カスティージョ・デ・ムルシア ©️Shutterstock.com
路上に並べた赤ちゃんを飛び越える祭り
Jtspotau , CC BY 3.0 , via Wikimedia Commons
祭りとはそもそも何なのでしょう。各種の百科事典を調べると、
特別な時空に人が集まる
各種の儀礼行為を経験する
潜在的な理念を共有する
このような要素が挙げられています。
これから紹介するスペインの祭り『エルコラチョ』もまさに、これらの定義が完璧に当てはまります。集まる場所、共有する理念は普通でも、参加者の経験する儀礼行為が変わっているので『エルコラチョ』は、現代的な感覚で言うと「変な祭り」と言えるのだと思います。
一体、どんな祭りなのでしょうか。『エルコラチョ』を取り上げる英語圏のメディアでは『Baby Jumping Festival』と説明されています。英語のわかる人からすれば、この英語の響きだけで変な祭りの予感がするはず。
首都マドリードから200kmちょっと北に向かうとブルゴスのまちがあり、そこからさらに西へ行くと、「カスティージョ・デ・ムルシア」という村があります。
その村で、毎年6月中旬に開催される『エルコラチョ』は、悪魔に扮(ふん)した村の男性が路上のマットに並べた赤ちゃんを飛び越える、キリスト教に関連した祭り です。
カトリック教会の中でも議論がある
ジャンプの儀式後には、赤ちゃんたちに花びらがまかれ祝福される。 Celestebombin , CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
どうして、SNS(会員制交流サイト)が荒れそうな際どい行為を現代でも続けているのかといえば、伝統的に、ジャンプするとともに悪魔が赤ちゃんから罪や悪運を運び去ってくれると考えられている からですね。
『ナショナルジオグラフィック』の記事によると、その歴史は1620年代までさかのぼれるとの話 。
これまでの歴史で、悪魔役の男性が赤ちゃんを飛び越える際に、けがをさせたなどの事件は報告されていないそうです。
もともと、村で生まれた1歳未満の赤ちゃんだけが儀式の対象だったものの、現在では、わが子をこの儀式に参加させたいと世界中から人が集まるようになりました。それくらい、人気の祭りともいえます。
それでも、やはり(あるいは、知名度が増したからこそ逆に?)、カトリック教会の中でも議論があって、感心しないと考える向きも存在するようですね。
2023年の開催日は6月11日です。今から弾丸でスペイン旅行を計画するとなると、ちょっと大変かもしれませんが、国際ニュースなどでその様子をチェックしてみてはいかがですか?
[参考]
※ Look Inside Spain’s Unusual Baby Jumping Festival – National Geographic ※ inside El Colacho, the wild 400-year-old Spanish festival where men dress as devils and hurdle over babies to drive away evil – Insider ※ 赤ちゃんの上をジャンプ! スペインの伝統行事「エル・コラチョ」 – AFP ※ Baby Jumping Colacho Festival 2023 – Carnifest
Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター
翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(
https://hokuroku.media/ )創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。
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