松山のシンボル・松山城と対面
松山の旅は、やはり松山城から。松山市街を見下ろす標高132mの勝山にそびえる松山城は、日本に12カ所しかない「現存12天守」のひとつで、天守を含む21もの重要文化財があります。
ロープウェイやリフトで山の8合目付近にたどり着くと、高く堅固な石垣の迫力に圧倒されること請け合い。現存12天守のなかでも、山頂の本丸と麓の曲輪をつなぐ「登り石垣」が残っているのは、全国でも松山城と彦根城だけなんです。
美しいシルエットのみならず、本丸最大の門である筒井門の東側に設けられた「隠門」や、迷路のように入り組んだ天守までの道のりなど、防衛上の巧みな仕掛けにも注目してください。
日中だけでなく、夜もおすすめの松山城。毎日日没から23時まで天守がライトアップされるほか、夏と秋のイベント期間中は、ロープウェイと天守の夜間特別営業も行われ、天守最上階から松山市街の夜景を眺めることができ、何度訪れても楽しめます。
愛媛県庁本館のクラシックな建築を堪能
1929年建造の愛媛県庁本館は、県庁舎としては日本全国で3番目に古い格調高い建物。2003年には映画『世界の中心で、愛をさけぶ』のロケ地にもなりました。
ドームを中心として左右対称に建てられており、上から見ると鳥が翼を広げたようなシルエットを描いています。
外観は竣工当時の意匠を保っており、現役の県庁舎でありながら、内部もクラシカルなムード満点。県庁見学(要予約)に参加すれば、皇族や外国の大使といった特別な賓客を迎える貴賓室や、叙勲や県功労賞の伝達式が行われる正庁などを見学することができます。
県庁見学に参加しなくても、2階ロビーは自由に見学可能。白亜の柱と大階段のワインレッドの絨毯のコントラストがエレガントですね。大理石の白黒の床には、よく見ると巻き貝の化石が隠れているのでぜひ探してみてください。
※2021年12月現在、県庁見学は休止しています。
萬翠荘で大正ロマンにふれる
松山で大正ロマンを満喫できるスポットが、国の重要文化財にも指定されているフランス風洋館「萬翠荘(ばんすいそう)」。1922年に松山藩主の子孫である久松定謨(ひさまつ さだこと)伯爵が別邸として建てたもので、愛媛県庁本館同様、木子七郎(きご しちろう)が設計を手がけました。
豊かな緑に抱かれてひっそりと建つその姿は、ヨーロッパの風景画そのもの。ヨーロッパの人も驚いたというほど本格的なフランス風の建築でありながら、日本のアンバランスの美意識を取り入れた左右非対称の構造がユニークです。
波の上の帆船をモチーフにしたステンドグラスやベルギーから取り寄せた鏡など、館内も贅を凝らした造りになっていて、なかでも天然の水晶を用いたシャンデリアは圧巻の美しさ。街の喧噪から離れ、ゆったりと流れる時間に身を任せましょう。
「ことり」のレトロな鍋焼きうどんに癒やされる
さまざまなローカルグルメが楽しめる松山ですが、とりわけノスタルジックな気分を味わえるのがアルミの鍋で供される鍋焼きうどん。「鍋焼きうどん」というと冬のイメージがありますが、松山ではやさしい味わいの鍋焼きうどんが年間を通して愛されています。
松山でその名を知られる鍋焼きうどんの老舗が、1949年創業の「ことり」。路地裏の小さなお店ですが、創業当時から変わらぬ味を求めて、ひっきりなしにお客さんがやってきます。
アルミのレンゲとともに、フタつきのアルミ鍋に入って登場するなつかしの鍋焼きうどん。フタを開けるとフワっとだしの香りが立ち上り、自然と顔がほころびます。
伊予灘の秋獲れのいりこと北海道利尻産の一等昆布を使った特製のだしは、五臓六腑に染みわたるようなやさしい味で、毎日でも食べられそう。だしとよく馴染む柔らかい麺も特注で、ひと口食べるごとに「癒やし」を実感するはずです。
住所:愛媛県松山市湊町3-7-2
電話:089-921-3003
「フルーツパーラーみしま」でフルーツ三昧
柑橘王国の愛媛に来たからには、フルーツを贅沢に使ったスイーツも見逃せません。
大街道商店街にある「フルーツパーラーみしま」は、創業1927年の老舗果物店。食べごろの季節のフルーツを使ったパフェやジュースが人気で、地元の人から観光客まで、老若男女に支持されています。
果物店だけあって、「フルーツパーラーみしま」のパフェは余計なものが入っておらず、シンプルにフルーツのおいしさを堪能できるのが特徴。そのぶん、旬のフルーツが惜しげもなく使われているんです。
「愛媛みかんパフェ」は、愛媛の柑橘を盛りつけた冬季限定のスペシャルパフェ。キラキラ輝くジューシーなみかんの甘さに目を見張らずにはいられません。
季節のフルーツを使ったフルーツサンドや、通年オーダーできるフルーツパフェやフルーツパンチもあり、何度も足を運びたくなってしまいます。
道後ハイカラ通りでそぞろ歩きを楽しむ
松山中心部から路面電車(伊予鉄道市内線)に乗って、いざ道後温泉へ。道後温泉駅で降りると、駅前からアーケード街「道後ハイカラ通り」が広がっています。
松山や愛媛の名産がそろう道後ハイカラ通りは、お土産ハンティングにもぴったり。レトロな雰囲気に包まれながら、あれこれお店を眺めて楽しむのも道後温泉の醍醐味です。
道後ハイカラ通りの入口付近にたたずむ人気店が、「10 FACTORY道後店」。愛媛県産の柑橘を使った加工品の専門店で「温州」や「せとか」「清見」など、10種類以上の柑橘類から作ったジュースやゼリー、ドライフルーツなどが所狭しと並んでいます。
お土産におすすめなのが、小さめサイズの200mlのジュースや軽くコンパクトなドライフルーツ。イートインスペースもあり、みかんジュースの飲み比べや、ジェラートのイートインを楽しむのもいいでしょう。
ひと口に「柑橘」といってもその香りや味わいはさまざま。柑橘類の奥深い魅力に出会えますよ。
松山・道後温泉は、夏目漱石の小説『坊っちゃん』でもおなじみ。かの名作にちなんで生まれた銘菓が「坊っちゃん団子」です。
坊っちゃん団子はいくつもありますが、元祖といえば1883年創業の「つぼや菓子舗」。夏目漱石の『坊っちゃん』に登場する団子屋のモデルになったことから、2代目オーナーが3色の団子を「坊っちゃん団子」として売り出したのがはじまりだといいます。
つぼやの「坊っちゃん団子」は、最高級のしゅまり小豆をはじめ、厳選した素材を使って職人が手作りしているため、道後ハイカラ通りの店舗とお取り寄せでしか手に入らない希少な存在。上品な甘さのなめらかなあんと、口の中でとろけるようなお餅のタッグは、ここだけのおいしさです。
「イル・ポジターノ」で“道後イタリアン”を食す
1泊2食付きの宿に泊まる伝統的な温泉ステイから、自由なひとり旅まで、さまざまな旅のスタイルが選べるのも道後温泉の魅力。「夕食は外でカジュアルにいきたい」という人は、地元の食材を取り入れたイタリアンディナーはいかがでしょう。
「オーベルジュ道後」内に店を構える「イル・ポジターノ」は、一瞬日本にいることを忘れるような外観が目を引く“道後イタリアン”。四国の海と山の恵みをたっぷりと使った道後ならではのイタリア料理を提供しており、「ミシュランガイド広島・愛媛 2018特別版」にも掲載されています。
特に人気のメニューが、ピッツァワールドカップ2011年優勝者の矢野浩一氏監修の薪窯で焼き上げるナポリピッツァとパスタ。
モッツァレラ、リコッタ、ゴルゴンゾーラ、パルミジャーノの4種のチーズを使った「クアトロフォルマッジ」は、チーズ好きにはたまらない1品。外はサクッ、中はもっちりとした生地と風味豊かなチーズのハーモニーにワインが進みます。
「丹原産甘とろ豚パンチェッタのブガッティーニ アマトリチャーナ」は、愛媛のブランド豚の塩漬けと玉ねぎを使用したトマト風味のパスタ。濃厚なトマトをベースに、スパイスでパンチをきかせたユニークな味わいがクセになります。
「茶玻瑠」のモダンな北欧風客室にステイ
道後温泉本館のほど近くに建つ「茶玻瑠(ちゃはる)」は、和と洋が融合した空間が広がる温泉宿。最近は和モダンな客室を備えた温泉宿も増えていますが、「茶玻瑠」は和室でも存分に個性を発揮しています。
それが、「マリメッコ」の元デザイナー・石本藤雄氏がプロデュースした北欧風のモダン和室。畳に白木の家具を取り入れたナチュラルテイストのお部屋で、アクセントに鮮やかな北欧風ファブリックをプラス。和の空間と北欧のインテリアとの出会いが新鮮で、浴衣を着て写真を撮るのが楽しくなりますね。
また、9階にはより特別な滞在を楽しめるエグゼクティブフロアも完備。こちらも石本藤雄氏とコラボした北欧の安らぎに満ちた空間で、部屋ごとに異なるデザインのテキスタイルや陶芸作品で彩られています。
全室60平米以上の広々とした客室は、洋室であってもローベッドや床の間に見立てた空間を取り入れるなど、和のエッセンスを感じさせる空間。板張りの床は素足で過ごしたくなる心地良さで、天然木をふんだんに使った内装が忙しい日常から心を解放してくれるかのよう。
※写真はイメージです
個性が光る客室に加え、道後温泉で初めて実現した屋上露天風呂も「茶玻瑠」の自慢。南に松山城、北には石鎚山を望み、松山市街のパノラマが眼下に広がる露天風呂は解放感抜群。土日の夜、女性の屋上桶風呂では憧れのバラ風呂も体験できますよ。
圓満寺のカラフルな「お結び玉」を写真に収める
「圓満寺(えんんまんじ)」はここ数年、写真映え抜群のカラフルな「お結び玉」で注目されているお寺。1855年に道後温泉のお湯が止まってしまったときに、ここ圓満寺の地蔵尊に祈願すると再びお湯が湧き出るようになったことから、「湯の大地蔵」と呼ばれています。
仏堂の横には、道後温泉のシンボルである湯玉をモチーフにしたお結び玉がずらり。お結び玉祈願の際は、まずは地蔵尊同様、左手の上にお結び玉をのせてお願いごとをしましょう。
その後、お結び玉は境内に結ぶか持ち帰ります。お札を1枚持ち帰り、願いごとが叶ったらお礼参りの際にお札を返納します。願いが叶ったら、また道後温泉に足を運ぶ楽しみができますね。
住所:松山市道後湯月町4-49
電話:089-946-1774
宝厳寺で「捨てる」開運祈願
時宗開祖・一遍上人の生誕地として知られ、最近では「捨莉紙(しゃりがみ)」をつかった開運めぐりで人気急上昇中なのが「宝厳寺」。捨莉紙は衣食住を捨てた一遍上人の“捨てる思想”をコンセプトにした開運アイテムで、心の中にある執着を捨て、心を整えるのを助けてくれます。
本堂に参拝し、境内にある一遍上人堂を拝観した後、捨莉紙には「捨てたいこと」、願い紙には「なりたい自分」を記入。手水舎のザルに捨莉紙を入れて水にくぐらせると、あっという間に溶けてなくなります。同時に心のわだかまりも一緒に溶けるような気がして、スッキリとした前向きな気持ちになれることでしょう。
住所:愛媛県松山市道後湯月町5-4
電話:089-946-2418
「飛鳥乃湯泉」で古くて新しい湯治体験
道後温泉は『古事記』や『日本書紀』にも登場する日本最古の名湯。公衆浴場として初めて国の重要文化財に指定された道後温泉本館が有名ですが、2017年、道後温泉別館として「飛鳥乃湯泉(あすかのゆ)」がオープンしました。
その名の通り飛鳥時代をイメージした湯屋で、源泉かけ流しの温泉と愛媛の伝統工芸を活かしたアートが体験できる、新しいスタイルの公衆浴場です。
飛鳥乃湯泉の中庭では、蜷川実花さんの作品「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉中庭インスタレーション」が公開されています。床面と壁面には蜷川さんの花の写真が、回廊にはオリジナル提灯が設置され、色鮮やかな世界に包まれています。この作品は、道後温泉地区で行っている「みんなの道後温泉 活性化プロジェクト」のひとつとして展示されているそうで、2024年2月29日まで鑑賞可能。昼と夜ではまた違った雰囲気を味わえます。
1階には見事な砥部焼の陶板壁画で彩られた大浴場と、媛ひのきのデコラパネルがモダンな印象を与える露天風呂が。「美人の湯」として知られる道後温泉のなめらかなお湯に浸かれば、あっという間に肌がツルツルになりますよ。
入浴後は、人目を気にせずくつろげる個室での休憩タイムが飛鳥乃湯泉の醍醐味。道後温泉にまつわる伝説を愛媛の伝統工芸で表現した5つの個室があり、桜井漆器で彩られた「行宮(かりみや)の間」は、いにしえのお姫様気分が味わえる優美な空間。お茶とお茶菓子の接待付きで、道後温泉らしいおもてなしが待っています。
アートなハイカラカフェ「道後 白鷺珈琲」でランチ
2019年7月、ハイカラな雰囲気が漂う道後温泉にぴったりのカフェが道後温泉駅前にオープン。それが、『坊っちゃん』に登場するマドンナと、道後温泉を発見したといわれる白鷺を描いた巨大な壁画がアイコンの「道後 白鷺珈琲」。
モーニング、ランチ、喫茶と時間帯に応じて色々なメニューがあり、ランチタイムは“大人のお子様ランチ”がコンセプトの「ハイカラプレート」が人気。キッシュやひと口ステーキ、白身魚のフライ、グラタンなど1皿で多彩な味を楽しむことができ、目もお腹も大満足です。
レトロかわいいグラスに入ったクリームソーダも定番人気。道後温泉駅を見下ろす絶好のロケーションで、なつかしの昭和の味を楽しんでみては。
旬の味覚を使った季節のパフェもアーティスティック。インパクト大のビジュアルは食べるのがもったいなくなってしまうほどです。
「道後ぎやまんガラス美術館」でガラスの美にうっとり
「道後ぎやまんガラス美術館」は、道後温泉の坂の上にたたずむ「山の手ガーデンプレイス」内にある小さなミュージアム。江戸時代のぎやまんから明治・大正時代の貴重なガラス作品約300点を展示しています。
ガラスでできた虫かごや、ミニチュアサイズのガラスのままごとセットなど、多種多様なガラスアートの数々に心が躍ります。
ほの暗い空間に、色とりどりのガラスが浮かび上がる光景はなんとも幻想的。ガラスに光が当たってできる、カラフルな影もあわせて鑑賞すれば、ガラス作品の魅力をより深く感じることができるはずです。
住所:愛媛県松山市道後鷺谷町459-1(山の手ガーデンプレイス内)
電話:089-933-3655
https://www.dogo-yamanote.com/gardenplace/museum/
「どうごゆけむりかふぇ」で意外なコラボにトライ
道後温泉を散策中に小腹が空いたら、ジェラートとお団子の専門店「どうごゆけむりかふぇ」へどうぞ。2021年2月に築120年の古民家を利用してオープンしたお店で、テイクアウトとイートインの両方が楽しめます。
なかでも斬新なのが、みたらしだんごにジェラートをのせた「みたらしジェラート」。醤油味のみたらしとジェラートのしょっぱ甘いコラボレーションが新感覚です。
カラフルなあんこをトッピングした「彩りゆけむり団子」は見た目もキュート。店頭で焼き上げるお団子は、どれも驚くほど歯ごたえがありモッチモチ。抹茶とともに、ほっこりするおやつタイムを過ごしてください。
住所:愛媛県松山市道後湯之町3-16
道後唯一の造り酒屋「水口酒造」で酒蔵見学
知る人ぞ知る道後の楽しみ方が、酒蔵見学。1895年創業の「水口酒造(みなくちしゅぞう)」は道後温泉駅や道後温泉本館から徒歩圏内にあり、旅行者でも気軽に足を運ぶことができるのです。
水口酒造は、道後温泉で人気を博しているクラフトビール「道後ビール」の製造元。もともとは日本酒の蔵元ですが、いまではクラフトビールやクラフトジンといった幅広いお酒の製造を手がけており、「仁喜多津 大吟醸酒」が全国新酒鑑評会で連続金賞を受賞、「道後ジン」が「松山ブランド新製品コンテスト next one」で金賞 愛媛県知事賞を受賞するなど、各製品が高い評価を得ています。
酒蔵見学では、国登録有形文化財に指定された水口酒造主屋を見学しながら酒蔵の歴史や製品に関する説明を聞いたり、なかなか見られない日本酒やクラフトビールの製造現場に足を踏み入れたりするチャンスも。
直営売店「にきたつ蔵部」には日本酒やビールのみならず、リモンチェッロや梅酒ソーダなど和洋さまざまなお酒が並んでいるので、きっと興味を引かれるものが見つかるはずです。
※見学については水口酒造の公式サイトを参照ください
1泊2日のコンパクトな日程でも、盛りだくさんの旅が叶う松山・道後温泉。
リピーターさんはもちろん初めての人も、着いた瞬間にほっとするようなあたたかな空気感で包んでくれるこの町に、きっとまた帰ってきたくなることでしょう。
[Photos by Haruna]