2022年5月31日 チャイナタウン ベイヤード・ストリート(Bayard Street)
チャイナタウンとは
2011年5月10日 マンハッタン・ブリッジから見たチャイナタウン
アメリカ・ニューヨーク市のローワー・マンハッタンにある中国人街。レストランやベーカリー、土産物屋、魚屋、漢方薬店、さまざまな食材店がぎっしり立ち並びます。
チャイナタウンに足を踏み入れた途端、中国に空間移動したかのような錯覚を覚え、街の持つ生命力の強さと熱気に気圧されます。中国語表記ばかりなので、日本人には英語より理解しやすく馴染みやすいかもしれませんよ。実際には中国人のみならず、タイ、ベトナム、台湾、フィリピン、マレーシア、インドネシアなどアジア系の人が混在しています。
2008年2月7日 チャイナタウンの魚屋
チャイナタウンはどこにある
2022年5月31日 チャイナタウン モット・ストリート(Mott Street)もっとも観光客が多いストリート
ニューヨーク市には、クイーンズ区やブルックリン区などにもチャイナタウンはありますが、ここではマンハッタン区にあるチャイナタウンを説明します。
地下鉄N/Q/R/W/4/6/J/Z/ラインのキャナルストリート(Canal Street)で下車。マンハッタン区のチャイナタウンは東西南北に広がっていますが、主に観光客が集まるのは、Canal Street周辺。東はバワリーストリート(Bowery St)より先は行かないこと。ローワーイースト周辺は治安が良くなく、殺人事件(アジア女性が自宅アパート内の背後から付いてきた男に刺され死亡)が起きており、観光客も少なくなります。
住所:New York, NY 10013
公式サイト:https://chinatown.nyc/
チャイナタウンの歴史
2003年2月2日 チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)
1873年 デフレと大不況により、アメリカ人と仕事の奪い合いとなり、カリフォルニアで反中国暴動が起こる
中国人は生きる道を求めて東海岸へ。主に洗濯業とレストランに従事
1880年まで チャイナタウンには700人から1,100人の中国人移民が住んでいた
1882年 中国人の移民を制限した中国人排斥法の成立
1888年〜1902年 中国人移民を対象とした他の排他的法律が可決し、中国人の入国数が減らされた
1930年まで 4,000人以上の中国人がチャイナタウンに住んでいた
1943年 中国人排斥法が廃止
1965年 移民および国籍法は、移民割当制度を覆し、アジアから米国へのより多くの移民を許可、中国人移民の新しい波がチャイナタウンに定住し始め、人口が劇的に増加
1980年まで ニューヨーク市の中国人コミュニティは、アメリカ国内最大になる(隣接するリトルイタリーは衰退へ)
2010年 チャイナタウンは、国家歴史登録財の1つの歴史地区に登録
2020年 ニューヨーク市の2020年国勢調査によると、マンハッタンのチャイナタウンの人口は27,200人に減少。ニューヨーク市の最大アジア人口はクイーンズ地区で、フラッシング(Flushing)54,200人とエルムハースト(Elmhurst)55,800人。次がブルックリン地区で、ベンソンハースト(Bensonhurst)が46,000人、サンセットパーク(Sunset Park)に31,400人のアジア人居住者がいる
チャイナタウンのトリビア
あれこれ食べたいものがたくさん 食の宝庫
小籠包
人気の高いチャイナタウンで、観光客のお目当てはやはりグルメ。ワゴンが回ってきて好きなものが選べる飲茶や、熱々のスープが飛び出す小籠包、麺の種類の多さに迷う麺類、素材のフレッシュさを活かした炒めものなど食べたいものばかり。たまごの甘さを感じるエッグタルトやふわふわのスポンジケーキ、モチモチのバブルティーなどデザートも充実。
しかも、ほとんどのお店がお手頃価格なのがうれしいものです。コロナ禍により、持ちこたえられず閉店したお店が多かったのは残念。
エッグヌードル(卵麺)のフィッシュボール(魚のつみれ)入り麺 シコシコした食感のフィッシュボールが美味
高級ブランドの模造品に引っかからないよう注意!怖い目に遭うかも
2022年5月29日 チャイナタウン ブランドの模造品
チャイナタウンの名物といえば、高級ブランドのコピー(模造)品。商標権や意匠権を侵害した模倣品は、アメリカでは違法です。現在では路上に並べることは滅多になく、カタログを見せて欲しいものが決まったら、停めている車から品物を取り出すというパターン。旅行者と見ると積極的に声をかけてきますが、「このデザイン可愛い、いくら?」などと興味を示さないこと。
2022年5月29日 チャイナタウン ブランドの模造品
筆者が何度か見かけた経験では、チャイニーズやラテン系のおばさんがひとりで旅行者に声をかけるのですが、興味を示すと大勢の仲間(大概がアフリカ系)が現れて状況が一変。
それもタチが悪い感じの人が出てきて、旅行者を仲間の人垣で取り囲んでしまうのです。模造品をいくらで買わされるのかわかりませんし、通行人に見えないよう取り囲むので、お財布を取り上げられるかもしれません。
2022年5月29日 チャイナタウン ブランドの模造品に興味を示す観光客
筆者はニューヨーク市在住なので声をかけられたことはありませんが、旅行者が取り囲まれているのは数回見たことがあり、怖いなと感じました。偽物なんかいらない!君子危うきに近寄らず、ですよ。
“The Bloody Angle(血まみれの曲がり角)”と呼ばれた、ニューヨーク史上最も多くの殺人があったストリート
2003年2月2日 チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)ドイヤーズ・ストリート(Doyers street)
20世紀初頭のチャイナタウンには、違法の賭博場と阿片窟、売春窟が乱立し、30年の間2つの中国系マフィアが “Tong Wars”と呼ばれる権力や縄張り争いを続けました。
敵対するギャング団の抗争舞台になった“The Bloody Angle(血まみれの曲がり角)”は、当時アメリカのどこよりも多くの殺人事件があったと言われます。キャナルストリート(Canal Street)の奥にある、ドイヤーズ・ストリート(Doyers street)は60m程の短い通りに90度のカーブがあるため、待ち伏せに最適だったのです。
1957年上写真左手の”Tings Gift Shop(現在は単なる土産物屋)”から、10パウンド(約4.5kg)のヘロインが発見されました。元々このあたりは阿片窟が多い場所だったそうです。
1906年1月 Chinamen arrested after Mock Duck & Tom Lee factions’ shooting in Chinatown (C)The Library of Congress
逮捕されたチャイニーズ・ギャング団メンバー
【世界の謎】あなたの知らない、マンハッタン ゴーストスポット7選
チャイナタウン最大の公園は、かつてはアメリカ最初のスラム街だった
1865年当時 ファイブポイントと呼ばれる悪名高いスラム街だった (C)THE NEW YORK PUBLIC LIBRARY
レオナルド・ディカプリオ主演の2002年の映画『ギャング・オブ・ニューヨーク』の舞台で、19世紀のチャイナタウンで一番危険な場所と言われた、沼を埋め立てたスラム街「ファイブ・ポインツ」。不完全な埋立地のため地盤沈下し、疫病の発生によって中産階級住民は逃げ出し、アイルランドやアフリカ系など貧しい移民の居住地となりました。
荒廃した長屋には低所得者が過剰入居し、付近ではギャンブル、売春、殺人などの犯罪が毎晩行われ、世界最悪のスラム街と呼ばれました。
その後スラムは取り壊され、1897年に公園に生まれ変わりました。現在は中国系の年配者が太極拳や胡弓、ゲームに興じるのどかなコロンバスパークになっています。ただし、夜間や早朝は閑散としているので立ち入らないこと。
2022年5月31日 現在は公園(Columbus Park)になっている
チャイナタウン 82年前へタイムスリップ
1940年当時 チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)(C)THE NEW YORK PUBLIC LIBRARY
チャイナタウンの最大の行事といえば、チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)。日本の獅子舞のようなライオンダンスが練り歩き、レストランや店舗内に入り(店や客から心付けをもらう)、爆竹代わりのクラッカーが景気良く鳴らされたものです。2022年は例年より地味ながらも、チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)のイベントが行われました。
2008年2月7日 チャイニーズ・ニューイヤー(旧正月)
コロナ禍により、ヘイトクライム(人種差別による憎悪犯罪)が次々と起こり、アジア人は標的になるのではないかと怯え、年配者は外出しなくなりました。旅行客はいなくなり、チャイナタウンは潮が引くように人影が消え、多くのレストランやパン屋、土産物屋が閉店せざるを得ませんでした。2022年になりやっと旅行者が戻ってきて、閑散としたチャイナタウンに熱気が戻りつつあります。
ニューヨーク市の景色は進化し続けています。次回のニューヨーク旅学事典は「ウォール街」を予定。続けて読んでいただくとうれしいです。
[All Photos by Hideyuki Tatebayashi ] Do not use images without permission.
参照
Chinatown and Little Italy Historic District New York, New York National Park Service U.S. Department of the Interior
偽ブランド品購入で懲役刑も NY市で偽造品撲滅に向けた動き Daily Sun
2020 censuses result for New York City NYC Gov 2021年8月
Columbus Park NYC Parks
We unearth the secrets of NYC’s ‘Murder Alley’ – NY Daily News
【ニューヨーク旅学事典15】夏の幻想「コニーアイランド」
【ニューヨーク旅学事典14】世界屈指の芸術の殿堂「リンカーン・センター」
【ニューヨーク旅学事典13】ニューヨークの春を楽しむ「リバーサイド・パーク」
【ニューヨーク旅学事典12】米大富豪の財力を示す世界最大級の私立美術館「メトロポリタン美術館」
【ニューヨーク旅学事典11】ニューヨークの知性「ニューヨーク公共図書館」
【ニューヨーク旅学事典10】夜空に佇むスタイリッシュな貴婦人「クライスラー・ビルディング」
【ニューヨーク旅学事典9】夢と現実をつなぐ橋「ブルックリン・ブリッジ」
【ニューヨーク旅学事典8】希望のあかりを灯し続ける「自由の女神」
【ニューヨーク旅学事典7】NYCの中にある都市「ロックフェラー・センター」
【ニューヨーク旅学事典6】世界一多く撮られているエンパイア・ステート・ビルディング
【ニューヨーク旅学事典5】人と旅をつなぐグランド・セントラル・ターミナル
【ニューヨーク旅学事典4】セントラルパークは森や劇場もある住民のオアシス
【ニューヨーク旅学事典3】タイムズスクエア・犯罪の温床から観光客の街へ
【ニューヨーク旅学事典2】マンハッタンの名前の由来は「多くの丘がある島」
【ニューヨーク旅学事典1】アメリカ最大都市の名前の由来、歴史、街の変化