日本のお歳暮は昨今簡略化になってきている気もしますが、NYにもお歳暮にあたる習慣があります。ホリデーシーズンは、家族、恋人、友人などへのホリデー・ギフトで出費が嵩みますが、さらにこんな出費もあるのです。
ドアマン、スーパー(ビルの管理人)、掃除の人、郵便の配達人など、日頃お世話になっている人に感謝の意をこめて、チップ(現金)を渡します。
ホリデーチップの目安
NYの不動産業界情報「Brick Underground」によると、
◆スーパー(管理人)、マネージャー(ビルの責任者)
平均額 75ドルから175ドル(実金額の幅 50ドルから500ドル)
◆ドアマン、受付(フロントデスク)
平均額 25ドルから150ドル(実金額の幅 10ドルから1000ドル)
◆ポーター(荷物運び)、便利屋(雑用をやってくれる)、修理人
平均額 20ドルから30ドル (実金額の幅 10ドルから75ドル)
◆駐車場の係員
平均額 25ドルから75ドル (実金額の幅 15ドルから100ドル)
安全はタダではないアメリカ
日本にはない習慣なのでイメージがしづらいかもしれませんが、多民族が集まる国アメリカでは、サービス、安全はお金で買います。
例えば、アパートのドアマンや受付は、居住者の顔はもちろん、居住者の友人、知人、ファミリーなどの顔を覚えています。居住者以外は、居住者の許諾を得て、館内に通します。安全のため、知らない顔や現在の居住者に用のない人だと通しません。居住者が在室か外出かも把握しており、そういった集合住宅では孤独死、病死ということは免れます。手紙や小包の有無も教えてくれます。
外出の際、タクシーが必要な場合は、ドアマンが呼び止めてくれます。重い荷物を持っている時は、彼らが運んでくれます。
大規模なビルと小規模なビルのチップはどちらが多い?
チップの額はビルの大きさにも依るそうです。では大規模なビルと小規模なビルでは、どちらがチップが多いと思いますか?
正解は小規模なビルなのです。
大規模なビルは大勢のスタッフが働いており、年末になると、管理会社からスタッフの顔写真付きの「ホリデーチップリスト」が各住居に配布されるそうです。働いている人の顔を知っているか否かは別にして、目安50〜100ドルくらいを封筒にいれて(通常はホリデーカードに挟んで)、管理会社に渡してください(一人一人に配りきれない数なので)とドアの下に手紙が差し込まれるそうです。そのスタッフの数は20人〜50人だそうです(!)。上記のスーパー(管理人)、マネージャー(ビルの責任者)、ドアマン、フロント、ポーター(荷物運び)、便利屋(雑用をやってくれる)、修理人、駐車場の係員の他に、清掃員、ゴミ処理担当ほかいろいろな人が働いているのです。50ドル×20人=1000ドルですよ。50人もスタッフがいたら、2500ドル!
小規模なビルは働く人も少ないので、一人あたりが貰うチップは多くなります。長く住んで付き合いがあれば、スタッフの個人的な生活環境も知り、家族や友人に近い存在になるためもあるかと思います。子供のいる家庭であれば、子供を可愛がってくれるドアマンやスタッフに親近感や感謝の念を抱くでしょう。
ベストチップのエリアは
ニューヨークで、良いチップが貰えるのは、やはりマンハッタンだそうです。特にダコタハウスがあるあたりのセントラルパークウエスト(セントラルパーク沿い西側)の70-80丁目あたりと比べるものはないとか。
筆者も、ロト(宝くじ)に当たったら、あちこち修繕が必要なこのぼろアパートから出て、マンハッタンの高級コンドで暮らしたい、などと憧れますが、このホリデーチップの話を聞くと、とても無理無理、自分とは別世界と感じますね。高級なコンドに住むには、自分が物件を持っていても、管理費、維持費、税金、その他諸々の多大な支出が払えないと住むことはできないのです。
ドアマンの気持ちは
この時期たくさんのチップを貰うであろうドアマンはどう思っているのでしょう?
NYの「am Newyork」紙 12/10号 “The Scoop on tips for the holidays”でドアマンはこう答えています。
「毎日この仕事をして、感じよく、親切に振舞っているつもりだ。でも、見下す態度を取る失礼な居住者もいるよ。そういう人からチップを貰いたくない。いかに無礼な態度なのか示すために、チップを突き返したいと思っている。」
「挨拶しても無視して出入りされるのは、嫌な気持ちだよ」
「チップよりも、感じ良く接して欲しい」
「チップと一緒に、仕事を労ってくれる、素敵なメッセージを書いたカードを貰うと嬉しい」
雨の日も、雪の日も、寒い季節も、うだるような暑い季節にも、ドアに立つドアマンの仕事は想像以上に厳しいもの。それでも笑顔で迎えてくれる彼らはプロフェッショナルの意識を持っています。人間として敬意を払って欲しいと思うのは、当然のことと言えるでしょう。
この1年間ありがとう
国が違っても、1年の労をねぎらう習慣は同じですね。
「今年はありがとう、また来年もよろしくお願いします」という感謝の気持ち。
また、自分(または自分の子供)の教師、馴染みの美容師、ネイリスト(マニキュアしてくれる人)、ドッグ・ウォーカー(ペットを散歩に連れて行ってくれる人)の方々にも感謝の気持ちを表します。教師には現金は渡せないので、小さなプレゼントかギフトカードが一般的です。
[TIPPING THE BUILDING STAFF: BRICKUNDERGROUND’S 2015 GUIDE ]
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[Holiday tipping: Who to include and how much to give]