『コーラン』や『アラビアンナイト』に登場する神秘の都市、ウバール。数千年間見つけることができず、謎の失われた遺跡とされていましたが、1990年代にNASAの人工衛星とレーダーを使った調査により発見されました。
宇宙から発見された砂漠の中の道
ウバールの発見は、NASAが衛星から砂漠の中の道を特定したことに始まります。場所はオマーンのルブアルハリ砂漠。「空虚な地」と訳されるこの砂漠の、人を寄せつけぬ秘境に存在したのです。
これらの道は、古代アラビアにおける乳香の交易路でした。調査隊が発掘をすると、要塞跡や遠く離れた地の陶器のかけらなどが見つかったのです。そう、“砂漠のアトランティス”ウバールは実在したのでした。
現在も発掘が続くウバール
発掘は今も続いていますが、遺跡の外側は観光することができます。「WELCOME TO UBAR 」と看板が立てられた入り口は手作り感にあふれ、世界遺産登録された「乳香の道」の一部だとは思えない感じです・・・。
塔のような要塞跡もあります。周りは荒涼とした砂漠地帯。
要塞跡の下には、巨大な石灰石洞窟が。奥からは水が湧き出しているそうで、都市が失われた原因は、地盤沈下によるものだといわれています。洞窟の裂け目にあるコンクリートの部分は、発掘・保護のため増設された階段になっています。
繁栄を極めたウバールの市民は、強欲で不道徳な生活を改めなかったため、アラーによって滅ぼされたのだという伝説があります。
実際の壊滅の原因は天変地異によるものだそうですが、そんなに豊かだった国が地下に埋没してしまうとは、自然の力の強大さを感じます。発掘が進んでウバールの全貌が明らかになったとき、また新たな真実がわかる日がくるのかもしれません。
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