江戸時代の1810年に出版された書籍で『旅行用心集』という旅のバイブルがあります。
当時は東海道などを多くの人が歩いた旅行の成熟期。その時代的なニーズを受けて、旅の心得を著者がまとめています。今見返しても「なるほど」と納得させられる旅の心得が満載。
そこで今回は『旅行用心集』の中でも「これは」と思った部分を取り上げて、紹介したいと思います。
1:ただ楽しむためだけに旅をしない
最近の旅行は、楽しむために行くという側面が強いですよね?
江戸時代でももちろん一緒だったみたいですが、ただ楽しむ、ただ遊びに行くといった気持ちで過ごしてしまうと、不便や不都合、他人の不手際などにかえって過敏になってしまいます。
旅先では食べ物の不満も出るかもしれません。宿で気分にそぐわない待遇を受けるかもしれません。しかし、そうした不平をぐっと飲み込んで、「これも旅の楽しみだ」と逆に受け入れ、旅人という謙虚さを持って道中を過ごすべきだと書かれています。
そうした旅の姿勢と経験こそが人情や思いやり、寛大さを育て、人としての視野を広げさせてくれるのですね。
2:旅の連れは6人まで
一人旅もいいですが、大人数で出掛ける旅もいいですよね。ただ、あまりにもその人数が増えてしまうと、かえって旅の魅力が失われてしまったり、行動範囲が狭くなってしまったりする恐れも・・・。
『旅行用心集』によれば、旅の連れはせいぜい5人から6人が適切だとか。それ以上は多すぎるという教えが書かれています。また、大人数で出掛けたときは、お金の支払いをあいまいにしないようにとも教えてくれています。
立て替えが続くと、払っている側からすれば「いつ払ってくれるんだよ?」という気持ちになってきますよね。支払いはその場で清算、あるいは遅くてもその日の最後にまとめて清算すべきだといいます。
3:9日で行く道を10日で行く
スケジュールの詰め込み過ぎはNG。どこかに必ず無理が掛かって、忘れ物をしたり、体調を崩したり、トラブルの元となります。
『旅行用心集』では、9日で行く道のりを10日で行くつもりでスケジュールを組むべきだと書かれています。なんでもゆったりと過ごし、食事も落ち着いて食べ、体調の変化に注意しながら、無事に道中を過ごしたいですね。
また、荷物に関しては『旅行用心集』でもなるべく少なくするべきだと書かれています。身軽にゆったりと旅を楽しむことが大事。
以上、『旅行用心集』に書かれている旅の心得をまとめました。同書は江戸時代の出版物。キツネやタヌキに道を迷わされたときの対処法まで言及があります。単純に読み物としても面白いですよ。
[旅行用心集]
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