江戸時代から年貢として納められていたほどおいしかった「比内地鶏」(秋田県北部)
「比内鶏」とは、江戸時代から比内地方(秋田県の北部)で飼われている鶏のことです。活発な性質で、長い距離を飛ぶこともあるとか。当時から、年貢として納められていたほどおいしいとされていました。1942年には、学術的な価値が認められ、国の特別記念物に!
そして「比内鶏」を適切に保存し、比内鶏ならではの肉質・食味の良さなどの特徴を持った食用の鶏を生み出すために研究を重ねた結果、父に「秋田比内鶏」、母に西洋の鶏「ロードアイランドレッド」を交配した「比内地鶏」が誕生。
比内地鶏は、澄んだ空気ときれいな水に恵まれた自然のなかで、平飼いもしくは放し飼いを行い、長時間をかけて飼育されます。豊富な運動量と日光浴も特徴的。
そのような厳しい飼育基準・環境の管理のもと、秋田県内で限られた数しか生産されていないため、希少で高価な食材です。
比内地鶏といえば、脂肪分が少なく、適度な弾力があり、しっとりとした食感。噛むほどに旨味が口内に広がります。「きりたんぽ鍋」や「鶏すき焼き」など鍋料理に比内地鶏を使うと、スープに旨味が溶け出し、豊かな味わいを堪能できますよ。
なお、現在はイタリア料理やフランス料理、韓国料理などにも取り入れられており、ワールドクラスのおいしさに! 2000年10月にドイツで開催された「料理オリンピック」の公式食材にも採用されています。
比内地鶏は通販でも購入可能なので、ぜひ味わってみてくださいね。
尾張藩士だった兄弟のたゆまぬ努力によって誕生した「名古屋コーチン」(愛知県名古屋市)
「名古屋コーチン」は、明治維新で所得を失った尾張藩士の海部壮平(かいふ そうへい)・正秀(まさひで)兄弟の努力によって生み出されました。
海部兄弟は清(現在の中国)から輸入されたバフコーチンを入手し、尾張地方の地鶏と交配、新たな鶏を生み出したのです。この鶏は粗食に耐えられるほか、肉質、産卵能力が高く、強健で温厚であるという長所があることから、評判に!
明治30年頃には、名古屋からきた鶏ということで「名古屋コーチン」と呼ばれるようになりました。その後、育種改良が重ねられたものの、一時期は外国産の種鶏の輸入により、絶滅の危機に瀕します。
しかし、地鶏肉の生産という新たな展開によって、危機を脱して、現在では知名度が高いブランド地鶏になったのです。
名古屋コーチンは、自然に近い環境「平飼い」で飼育されることが推奨されており、敷地の中で自由に動き回ることができる環境が整えられています。餌も可能な限り、トウモロコシや大豆などを中心とした自然由来のものを使用。水質管理にも細心の注意が払われています。
名古屋コーチンは、適度な弾力と噛むほどに深い旨味が感じられる、ヘルシーな肉質が魅力。焼き鳥や鍋料理に適しています。さらに卵も黄身が濃厚で、味がしっかりとしているため、卵かけご飯や、親子丼での使用が人気です。
飼育日数が長く、コクのある旨味と適度な歯ごたえがある「さつま地鶏」(鹿児島県)
天然記念物の「薩摩鶏」は、古くから観賞用や闘鶏用として鹿児島で飼育されてきた日本の固有種です。鋭い眼光で気性が激しく、足が長く、尾羽は長いのが特徴。約800年前から飼われていたといわれています。
鹿児島ではより安全で高品質な肉用鶏を目指し、種鶏の薩摩鶏とロードアイランドレッドの雌をかけあわせて交配・選抜を繰り返し、“さつま地鶏”を生み出しました。
また、日本農林規格(特定JAS)では、地鶏の飼育期間は75日以上と定められていますが、さつま地鶏の飼育日数は120〜150日! 飼養期間の長さは、コクのある旨味やほど良い歯応えを生み出すうえで重要なのだそうです。
2005年に開催された「地鶏・銘柄鶏食味コンテスト」では、グランプリの「最優秀賞」も受賞しています。
さつま地鶏は、旨味成分であるアミノ酸が豊富なため、コクのある旨味を堪能できるのです。さらに脂肪分が少なくヘルシー。筋繊維が細かく、柔らかな肉質ですが、適度な歯ごたえもあります。
そんなさつま地鶏はどんな料理にも合いますが、鹿児島名物の鶏刺しのほか、鶏ガラスープでサラッと食べられる、奄美大島の鶏飯や、溶岩のプレートで肉や野菜を焼き上げる溶岩焼きがおすすめです。
鹿児島県を訪れたら、ぜひさつま地鶏を使った料理を味わってみてくださいね!
[参考]
比内地鶏ネット|秋田県公式WEBサイト
秋田比内や株式会社
一般社団法人 名古屋コーチン協会
かごしま地鶏|鹿児島県地鶏振興協議会
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