤さんの提唱する「こんまりメソッド」がどんな方法かと簡単に説明すると、「家の中に置くモノを心がときめくものだけにする」という整理術です。収納棚を買い足すことでも道具を駆使することでもなく、ただただ「心のときめき」にポイントを置いています。そして、不要になったモノたちを「感謝して手放す」よう提唱しているのです。
そういった自分の内面と向き合う片付けメソッドが書籍の発売とともに話題を呼びました。メディアにも広く取り上げられ、その人気は瞬く間に全国レベルになっていきます。
(c)Naoko Kurata
そして国内でベストセラーになった著書は後に30か国語以上に翻訳され、2014年頃には欧州で徐々に人気を博していくのです。特にドイツなど、片付け好きな国民性の国で、読者からの共感を得ました。
筆者が住むオランダでも、こんまりさんの書籍は通常版の他にも漫画版が発売されています。
そういったボーダーレスな人気を追い風として、近藤さんは2014年にアメリカに活動の拠点を移動。翌年の2015年には、米「TIME」誌の「世界で最も影響力のある100人」に選出されました!
ここまでも既に世界規模の大活躍をされていますが、2019年の年初には、さらなるブレイクを生む出来事が起こるのです。
Netflixが巻き起こした「こんまり旋風」
それは、米国の映像配信サービス企業「Netflix」が2019年1月から配信をスタートした、近藤さんの番組「KonMari 〜人生がときめく片付けの魔法〜」(Tidying Up with Marie Kondo)。彼女がアメリカの家庭を訪問し、片付けの後押しをするドキュメンタリーのシリーズ番組です。書籍で読むよりも「こんまりメソッド」が分かりやすく伝わることと、過程を見られることで、あっという間に話題になりました。
そしてNetflixは世界中に会員が存在するので、アメリカのみならず世界中で再びブームを巻き起こしているのです。
珍しいところでは、インド映画界の大物、俳優のアミターブ・バッチャン氏(Amitabh Bachchan)が自身のツイッターで「妻に本を贈られて、今ではすっかり大ファンだ」と述べています。言葉も文化も飛び越える「こんまりメソッド」の威力、さすがですね!
ブームが生んだ思わぬ現象たち
そして年始の休暇中にそのNetflix動画を視聴した人々が一斉に不用品の放出を始めて、各地のリサイクルショップが大わらわというニュースも伝わってきます。NYのリサイクルショップ店員は、買取査定に並ぶ人々の長蛇の列に嫌気がさして「近藤麻理恵の名前は二度と聞きたくない」とぼやき、オランダのリサイクルショップも対応に追われています。それほど、動画の影響は急激に、しかも大きな現象を生み出しているようです。
けれど、意外なところから「こんまりメソッド」に「待った」の声がかかりました。なんとそれは、本が大好きな愛書家たち。近藤さんが番組内で、出演者の愛書家に対し、不要となった本を処分するよう勧めたエピソードが視聴者の愛書家たちに驚きと反発を与えたのです。理由は様々あるようですが、「本棚の内容を指図されたくない」「本は、ときめきだけを与えてくれる存在ではない」といった意見が多いようです。
余談ですが、そんな愛書家たちの一部が心酔するのが「積ん読」(つんどく)という「まだ読んでいない本に囲まれている」状態。これまた日本発のコンセプトで、海外でも愛書家たちの間では知られるようになってきた言葉です。愛書家たちを一喜一憂させるコンセプトがどちらも日本発なのは、皮肉で面白いですね。
詳しくは、『イギリスBBCが「Tsundoku=積んどく」を紹介。世界で通じる日本語とは?』もあわせてどうぞ。
名実ともに「人々に影響を与える日本人」になった近藤麻理恵さん。ぜひ今後も、変わらぬ活躍を続けていって欲しいと思います。
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