街頭の紅葉が色付きはじめたパリ。もっともパリが美しい季節の到来です。そんなパリをぜひ見てみたいけれど、なかなか簡単に旅行に行けないというあなた、映画でパリを旅してみませんか。美しいパリが舞台の映画をご紹介したいと思います。
北ホテル(1938)
映画「北ホテル」は1938年に制作されたフランスの古典映画です。舞台はパリのサンマルタン運河沿いに位置する北ホテル。ピエールとルネ、エドモンとその情婦レイモンドの2組のカップルを軸として、ホテルに滞在する人々の模様を下町情緒たっぷりに描いています。戦前フランスではパリの下町を描いた映画が沢山制作され、多くの外国人はパリの下町に憧れを抱きました。映画「北ホテル」では当時の情緒豊かな下町のパリに触れることができます。
映画製作当時サンマルタン運河では穀物や建設材料などをパリ市内に運ぶ運搬船が行き交っており、活気あふれるエリアでした。映画の中で映画描かれているサンマルタン運河はセットで建てられたものですが、実物のサンマルタン運河そのものです。この舞台になっている北ホテルは現在もその建物が残り、映画の舞台地を見ようと今でも観光客が訪れています。運搬船が廃止された現在、サンマルタン運河は映画製作当時とは違い落ち着いた緑溢れる場所となっています。それでも路地を入れば下町風情が残り、映画「北ホテル」に描かれたパリの面影を見ることができます。
モンテーニュ通りのカフェ(2006)
田舎からやってきたジェシカは、祖母が語る高級なパリをその目で見るため、モンテーニュ通りの名店のカフェ「カフェ・ド・テアトル」で働きはじめます。「カフェ・ド・テアトル」には女優や資産家、ピアニストなど苦悩を抱えた人々が集います。この映画ではジェシカとこの高級階級の人々の人生模様を描いています。
モンテーニュ通りは高級ブティックからホテルプラザアテネ、シャンゼリゼ劇場とパリを代表する通りです。モンテーニュ通りの隣にはセーヌ川が流れ、すぐ側にはエフェル塔が見えます。映画ではこの高級な側面のパリが登場人物の心情と共に描かれています。登場人物の苦悩を描く場面ではこのモンテーニュ通りは上辺だらけの世界の象徴として描かれていますが、それが解き放たれた瞬間、映画の中のパリは美しくうっとりとする景色へと変化し、まさにパリの至宝を堪能することができます。
処女小説執筆中のアメリカ人映画脚本家ジルは恋人と共にパリにやってきます。ある夜の12時、酔ったジルが一人でパリを歩いていると、アンティークの車が止まり誘われるがままにその車に乗り込みます。そして現代の趣きとは違ったパーティー会場へ。
このパーティーにはフィッツジェラルド夫妻、コールポーター、ジャンコクトーがいます。ジルは憧れだった1920年代にやって来たのです。ミッドナイト・イン・パリでは外国人の目線からパリが描かれていて、どの場面も魔法がかかったかのように美しいパリを堪能することができます。セーヌ川、ロダン美術館やクリニャクールの蚤の市、オランジュリー美術館、シェークスピアカンパニー書店。パリの観光名所を映画の中で一緒に楽しむことができます。
映画の中で、ジルが1920年代に行くための車がやってくる場所は、5区のパンテオンの裏側にあるサンテティエンヌデュモン教会です。映画の中で過去と現在を繋ぐこの場所はどこかミステリアスな雰囲気に包まれています。
映画は多様なパリの顔を見せてくれます。この秋はパリが舞台の映画で旅する気分を味わってみましょう。これらの映画はひとときの間パリに連れ出してくれます。
編集部注)
こちらの記事は2015年11月14日以前に執筆されたものです。このたびのパリ同時多発テロにおいて犠牲になられた方々と、ご遺族のみなさまに、深くお悔やみを申し上げます。
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