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屈託のない笑顔の彼ら
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事実キューバの人たちはとても明るく、親しげに話しかけて来る人が沢山います。英語が堪能ではなくても、カタコトの英語や日本語でどうにかコミュニケーションを取ろうとする人に何人も出会いました。
筆者が初めてキューバに行った際、旧市街のオビスポ通りに続く脇道を歩いていると、友達同士で話していた20代後半位のキューバ人グループの一人と目が合いました。すると「観光客?どこから来たの?キューバは初めて?」などニコニコしながら話しかけてきました。
怪しい雰囲気は感じられなかったので質問に答えていると、「今キューバではお祭りの時期で、広場に行ったらキューバの踊りが見れて楽しいよ!」と教えてくれました。歩いてすぐ近くだからそこまで案内するよ!と笑顔で申し出されたので、こちらも「じゃあお願い!」と返事をしてしまったのが全ての始まりでした。
目的地に行く前に・・・一休み?
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話しかけてきた親しげな男性と、その友達らしき男女二人と一緒になって、お祭りが行われているという場所まで歩いて行く途中、三人のキューバ人はハバナ市内で行くべき場所や以前出会った日本人の話など、色々教えてくれました。歩いていた道は人通りの多い道だったので、疑うこともなく歩き進めると、角にある大きめなビルに入るよと言われました。
室内でやっているお祭りなのかな?と思いながら階段を上っていくと、そこは開けたスペースになっており、軽食や飲み物を売る小さなバーなどが並んでいました。外から光が入ってくる明るい場所で、中には家族連れもいたので、怪しい雰囲気はありませんでしたが、踊っている人はいませんでした。
あれ?と思っていると、連れてきてくれたキューバ人が、「暑いから僕たちも少し休もうか」と言いました。キューバ人の一人が「飲み物を買ってくるから待ってて!」と言い残し、仲間を置いて飲み物を注文をしに行き、数分後持ってきたのは人数分のモヒート。なんの寄り道だろう?と若干の違和感も感じながらも、まぁいいかと思ってモヒートをすすりました。
肝心の飲み物代は誰持ち?
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やがて全員のグラスが空になる頃合いを見て、バーの店員が勘定を持ってくると、やたら高い値段が記載されています。ここは割り勘なのかと思っていると、キューバ人は皆そっぽを向いて、誰も払おうとするそぶりを見せません。おかしいなと思いながらも、とりあえず全員分のお金を渡すと、キューバ人は支払ってくれてありがとうというそぶりも見せず、どこかよそよそしい表情に変わっていきました。
随分と高い飲み物代を支払わされたのにお礼も言われず、もともと話していたお祭りはどうやらなさそうだし、もしかして騙された?と感じた筆者は、ビルを出て彼らと別れることにしました。すると玄関先で、
「実は子供のためにミルクを買うお金が必要なんだ、少しでいいから恵んでくれない?」
「モヒート美味しかっただろ?案内してやった分のお金くれない?」
「キューバのダンス教えてあげるからもう少し付き合って!」
と、それぞれが思い思いの懇願をしてきました。その時初めて「あー騙された!」と気づいたのでした。気づかなかった私も悪いですが、なぜモヒートを挟む必要があったのかは今だに謎です。
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騙されたとはいえ、被害額はやたらと高いモヒート(全員分で約5000円)くらいなもので、他の危害はなかったし、帰り際に断ったときもキューバ人は割と諦めがよく、随分可愛い詐欺ではありました。
これが他の国であれば、知らない人に付いて行ってどんな結末になったかと思うと怖くなりますが、キューバだったことが幸いしたのかもしれません。旅先で親切に話しかけてくる人たちを簡単に信用してはいけないという、自身への戒めにもなりました。
今でも、あの時のキューバ人はどうしているかなぁとふと懐かしく思い出す、巧みな物乞いへ騙されたキューバ事件簿でした。