アイヌの人々が硫黄を焚き付けに使っていたことがはじまりの「硫黄山(アトサヌプリ)」
現在は名湯「川湯温泉」の源として有名な「硫黄山」ですが、明治初期から昭和30年代にかけては、硫黄を採掘する鉱山でした。当時、硫黄はマッチや火薬の原料として需要があったのです。
硫黄山はアイヌの人々が硫黄を焚き付けに使っていたことがはじまり。それを聞きつけた釧路の漁場持(アイヌとの交易権を委託された商人)である佐野孫右衛門(さの まごえもん)が、1877年に本格的に採掘事業を始めたのです。
そして、1885年に硫黄山の事業経営は佐野孫右衛門から函館の銀行家の山田慎に移ったあと、安田善次郎に引き継がれます。しかし、生産量が激減したことから、1896年に硫黄山採掘事業が中断。そのあとも細々と採掘はされていましたが、1963年以降、再開されることはありませんでした。
とはいえ、1930年に国有鉄道・川湯駅(現・JR川湯温泉駅)が開業し、翌年に釧網線(現・釧網本線)が全線開通したほか、1934年に阿寒国立公園(現・阿寒摩周国立公園)に指定されたことで、川湯温泉は湯治場として人気の観光地に!
「硫黄山」の見どころ3選と人気登山ツアー
ダイナミックな地球の鼓動を感じる「硫黄山」には、いくつかの見どころがあります。ここでは見どころ3選と人気登山ツアーをご紹介!
硫黄山の噴気を眺めながらゆっくり過ごせる「硫黄山MOKMOKベース」
2023年、硫黄山の麓に新たな滞在観光拠点「硫黄山MOKMOKベース」が誕生! 施設のシンボルである、劇場スクリーンに見立てた幅5mのガラス窓「MOKMOKシアター」からは、硫黄山の全体像を眺めることができます。黒色モルタル風の飾り枠とその下に配置されている間接照明の視覚効果もあり、よりダイナミックな硫黄山を鑑賞可能です。
硫黄山MOKMOKベースには、「硫黄山ミュージアム」も。硫黄山の鉱山の歴史や自然を学べるほか、阿寒摩周国立公園や、弟子屈町の旬な情報パンフレットを入手することもできますよ。
さらに「MOKMOK Café & marche」では、硫黄山名物の「川湯温泉 源泉蒸したまご」や「硫黄山温玉ソフト」「MOKMOKソフト」を味わえます。硫黄山や北海道の特産品などもそろっているため、お土産探しにももってこいです。
広大なエゾイソツツジの群落が広がる「硫黄山の山麓」
川湯温泉から硫黄山まで続く「つつじヶ原自然探勝路(およそ2.5km)」も必見です。この小路ではエゾイソツツジをじっくり鑑賞できます。
硫黄山の山麓は硫黄成分のために酸性化しており、限られた植物しか育ちません。しかし、エゾイソツツジは、酸性土壌を好む北海道の固有種。毎年6月~7月にかけて、かわいらしい小さな白い花をつけ、川湯温泉の初夏に彩りを添えます。
毎年6月上旬~7月上旬の1ヶ月間は、早朝からガイドつきの散策会も実施。気になる方はぜひこのシーズンに訪れてみてくださいね。
古くから療養泉として親しまれている「川湯温泉」
阿寒摩周国立公園に位置する「川湯温泉」は、東に摩周湖、西に屈斜路湖を望む温泉街です。強酸性硫化水素を含む明ばん・緑ばん泉で日本でも希少な火山性特有の泉質が特徴的。そのため、古くから療養泉として親しまれています。
また、Ph1.7もある川湯温泉は、五寸釘を1週間ほどで溶かしてしまうほどの強酸性。その酸が古い角質を溶かして肌をスベスベにしてくれるそうです。日帰り入浴も可能なので、硫黄山を訪れたあとに、温泉に浸かってリフレッシュしたいですね。
硫黄山の人気登山ツアーとは?
第18回エコツーリズム大賞で環境大臣賞を受賞した人気登山ツアーは、「アトサヌプリトレッキングツアー」です。このツアーでは、通常では見ることができない硫黄山の爆裂火口などを見ることができます。初級者向けで参加しやすいのも魅力です。
アトサヌプリトレッキングツアーの詳細については、こちらをご覧ください。
住所:北海道川上郡弟子屈町川湯
電話:015-483-2670
交通アクセス:JR「川湯温泉駅」からバス「期間限定えこパスポート」で約5分
公式サイト:https://mashuko-iozan.jp/
[参考]
HOKKAIDO LOVE!|北海道公式観光サイト
川湯ビジターセンター
弟子屈なび|一般社団法人 摩周湖観光協会
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