“溶けていくわたし”で始まる38億年前からの生命史
2025年4月13日~10月13日までの184日間にわたり、大阪・夢洲(ゆめしま)で開催される大阪・関西万博。コンテンツの一部が世界初公開された「いのち動的平衡館」は、生物学者で作家でもある福岡 伸一氏がプロデューサーを務めるシグネチャーパビリオンのひとつ。シグネチャーパビリオンとは、各界で活躍する8人で構成され、“いのち”をテーマにしたコンテンツを楽しめます。
“溶けていくわたし”とは、とっても意味深なフレーズ。「いのち動的平衡館」では、絶え間なく動きながらもバランスが取れた状態である“動的平衡”をキーワードに、生命が誕生した38億年前から細胞分裂を繰り返し今に紡ぐ、力強くも儚い神秘的な“いのち”が表現されます。
暗闇に包まれた館内に入ると(実際のパビリオンではありません)、32万球の光がゲストをとらえ、そのシルエットは光の粒子として浮かび上がります。そう、あなたは38億年前の生命ドラマの中に入り、光の粒子として溶けていってしまうのです。
32万球の立体スクリーンで表現される生命の力強さと儚さ
演出時間は約10分。360度どの方向からも体感することができる直径10m、高さ2.5m、全周30mの立体スクリーン「クラスラ」を中央に配置。32万個のLEDが明滅しながら、繊細で儚い光の粒子が唯一無二の世界観を描き出します。
前半は細胞やDNAといった太古の生命ストーリー。ひとつの細胞が生まれたかと思うと、大きな細胞に取り込まれて多細胞になっていくなど、あたかも生きているようにうごめき、分裂を繰り返します。
後半はその生命体が、海や空、陸に上がり、クラゲやイルカ、鳥、ウマ、キノコなど、多様な生物が誕生し、最後に光の粒子は自分の中へ。
墨絵のようにも思える光の点描で紡ぎだされる白い世界。写真ではわかりにくいかもしれませんが、光が動くことで形を認識でき、“いのち”の儚さを表現するために白色で演出したのだとか。
利己的ではなく、利他性によって紡ぎだされてきた38億年の生命史と語る福岡プロデューサー。本番さながらの環境で見るのは初めてとのことですが、思わず「ヤバい」と漏らすほどの笑みを漏らしていました。
[Photos by ©︎tawawa]