【実は日本が世界一】標高5,640m!最も高いところにある天文台は東大の施設だった

Posted by: 坂本正敬

掲載日: May 31st, 2023

日本にいながら、意外と知らない日本の「世界一」。いつも何気なく目にしているものから、知られざる自然の世界、そして努力や技術の賜物まで、日本には世界に誇れる「世界No.1」がたくさんあるんです。そんな「実は日本が世界一」、今回は、日本の天文台が誇る世界一を紹介します。

チリ・アタカマ砂漠の天の川
 


 

世界で一番の天文台

チリ・アタカマ砂漠
アタカマ砂漠

旅に関するギネス世界記録を紹介するTABIZINEの別の連載で、南米チリにあるアタカマ砂漠を取り上げました。

世界で最も乾燥した砂漠として、ギネス世界記録にも登録される場所です。南北1,200kmに広がるその長大な砂漠に実は、東京大学が関係した世界一も存在します。

どんな分野での世界一なのでしょうか。答えは、世界で最も標高の高い場所にある天文台になります。

ギネス世界記録にも登録


チャナントール山 ALMA (ESO/NAOJ/NRAO), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons

天文台の正式名称は、「東京大学アタカマ天文台」です。広大なアタカマ砂漠は、低い場所でも標高が3,000mに達します。

さらに、アタカマ砂漠にはいくつかの孤立峰が存在し、その中でも標高の高いチャナントール山の山頂に、東京大学アタカマ天文台が存在します。

「Highest astronomical observatory(世界で最も標高の高い天文台)」と登録されるギネス世界記録では、標高5,640mと記載されています。

言うまでもなく、富士山の山頂よりも高い場所にある天文台なのですね。

大気透過率の高さが抜群に優れている

こうなってくると凡人としては素朴な疑問が浮かびます。東京大学がなぜ、チリの砂漠の独立峰に天文台などをわざわざ建てたのでしょうか。

その理由はまさに、これまで触れてきた、標高の高さや、乾燥した気候が関係しているとの話。

専門的な言葉をそのまま使えば、大気透過率の高さが抜群に優れているらしいです。標高が高く乾燥した地域であるため、大気中の水蒸気量が極めて低く、晴天率も高いので、天体観測に適しているのだとか。

未開拓の独立峰に天文台をつくる


東京大学アタカマ天文台の様子。東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画のニュースリリースより画像引用

ただし、このような土地に天文台をつくるためには、容易に予想が付きますが、かなりの険しい道のりがあったそうです。それこそ、チャナントール山は未開拓の独立峰だったため、幅4m・長さ6.4kmの道路そのものを開通させるところからスタートしなければいけなかったそう。

気圧も気温も低いため、作業メンバーは酸素吸入器を必要とします。各種の機器についても、平地とは異なる条件下での作業を想定して選定・運用しなければいけないようです。

この東京大学アタカマ天文台がギネス世界記録に認定されたタイミングは、2011年5月5日でした。

その年の7月の時点で、チャナントール山の山頂には、口径1mのminiTAOという赤外線望遠鏡とドーム、観測コンテナ、倉庫コンテナ、発電機コンテナが設置されていました。

あの大震災で日本が難局に差し掛かっていたとき、世界では一方で、日本人の研究者たちが素晴らしい偉業を達成していたことになります。

しかも、この天文台プロジェクトは、現在進行形で進化し続けています。

日本がどんな状況下に置かれても、われわれ日本人の同胞は「世界の果て」で立派に活躍している。なんだか勇気をもらえる話ですね。

[参考]
Highest astronomical observatory – Guinness World Records
第5章 サイト
チャナントール山頂で地鎮祭が行われました – 東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画
東京大学アタカマ天文台がギネスに認定されました。
~世界最高地点の天文台~ – 東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画
【こんなところに東大が】チリ・アタカマ砂漠 世界最高水準の望遠鏡設置へ – 東大新聞オンライン
世界で一番高い場所に望遠鏡 東大がチリに建設 – 朝日新聞

[Photos by Shutterstock.com]

PROFILE

坂本正敬

Masayoshi Sakamoto 翻訳家/ライター

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

翻訳家・ライター・編集者。東京生まれ埼玉育ち。成城大学文芸学部芸術学科卒。現在は、家族と富山に在住。小学館〈HugKum〉など、在京の出版社および新聞社の媒体、ならびに〈PATEK PHILIPPE INTERNATIONAL MAGAZINE〉など海外の媒体に日本語と英語で寄稿する。 訳書に〈クールジャパン一般常識〉、著書(TABIZINEライターとの共著)に〈いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日〉など。北陸3県のWebマガジン〈HOKUROKU〉(https://hokuroku.media/)創刊編集長。その他、企業や教育機関の広報誌編集長も務める。文筆・編集に関する受賞歴も多数。

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