パワーフードと呼ばれる食材はたくさんあれども、旅では“手軽さ”がもっとも重要です。具体的には、「調理がいらない(=洗いものが出ない)」「ゴミが出ない」「身近に手に入る」などです。くわえて、“旅に効くパワーフード”という意味では、疲れや免疫力維持に効果的なビタミンは必須成分!
果たして、こんな条件にぴったりの食材はあるのだろうか…?
それが、あったのです。手軽・身近・高ビタミンの三拍子揃った食材、「キウイ」です。
筆者は、そのパワーフードとしての真価を確かめるべく、キウイの本場・ニュージーランドへ行ってきました!
ニュージーランドのキウイ農園。写真協力:ゼスプリ インターナショナル
『キウイフルーツ』という名前はあの国鳥から由来していた
「キウイフルーツ」の呼び名で親しまれている、緑色した果肉のキウイ。この呼び名は、果実の表皮や見た目などがニュージーランドの国鳥・キウイバードに似ていることから、ニュージーランドで名づけられたと言います。
ニュージーランドの国鳥、キウイバード
キウイの先祖は、中国原産のマタタビ科の植物「チャイニーズ・グーズベリー」。それをニュージーランドのカリスマ種苗生産者のヘイワード・ライト氏が品種改良し、現在のグリーンキウイ(ヘイワード種)が誕生しました。
キウイ農園に潜入!
(C)Antony Gray
ニュージーランドのべイ・オブ・プレンティ地方は、国内最大級のキウイの生産地です。この地に拠点を置くキウイのトップブランド「ゼスプリ」の協力のもと、キウイ農園にお邪魔しました。
べイ・オブ・プレンティ地方の景色。キウイ農園が広がる。
タウランガというエリアに拠点を置く、世界最大のキウイの販売会社「ゼスプリ インターナショナル」(C)Antony Gray
訪れた農園では、ゼスプリ社の厳格な基準に基づいて、キウイを栽培しています。
環境保全に根ざした土壌づくりからはじまり、食の安全性と環境負荷に配慮した厳しい農薬基準や残留農薬の検査、第三者機関による品質検査など、それら全てをクリアしたものだけに収穫許可がおりるのだそうです。
キウイの選果場をのぞいてみると、手作業でキウイを選別していました。このあとキウイは、丁寧に箱詰めされて世界中に輸出されます。
(C)Antony Gray
選果場の責任者によると、日本に輸出するキウイは、形・色・糖度ともにグレードの高いものだけと言います。キウイの箱に貼られたバーコードシールによって、店頭でも栽培履歴が箱単位で把握できるそうです。
パッケージングに使用する箱は100%リサイクル可能な資源を使用。(C)Antony Gray
船で輸送する際は、二酸化炭素の排出量を削減するため、輸送船の規格やスピードコントロールのレベルも徹底。(C)Jamie Troughton Dscribe Media Services info@dscribe.co.nz
こんなに厳格な基準のもとでキウイが栽培され、私たちのもと届いていたなんて!キウイがつくられる舞台裏を知ると、あの小さい果実が愛おしく思えます。
辛いものからスイートなものまで、キウイは何類も存在する
さらなる調査のために訪れたのは、ニュージーランドの政府機関「Plant&Food Research」。ここでは、世界中の研究機関と協力してキウイを科学的に研究するほか、独自技術による次世代キウイの開発にも力を注いでいます。
(C)Antony Gray
驚くことに、研究所で育てているキウイは、こんなにも多くの種類が!
味も栄養素も異なるこれらのキウイを交配することで、体に良くて美味しい次世代キウイが誕生するのだそうです。
試食してみると、確かに、甘いものから、唐辛子のように辛いものまで味はさまざま。そのなかでも「レッドキウイ」は、キウイの常識を覆す、パッションフルーツのようなスイートさです!
果肉が赤いレッドキウイ(C)Antony Gray
現在、ニュージーランド産のレッドキウイはテスト販売の段階だそうで、日本での公式発売は未定だそう。
キウイは旅に効くパワーフードと言えるのか?
さて、パワーフードと言うからには、その健康的価値を確かめなくてはなりません。そこで、キウイの健康と栄養に詳しい現地の研究者、ポール・ブラッチフォード博士からお話しを伺いました。
博士によると、キウイは果実一つに17種類の栄養素が高密度で含まれている“マルチビタミン的存在”なのだそう!
キウイの栄養を研究しているポール・ブラッチフォード博士。筆者は“キウイ博士”と呼んでいる。
例えば、緑色のグリーンキウイは食物繊維が豊富で、その量は約バナナ3本分!キウイに含まれる水溶性の食物繊維がお腹で善玉菌のエサとなり、不溶性の食物繊維が便通を促して、腸内環境を正常化します。
キウイ特有の消化酵素「アクチニジン」もタンパク質の分解を助けて消化をサポートするので、消化器官の健康促進にもつながるのだとか。
酸味と甘みのバランスが絶妙なグリーンキウイ
一方、黄色のサンゴールドキウイは、「免疫力の維持」「疲労回復」「美肌」に効果的なビタミンCの含有量が多いことが特徴。サンゴールドキウイ1個につきレモン8個分以上(※可食部100gあたり果汁換算)、成人1日当たりの推奨量をカバーしています。
また、リンゴ7個分に相当するビタミンEも含まれており、抗酸化作用やエイジングケアに期待が持てると博士は話します。
サンゴールドキウイは、まるでトロピカルフルーツのようにジューシーな甘さ!
一つの果実にぎゅっと栄養素がつまり、疲労回復や免疫力アップに役立つキウイ。まさに、“旅に効くパワーフード”と呼べるのではないでしょうか。身近で手に入れやすく、気軽に買える価格帯というのも嬉しい点です。
キウイ博士に聞いた!キウイの効果的な食べ方
キウイのパワーフードぶりが判明したところで、次に知るべきは、効果的な食べ方です。
ポール博士が推奨するのは、キウイを「生」の状態で摂取する方法。加熱によって、栄養素が失われてしまうため、生キウイを丸ごと食べたり、スムージーにしたり、サラダやヨーグルトと一緒に食べたりするのもオススメだということです。
また、キウイは一日1個の摂取が理想的。食べるタイミングは健康効果の観点から、食事の30分前か食事中に摂取するのがベストだそうです。
ポール博士によると、キウイは食後の血糖上昇をゆるやかにして、糖の吸収を穏やかにしてくれる「低GI食品」。食事にプラスするだけでも糖尿病の予防につながるとのこと。
さらに、キウイの食物繊維は胃の中で膨張するため、ダイエットサポートにもぴったりの食材なのだとか!
皮ごと食べれば残すところなし!キウイはサスティナブルな食材
ちなみに、キウイを丸ごと食べる際は、皮のまま食べれば、摂取できる食物繊維量が2倍になる(※サンゴールドキウイの場合)とポール博士が教えてくれたので、筆者は皮つきキウイにトライしてみることに…。
サンゴールドキウイの皮はつるっとしていて、グリーンキウイの皮はざらっとした舌ざわり。
すみません、個人的には皮なしが好みです。でも、旅中であれば、(ゴミに配慮して)サンゴールドのほうを皮ごと食べるのはありかも。
もし、『皮ごと食べるならオーガニック!』という人ならば、ゼスプリ・オーガニック・キウイをどうぞ。数は少ないですが、日本国内でも入手できるそうです。
(C)Antony Gray
手軽さと豊富な栄養素をもつキウイ。しかも、皮ごと食べられてゴミも出ないって、もう、旅のための食材と言っていいのでは!?
ニュージーランド産のキウイは、今からが旬。旅心も高まるこれからの季節、この小さな果実は私たちの健康を支える強い味方になってくれそうです。
[Photos by shutterstock.com]
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