「河」は固有名詞だった
最初は「河」の字から。漢字辞典を調べると、語源として「水の流れ+型」を意味すると書かれています。言い換えると、直角に曲がる水の流れを意味する漢字になります。
この「河」、もともとは黄河を表す固有名詞でした。世界地図を持っている方はぜひ、黄河を地図で探してください。渤海から指でなぞっていくと、西安の手前、潼関(とうかん・トンコワン)でほぼ直角に曲がっています。
この特徴を表現した「河」が、黄河の固有名詞としてかつて使われていたのですね。この「河」は次第に、大きな川や水路を意味するようになり、河川、運河などの形で利用されるようになります。
<「河」はもともと中国の黄河に対する固有名詞であったが、のちに普通名詞化した>(小学館『日本大百科全書』)
ちなみに、中国北部の川を「河」と書き、南部の川を「江」と呼ぶそうです。世界史や地理のテストで、黄河と長江の位置を選べと言われたら、北が「河」、南が「江」と考えればいいのですね。
和語「カワ」は水の供給源の意味
小学館『日本大百科全書』によると、先ほど紹介した「河」と、一般的に利用される「川」の漢字には、厳密な区別は存在しないそう。
では、それらの漢字の訓読みをあてがわれた「カワ」という和語は何から来ているのでしょう。
同じく小学館『日本大百科全書』によると、水の供給源の総称を日本人は「カワ」と呼んだそう。言い換えれば、わき水や泉も「カワ」でした。
逆に、現代人が考える川は、流れる水源だったため「流れガワ」「走りガワ」と区別して呼んだみたいです。
ちなみに、その水源の水を導いて貯蔵する施設と場所を「ヰ(イ)」「ヰド」と呼びました。身近な言葉にもいろいろな歴史や意味があるのですね。
世界には、逆流する川がある
一般的なイメージとして川は、上流から下流に一方通行で流れ下るイメージがあります。もちろん、その通りではあるのですが中には、大変な勢いで逆流する川もある様子。
例えば、中国の浙江(せっこう)省の杭州湾に流れ下る「銭塘江(せんとうこう)」では、大潮の時には海水が逆流し、観光客の見せ物になります。
そう聞くと何か、穏やかなさざ波が水面を静かにさかのぼっていく様子を想像するかもしれません。しかし、1年の中で最も逆流が激しくなる秋は、激しい逆流が堤防を乗り越え、川岸に群れる見物客に大波のように降り注ぎます。
中国駐大阪観光代表処によれば逆流する波の高さが9mに達した年もあったそうです。その激しい逆流の様子を見れば容易に察しがつきますが、過去には死傷者も出ました。
ちなみに、銭塘江は「江」ですから中国の南部の川になります。これでもう、地理や世界史のテストで困りませんね。
以上、川に関するトリビアを紹介しました。銭塘江のように、川の荒れ狂う姿はなぜか、人を引き付ける部分があるように思います。
しかし、自然のエネルギーは人間の想像を容易に超えてきます。荒れた川にはくれぐれも、興味本位で近付かないほうがいいですね。
[参考]
※ 漢字源 – 学研教育出版
※ 銭塘江の逆流現象「一線潮」鑑賞に2万人 浙江省海寧市 – Xinhua Japanese
※ 日本語教育能力検定試験によく出る「語彙」のまとめ – 日本語教育能力検定試験まとめ
※ 銭塘江の大逆流 – 中国駐大阪観光代表処
※ 中国・銭塘江で潮流が逆流する自然現象「海嘯」 – TBS
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