飛行機の中で恋に落ちたり、友達ができた経験はありませんか? 偶然、飛行機で隣り合わせた人に、ちょっとしたことがキッカケとなり、親しみを感じるのは、なぜなのでしょうか。考えてみると不思議です。そこで心理カウンセラーの佐藤栄子さんに、心理学の観点から飛行機の中で恋が生まれやすい理由と、恋に落ちたときの対処法について聞きました。
心理カウンセラーの佐藤栄子さん
飛行機で恋が生まれやすい理由は「非日常の空間」にある!?
飛行機は地に足がついていない、閉ざされた非日常の空間です。そこに見ず知らずの人といると、人は不安や緊張を高めます。
そんな中で、笑顔を向けられたり、挨拶されるなど、ちょっとした愛想を与えられると、相手に親しみを感じて、恋に落ちやすくなるんです。これは「つり橋効果」だと思いますね。
「吊り橋効果」とは、カナダの心理学者、 D.G.ダットンとA.P.アロンの2名によって1974年に発表された学説です。「強い恐怖や不安を感じている時は異性の性的魅力が高揚される」という効果のことで、実験が行われた吊り橋にちなんで「吊り橋効果」と呼ばれています。
被験者は18~35歳の独身男性159名です。実験は渓谷に架かる揺れる吊り橋と揺れない橋の2か所で行いました。
それぞれの橋を渡っている男性に、途中で女性インタビュアーがいくつか質問をして、最後に「実験について詳しく説明しますので電話してください」と言い、 自分(インタビュアー)の名前と電話番号を書いた紙を渡したんです。
すると、揺れる吊り橋で実験を行なった男性のほとんどがインタビュアーに連絡したそうです。一方、揺れない橋で実験を行なった男性からはほとんど連絡がなかったとのこと。
結果、強い恐怖や不安を刺激する吊り橋という場所では、 女性インタビュアーにより魅力を感じた男性が多いことがわかったんです。
そうですね。飛行機も吊り橋と同じように、非日常の狭い空間の中で、揺れるなどして不安や緊張が高まります。そんなときに、隣にいる異性から声をかけられたりすると、相手に親しみを感じやすいんです。ジェットコースターやお化け屋敷にも同じことが言えます。
飛行機で恋が生まれやすい理由のひとつにコンフォートゾーンも関係している?
飛行機で生まれる恋は、リゾート地での恋に近いと思います。飛行機を降りれば、相手に二度と会わない可能性も高いですよね。そんな状況の中、一時的に相手と親密な空間を共有することで、お互いの気持ちが盛り上がり、恋に発展しやすいんです。
また、一般論ですが、男性のコンフォートゾーンの方が広く、女性の方が狭いと言われています。男性のコンフォートゾーンに女性が入ると、無意識に男性は「自分を受け入れてくれている」と思い、心を開き、リラックスすることがあります。それも座席の狭い飛行機の中で隣り合わせた相手と恋が生まれやすい理由のひとつかもしれませんね。
コンフォートゾーンとは、個人がストレスや恐れ、不安を感じることがなく心地よく安心して過ごせる環境のことです。物理的な「広さ」という側面と心理的な「距離の近さ」の側面があり、これが女性よりも男性の方が広い傾向にあると言われています。
飛行機で恋に落ちたときの対処法
外国人はフレンドリーな人も多く、こちらが話しかければ、答えてくれますし、質問することにも慣れています。そういう意味では、外国人との恋愛の方が発展しやすいと思いますね。
例えば、ヨーロッパ人であれば、異文化に触れる環境で育っているのもあり、相手との文化の違いなどに興味を抱きやすい。これは多民族国家のマレーシアやインドの人にも言えます。
そのため「これからどこに行くの?」と聞いたり、相手が帰国予定だったら「オススメの観光スポットはある?」と聞くのもいいでしょう。簡単な質問ができる語学力さえあれば、恋人までいかなかったとしても、関係を深めることができると思いますよ。
日本人の場合は、向こうから話しかけてくることはあまりないと思うので、あらかじめ飛行機の座席を窓際か真ん中に指定した方がいいと思います。
そうすれば「荷物を棚にのせてもらえますか?」「すみません、お手洗いに行きたいのですが・・・」など、自然なかたちで女性から声をかけることができます。
それから「コップを一緒に片付けてもらえますか?」「イヤホンの使い方がわからないのですが」と相手に頼ってみるのもいいですね。
女性から頼られることが嫌な男性はほとんどいませんから、連絡先くらいは交換できるかもしれません。隣の席に日本人の独身男性がくるかどうかは、完全に運次第となりますが・・・(笑)。
席が隣でないなら、トイレのタイミングを合わせるのもひとつの手です。トイレに並んでいるときに、相手に「結構並んでいますね」「疲れましたね」など、さりげなく話しかけることができそうです。
日本人男性の場合は、自分から気を利かせて話しかけることがなかなかできないので、特にファーストコンタクトが大事になります。
最初にニコッと微笑みかけるだけでもいいと思います。「こんにちは」「よろしくお願いします」と言うのもいいでしょう。飛行機が離陸して周りが静かになってから、声をかけるのはハードルが高くなりますので、その前にファーストコンタクトを取っておくことが大事です。
また、日本人はシャイな傾向があるため「YES・ NOクエスチョン」をするのもいいですね。「YES・ NOクエスチョン」とは「はい」「いいえ」のどちらかで答えられる質問のこと。
「こちら(渡航先の国や地域)に行くのは初めてですか?」「昨日はよく眠れましたか?」「ご気分は悪くないですか?」といった、相手が「はい」「いいえ」で答えられる簡単な質問をします。
そのような質問をいくつかして「はい」「いいえ」の後にも相手の話が続くようになったら「どちらに行かれるのですか?」「何日くらいの滞在ですか?」など、一歩踏み込んだ質問をすると、相手と仲良くなれると思います。
吊り橋効果から見ると、飛行機に乗り慣れていなくて不安感が強い人、もしくは真逆でノリがよく、すぐ友達を作れてしまうような人ですね。
不安感が強い人は飛行機に乗る前から気を張り詰めています。そのため、飛行機で隣の席の男性から話しかけたれたりすると、吊り橋効果によって恋に落ちやすいんです。
一方、ノリがよい人は「どんな人がきても自分は平気」だと思っているため、知らない人にも自分からグイグイといけて、恋をつかみやすいんです。
飛行機で生まれた恋を長続きさせるには?
飛行機の中で出会うと、テンションが上がり、自分を良く見せようと話を盛ってしまったり、「こんなことを言ったら、ちょっと場が悪くなる」と思う話題を避けてしまうことがあります。
でも、それだとお互いの本音が見えませんし、相手と再会したときに「こんなはずじゃなかった」と、現実とのギャップに幻滅してしまうかもしれません。
そうならないためには、自分をよく見せようとせず、できるだけ普段通りの自分で相手に接することが大切です。それで関係が深まらない相手なら、最初から縁がなかったと割り切った方がいいかもしれません。
ひとり旅の方が恋に発展しやすいと思います。男性からも声をかけやすいですしね。
大学卒業後、某大手不動産会社に就職し約20年、主に役員秘書業務を担当。
宅地建物取引主任者、秘書検定1級、CBS(国際秘書検定)取得。
秘書業務と並行して衛生管理者(第二種)の資格を取得後職場のヘルスケアを担当、多数の個別相談を受けるうちに心理学の知識の必要性を感じ、民間カウンセリングスクールで心理学全般を学ぶ。
会社を退職後、2008年12月より心理カウンセラーとして活動を開始。
2012年12月に全国統一認定資格、一般社団法人全国心理業連合会、上級心理カウンセラー試験合格。
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