300年の歴史を誇る「近江町市場」
JR金沢駅から徒歩15分、約180もの店が軒を連ねる「近江町市場」。その歴史は古く、享保6年(1721年)に加賀藩が城下に点在していた市場を御膳所としてこの地に集めたのが始まり。以来、長きにわたり金沢の食文化を支える市民の台所として親しまれています。店頭には海産物、野菜、果物、肉、乾物、惣菜など、あらゆる品々がずらり。ちなみに地元では“おみちょ”と呼ばれているとか。
もりもり寿し 近江町店
さて、日本海からほど近く、新鮮な魚介類に恵まれた金沢。高級魚や地魚を扱う回転寿司も多く、激しい競争の中で各店が切磋琢磨しています。ゆえに回転寿司のレベルは全国トップクラスという呼び声も。
ランチに訪問したのは、金沢における“回転寿司の御三家”の一つといわれる「もりもり寿し」。平日ながらも行列ができていて、その人気ぶりがうかがえます。
能登の七尾漁港などから1日に数回ネタを仕入れ、鮮度に徹底的にこだわるという同店。それでいて1皿140円〜とリーズナブルに味わえるのも魅力です。
心ゆくまでお寿司を堪能したいけれど、市場の食べ歩きも楽しみたい……。という人にイチオシなのが「北陸5点盛り」(1,430円)。のど黒、バイ貝、ガス海老、ホタルいか、白海老と北陸を代表するネタを一度に味わえる優れモノです。どれも超絶美味ですが、特に印象的だったのがガス海老。濃厚な甘みとなめらかな舌触りは極上でした。
いきいき亭 近江町店
近江町市場で海鮮丼を提供する店は30近く。が、事前リサーチするなか、当たり外れも大きいことが判明。「旅の食事で失敗してなるものか」をモットーする筆者がいつも以上に真剣に検索する中、確信を得たのがここ「いきいき亭」でした。
金沢の繁華街、片町にある「玉寿司」をルーツとするお店で、2008年にこの地にオープン。当初は市場で働く人を対象に開いたとか。店内はカウンター10席という規模感も○。どんな海鮮丼をいただけるのか、期待を胸に入店してみます。
看板メニューの、地物のネタのみを使用した「いきいき亭丼 ローカル」(2,200円/味噌汁付き)をオーダー。特筆すべきは、ネタと酢飯が別皿に盛られていること。まずはネタをビールのお供として楽しみ、続いて海鮮丼という2通りの食べ方で堪能できるのです。内容は仕入れによって変わり、この日はのど黒炙り、柳さわら炙り、しめ鯵、いわし、ヒラマサ、ヤリイカ、毛ガニなど15種。
で、何よりも感激したのが、そのネタのおいしさ! 白身魚はお皿の色が透けるほどの透明感で、鮮度の良さが一目瞭然です。聞けば、魚は店主が毎朝金沢港の競り場で買い付けているとのこと。
軽く炙られたのど黒は旨味が引き立ち、透き通るヤリイカは弾けるような食感。どのネタも口に運ぶ度に、弾力ある歯応えと強い甘みに驚かされます。さらに印象的なのが酢飯。お米一粒ずつに存在感があり、酸味と甘味のバランスがお見事。決して大袈裟でなく、自分史上最高の海鮮丼でした。ちなみにかなりの人気ぶりで13時には完売することもあるそう。訪問の際には早めの時間帯を狙うのがいいでしょう。
おさつスイーツ工房 おいも家
お寿司と海鮮丼でお腹が満たされた後はスイーツで小休止といきましょうか。こちらはかねてより目をつけていた「おさつスイーツ工房 おいも家」。金沢の特産物「五郎島金時」はじめ、全国各地のさつまいもを使ったスイーツをそろえるショップです。焼き芋がデザインされた可愛い暖簾が目印。
スペシャリテの「おいもんぶらん」(980円)をセレクト。「五郎島金時」を使用したペーストは注文後に目の前で絞り出されます。まるで滝のように流れ出る景色は圧巻のひと言!
まず、さつまいもの壁壁をバックに記念撮影。期待通り“映え”てくれますが、魅力はビジュアルだけではなく味も然り。カップの中には自家製メレンゲやカットされたさつまいも、アイスが忍ばされ、滑らかなペーストと至福のハーモニーに。お芋の素朴な甘味をストレートに体感できるスイーツでした。
近江町コロッケ
甘いものを食べたら塩気が欲しくなったので、揚げ物を摂取したいと思います(笑)。ここは金沢をはじめ国内外の食料品を扱う「世界の食品ダイヤモンド」の一角にある「近江町コロッケ」。ショーケースには常時20種類のコロッケやカツが並びます。レジ横にレンジが備えられていて、好みで温められるのもうれしいところ。
ご当地感を楽しみたく「能登牛メンチカツ」(380円)をチョイス。ザクっとした衣の中には、ジューシーな牛肉ミンチと野菜。口の中にふわりと濃厚な旨味が広がり、えも言われぬおいしさです。 筆者が訪れた時は、まとめ買いする地元のお母さん方もちらほら。近所にこんなお店があるなんてうらやましい限り!
いっぷく横丁
気がつけばもう夕方。やや肌寒くなってきたので、温かいものをいただきましょうか。こちらは金沢おでんや浜焼きが味わえる「いっぷく横丁」。ちなみに金沢おでんとは“おでん種に金沢の食材を使用していること”、“1年を通して食べられること”が定義だそうです。
具材はお店のおすすめを選んでみました。左下から時計回りにバイ貝(450円)、ふかし(180円)、えび天(200円)、車麩(250円)。ふかしとは金沢ならではの練り物で、茹でて作るかまぼこのようなもの。かまぼこより柔らかく、はんぺんより弾力があるという独特の食感です。
金沢の伝統食材である車麩はふんわりとろとろ。昆布をベースに数種類の醤油を配合したという出汁は深みがありつつ上品。カラダの隅々まで染み渡ります。
東出珈琲店
最後に訪問したのは、買い物通り口から徒歩約1分にある「東出珈琲店」。近江町市場からすぐという立地ながら、静かな通りに面していて、観光客よりも地元の人の方が多いという印象。金沢の日常を感じられるのも魅力と言える場所です。
店内は深みを帯びたテーブルや古時計が配され、初めてなのに懐かしさを感じる昭和レトロな雰囲気。コーヒーはすべてハンドドリップで、豆は浅煎りから深煎りまで20種が用意されています。もっとも深煎りの「イタリアンブレンド」(460円)はしっかりした苦味とコクがありながら、繊細な甘みが感じられる一杯。香りも華やかで、五感で癒されます。
看板スイーツというプリンを食べたかったのですが、残念ながら完売とのこと……。そこで「アフォガード」(600円)をいただくことに。これが、エスプレッソと溶け合ったバニラアイスが極上で、思いのほか感激! ちなみにイタリア語でアフォガードとは”溺れる”の意があるそうですが、まさに苦味と甘味に溺れてしまった至福スイーツでした。
そんなこんなで、2日間にわたり、心ゆくまで堪能した一人食べ歩きツアー。DAY2は海の幸から山の幸、スイーツ、コーヒーとすべててハズレなしで、我ながら食のアンテナを誉めてやりたくなります(笑)。新たな金沢の美味に出合うべく、引き続きリサーチを続けようと誓ったのでした。
[All photos by Nao]