美しいカルデラ湖、大浪池を巡る
霧島山という単独の山はありません。鹿児島県と宮崎県にまたがる大小20以上の火山が連なる山塊を「霧島山」といいます。昭和9年(1934年)に霧島国立公園として、日本初となる国立公園のひとつに指定されました。その最高峰が韓国岳。上の写真の右端、大浪池登山口には万が一噴火した時のために、シェルターもありました。
大浪池まではおよそ40分。道も整備されて、写真のようにゆったりとした上り坂に石が敷かれて歩きやすくなっています。とはいえ、ハイヒールでは無理です。大浪池までならスニーカーで。
やがて大浪池の避難小屋が見えてきます。この小屋には携帯トイレブースがあります。そういえば、この携帯トイレの回収ボックスがふもとの登山口手前の小屋にありました。
避難小屋を過ぎるとすぐに大浪池が見えます。このあたりの標高は1,241mだそうで、周囲1.9キロ、水深11mの火山湖なのです。まん丸い形でとっても美しい池。そして、その向こうには韓国岳が見えます。
案内板がありました。今登って来たのは、大浪池登山口でしたが、えびの高原から来るルートが人気のようですね。南にある新燃岳は現在、火山情報が出ています。近づくことはできませんので、注意が必要です。
美しくも哀しい大浪池の伝説
この池にまつわる「大浪池伝説」があるそうです。昔むかし、この池のふもとの村に庄屋夫婦が住んでいました。村一番の金持ちでしたが、ただひとつ子宝に恵まれないのが悩み。そこで、夫婦は相談してお山の神様に願をかけました。まもなく妻はみごもり、美しい女の子を授かります。夫婦はその子に「お浪」という名前を付け大事に育てました。
美しく成長したお浪は、たくさんの男たちに求婚されます。しかし、その申し出を断り続け、とうとう病気になってしまいました。そんなある夜、お浪は「山へ行きたい」と言い出します。夫婦は、思いとどまるように言い聞かせましたが、お浪は聞き入れません。そして池のほとりにやって来ました。
と、突然お浪は父親の手を振り切るが早いか、ザブンと池の中に飛び込みました。じつはお浪は、この池にすむ竜王の化身だったのです。それからこの池は「お浪の池」と呼ばれ、いつのまにか「大浪の池」となったというのです。
美しい娘の物語が語られるほど、この大浪池は美しいということかもしれません。
もうひとつ、伝説の裏には別の理由もあるように思えます。この池の水辺に近づく道がないのです。水辺に行くには、切り立った崖を降りなければなりません。とても危険です。ひょっとしたら、「危険な池には近づくな」という戒めのための伝説なのかもしれません。
霧島山の主峰・韓国岳を目指す
大浪池を半周して向こう側に少し下ると、えびの高原からのルートと合流します。ちょうどそこが、韓国岳への登り道となります。頂までの距離は短いのですが、急登です。ただ木道の階段が整備されているので、多少は歩きやすいかもしれません。
しだいに階段を上る足が重くなってきますが、樹林帯を越えて振り返ると、目の前に大浪池が見渡せます。形がとても美しいですね。しかも、まばゆい朝日にキラキラ輝いて見えます。
頂上近くになってくると、ガレ場となり、階段が壊れています。風雨にさらされ、噴火などの影響で階段が崩れてしまったのかもしれません。とはいえ、もうすぐそこに山頂が見えます。
ようやく1,700mの頂きに到着!この韓国岳、名前の由来は、遠く韓の国、つまり朝鮮半島が見えるからということらしいのですが、実際には朝鮮半島は見えません。
そして目の前の大浪池ですが、次第に南から雲がかかってきて、隠れてしまいそうになりました。この南側には高千穂峰や錦江湾、そして桜島があり、天気が良ければすべて見渡せるのですが、南側には雲がかかって見えません。
山頂の向こう側(東側)に大きな火口がありました。直径900m、深さ300mといいます。ちなみに噴火したのは、1万8,000年前から1万5,000年前といいます。その向こうにはえびの高原、そして阿蘇の山なみが遠く広がっていました。
通好みの絶景温泉宿「旅行人山荘」
韓国岳からほど近い霧島温泉郷。標高600mから850m付近に大小10ほどの温泉地があるといい、硫黄泉やアルカリ性単純泉、明礬泉など、さまざまな泉質の温泉があります。
そのひとつ、旅行人山荘は、霧島温泉の中心地・丸尾から少し山あいに入った一軒宿です。標高700m。周囲は5万坪の静かな木立に囲まれているといい、ヨーロッパの山荘にいるような錯覚を覚えました。
創業は1917年(大正6年)といい、建物や内装、そしてインテリアには歴史と風格を感じます。ロビーも広々としていて、窓ガラスが大きくとられているので、館内が明るいのです。
客室も広々としていました。しかもリフォームされて真新しくなっています。寝具もどこかドイツっぽい印象。落ち着きます。窓からは、遠く鹿児島空港や錦江湾、そして桜島が見えました。
さっそく5万坪という美しい森を歩いて散策してみました。この森には露天風呂も設えてあるようです。そして休息できるようオシャレなベンチなども置いてありました。
さらに歩いてゆくと、花房の滝という大きな滝に出会いました。「花房」という名前の通り、なにやら藤の花の房のように滝が流れ落ちる印象なんです。とっても風情がありました。
桜島や錦江湾を一望、絶景の露天風呂
そして、絶景を拝めるという温泉に。こちらは「大隅の湯」と名付けられていました。もうひとつは「錦江の湯」といいます。露天風呂からは遠く錦江湾とその上に浮かぶ桜島を望むことができます。写真の中央奥にうっすらと見えます。湯加減は熱くもなく、ぬるくもないちょうどいい具合で、絶景を愛でながら長湯ができます。
ちなみに旅行人山荘には、大浴場と露天風呂が男女各ひとつずつありますが、そのほかにも貸切りの露天風呂が4つ、そして足湯がひとつあるのです。貸切風呂は宿泊者が1か所45分間入浴することができます。上の写真は、宿から少し歩いた赤松の林の中にひっそりとある「赤松の湯」。これは絶品の露天風呂でした。これほどのんびりと入浴できる露天風呂は、そうそうありません。宿泊予約の際に早い者勝ちです。
とはいえ、大浴場もゆったりとして落ち着きます。旅行人山荘には2つの泉質の温泉があるそうで、大浴場は硫黄泉。露天風呂はアルカリ性単純泉だったでしょうか。赤松の湯は硫黄泉でした。
山荘でいただく海の幸
さあ、夕食です。前菜は美しく盛り付けられています。実は出発前に宿から電話がありました。内容はといいますと、到着時間や送迎バスなどの確認のほか、貸切露天風呂の予約時間の確認、そして食事に際して食べ物のアレルギーなどがあるかどうか。丁寧に対応してくれていることがわかりますね。
そしてお刺身の盛り合わせ。お肉のコースと魚のコースがあって、選ぶことができるのです。今回、私は魚コースを選択していました。
なんと、イセエビのお鍋まで登場。南九州の山あいで海産物を集めるのもたいへんでしょうね。それにしても、ちゃんと調理されていて、すべておいしいのです。料理長さんや宿の気概を感じます。
デザートまですべてパーフェクト。事前の確認電話に始まって、現地での受付やスタッフのもてなしもしっかりしています。そして絶景の温泉やゲストルーム、そして食事もパーフェクト。ほんとうに通が好みそうな、素敵な宿でした。どうぞGoToキャンペーンのこの機会にみなさんも訪れてみてはいかがでしょう。
[All Photos by Masato Abe]